11.うさんくさい書物発見
ナナオと書物。の巻
王国に来て、1ヶ月たった。書庫の整理も順調に進み、歴史書は年代順に本棚に並び今は歴史書以外の書物の整理と歴史書の目録作りを並行してやっている。
アレンさんとは一日1回、電話で業務報告をしている。アレンさんにも服のお礼を言うと、逆に『何か足りないものはないですか?』と聞かれ、ついつい『日本のお米が恋しくなってきました』ともらしてしまった。
アレンさんは笑って『そうですよねえ。分かりました。送ってあげましょう』と言われてしまった。私は慌てて『まだ猛烈に食べたいわけではないので、いらないです』と断ったところ、『じゃあ、猛烈に食べたくなったら無理しないで電話くださいね』と言われてしまった。
アレンさんって優しいし、気遣いが出来るよなあ・・・デルレイも気遣いはしてくれるけど傲慢な匂いがするのはなんでだろう。
「・・・やっぱり品性の差かねえ」
「品性の差ってなんだ」
後ろから声がして私は思わず「うわおうう」と声をあげてしまった。
「デルレイ、後ろから急に声をかけるの止めてよね!!ていうか、今日は出勤のはずでしょうが。なぜいる」
「・・・・ナナオの驚き方は、こっちが驚く。」
「すみませんね」
「・・・・・面白い本があるって言ってただろう?だから見に来た。仕事はそれから行っても間に合う」
あの日、服や靴の代金を天引きしてくれと言った私に“さっさとこちらの仕事を終わらせて叔父の仕事に専念できるようにしたほうが叔父は喜ぶと思う”とか言っておきながら、デルレイは最近、週に1~2度は仕事場に来て私の邪魔をする。
まあさ、私がこんな資料がありましたって報告するのがいけないんだけどさっ。資料を見たデルレイが「おおっ」と驚く顔が、結構かわいいのでそれも見たいんだけどさっ。
「家系図を作成したアダルバードさんが書いた本が出てきたのよ。なんと“あなたも魔法使いになれるかも?”っていうの!」
私がいる世界にもハウツー本や自己啓発本はあるけど、王国にもあるんだねえ。なれるかも?って疑問形なのがおもしろい。
「・・・・祖父に一度聞いたことがあるんだが、曽祖父は魔道士として当時随一だったらしいけど、人騒がせな性格だったらしいぞ。空とぶ雲を作って王国をぐるっと周遊して大騒ぎになったとか、夜に星が見たいからってデカイ望遠鏡を作ってうっかり王宮をのぞいちゃってスパイ騒ぎになったとか。そうそう、“扉”を作ったのも曽祖父だったらしい。」
「えっ。」
「もともと、“扉”の部屋は曽祖父の実験室だったんだよ。当時錬金術にはまっていたらしく、実験で爆発を起こして部屋の壁に大きな穴があいたんだ。すると、どういうわけだか壁の向こうに見たことのない世界があったらしい。」
「なにそのテキトーな理由」
「俺に言うなよ。祖父からの又聞きなんだから。で、好奇心旺盛な曽祖父は屋敷の人間の目を盗んじゃ、向こうの世界に行っていろんな品物を買ってきたり、各地を旅行して友人を作ったりしてたらしい。それが今の“クロスビー商会”のもとだ」
今から100年以上前というと、当時の日本は明治時代くらいかな。いきなり外人現れてびっくりしただろうな~。
「デルレイ。私、この本読んでみたいんだけど」
「その、胡散臭い本を?物好きだな」デルレイはバカにしたように言うけど、本を部屋に持っていくことを許可してくれた。
「ありがとう。ねえ、私が魔法を使えるようになったらどうする?」冗談でデルレイに聞いてみた。
「ま、せいぜい頑張ってみろ」と言うとデルレイはニヤリとした。
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ナナオとデルレイが、ちょっと仲良くなりました。
それにしても、デルレイの曽祖父・・・。