10.魔道士と整理係の妥協
デルレイの言い分。の巻
私は疲労感を漂わせ、エルシーは満足感いっぱいで屋敷に到着した。
「ナナオさん。いろいろ買い物できましたねっ」
「そーだねー。まさかトータル1日かかると思わなかった・・・」
「私、ようやく世話係の役目が果たせた気がします~。荷物は後から届けてくれるそうですから、届いたらお持ちしますね」
「エルシーってタフだね」
「そうですか?」エルシーはそういうと、後ほどお茶を入れに参ります、と伝えて部屋から出て行った。
・・・・今度の休みはショッピングじゃなくて、食べ歩きしよう・・・うん、そうしよう・・・・。食べ歩きなら、今日みたいな目にあうこともないだろう・・・。
私は、ベッドでゴロゴロしているうちに眠くなってしまった。
その後、エルシーが起こしに来るまで寝てしまい、いつのまにか夕飯の時間になった。
今日もデルレイは屋敷に戻っていて、私に夕食を一緒に摂るようにと言ってきた。
「買い物はどこでしたんだ?」夕飯が終わり、飲み物が運ばれてきたときにデルレイが口を開いた。
「ウェルズ商会というお店です。・・・・クロスビー、お店の代金のことで話があるわ」
「・・・・なんだ」
「オーガスタさんに、請求を全部あなたにつけてくれって頼んだそうね。それ、私の給料から天引きにしてもらえない?」
「断る」
「えー、なんでよー!こっちもクロスビーに買ってもらう理由ないんだけど」
「アレン叔父から、ナナオにかかる経費は全て負担するように言われてる。まったく違う世界に頼んで来てもらったのだから、それくらいこちらで負担しないと申し訳ないそうだ」
「そうは言っても、やっぱり悪いわよ。やっぱり天引きして。私からもアレンさんに言う」
「クロスビー家に泥を塗るのか、ナナオ」デルレイが私をにらむ。
「へ。」ハンサムがにらむと怖さが2割増しなんだからにらむのはやめてよね~。
「アレン叔父の厚意を否定するのか?悪いと思うなら、こちらの仕事をさっさと終わらせて叔父のところの仕事に専念できるようにしたほうが、叔父はよっぽどうれしいと思うが。違うか?」
む。確かに・・・いくら大まかな整理が出来たとはいえ、あっちの倉庫も完全に整理できたとは言いがたい。それでも、アレンさんは王国側の倉庫のほうがひどいからって王国を優先させたみたいだし・・・。
「わかりました。こっちをさっさと終わらせてアレンさんのお手伝いに戻れるようにします」
「よし。それと・・・・」
「はい?」まだあるんかい。
「あの服は・・・叔父の命令でもあったけど、俺の謝罪の印でもある。快く受けてもらえないだろうか。あのときの発言は・・・悪かった。」
『傲慢なオトコが素直に謝るって気味が悪い・・・・』私は思わずボソリ。
「何か言ったか?」
「いいえ~、別に何も?・・・わかったよ。謝罪も服も受け入れます。改めて御礼をいいます。どうもありがとう。」
「それから、俺のこともデルレイと呼ぶように。当主命令だ」
「はあ?何その命令?」
「屋敷の者たちのことは皆、名前で呼んでるくせにどうして俺だけクロスビーなんだ。面白くない。命令だ。名前で呼べ、ナナオ。」
・・・・・やっぱりコイツ、傲慢なお貴族様だよ!!
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
名前を呼ばせることに成功したデルレイなのでした。