9.整理係の休日-洋服探し編-
着せ替え人形ナナオ。の巻
楽しみにしていた休日がやってきた。
エルシーも(あれから“エルシー”と呼んでくださいと、お願いされてしまった)外出届を提出したそうで朝10の時にでかけることにした。
「そういえば、私屋敷の外に出るのは初めてだよ」
「まあ。そうなんですか。街を気に入っていただけるとうれしいのですが」
「クロスビー家は市街地にあるので、どこでも歩いて行けて便利なんですよ。ナナオさん、まずはどこから回りましょうか。」
「そうだねえ・・・服から見てみようかな」
「オススメの店はウェルズ洋品店です。靴なども豊富に扱っていてトータルで揃うので王国の女性たちに評判なんです」
「それは楽ですてきだね。」
「ご主人様の上司、ランス・アイルズバロウ様の奥方様の実家でもあるんですよ」
「へー、そうなんだ」
「奥方様・・・オーガスタ様とおっしゃるのですが、王国のファッションリーダーでもあるんです。お店にいらっしゃる場合は、私のような庶民にも気さくに見立ててくれるんですよ」
「じゃあ、いたら見立ててくれるのかな。」
「いらっしゃるといいですね」
二人で話しているうちに到着したウェルズ洋品店は象牙色の建物で、入るとディスプレイされた洋服や靴は並んでいるものの、私がいつも買う店みたいに既製服が並んでいる感じじゃないんだけど・・・うーん。どうやって買うんだろうか。
私がきょろきょろしている間に、エルシーが店員さんを呼びに行き、「ナナオさん」とエルシーがきれいな女の人を連れて戻ってきた。・・・いや、女の人がエルシーを従えて出てきたという言葉がぴったりだ。
その女の人は、とてもよく似合ってる空色のスーツを着てにこやかに立っている。
「いらっしゃいませ。あなたが、アレンのところからデルレイの家に来た整理係さんね?初めまして。オーガスタ・アイルズバロウと申します。うふふ。ランスより先にお目にかかれるなんてうれしいわ。帰ったら自慢してやらなくちゃ。服と靴、バッグやアクセサリーをお求めなんですよね?私にお任せくださいね」
オーガスタさんのキラキラオーラを断りきれず(というか断れないって)、私はオーガスタさんに全てを任せた。
「初めまして。ナナオ・サクラギと申します。よろしくお願いいたします」
「デルレイとはうまくやっている?」
「・・・・しょっぱなの言動が“美人だって言うから期待してたのに”でした。」
「・・・・バカかしら、デルレイは。」オーガスタさんの心底呆れた口調に私も思わず噴出してしまう。
「だから、 “すみませんね。美人じゃなくて。アレンさんがフォローしてくれてなかったら、あなたのすねには今頃、私の5センチヒールキックが炸裂しているところですわよ”と言ったら“言葉が分かるのか?”と慌てていました」
オーガスタさんはさらに面白がって「それで、蹴っ飛ばしたの?」と聞いてきた。
「いいえ。アレンさんの甥ですから、やめておきました。」
「蹴っ飛ばしてやればよかったのに。アレンもそう言わなかった?」
「言いました」二人で目を合わせて笑い出す。エルシーも笑いをこらえているようだ。
しかし、楽しかったのはここまで。ここからはオーガスタさんの独壇場で私はまるで着せ替え人形のようにオーガスタさんがエルシーや他の店員に命じて持ってくる服や靴、バッグを合わせ続けた。ついでに下着も購入して終了。
「いいわ~。こんなに充実感があるのは久しぶりよ!!」
オーガスタさんとエルシーの顔は充実感でいっぱい。
私は疲労感でいっぱいだった。
ああ、お会計が恐ろしい・・・と思っていた私に、オーガスタさんが「大丈夫。全部デルレイに請求するように頼まれてるから」と衝撃の一言が。
「えっ。そんなの聞いてないですよ」
「お詫びのつもりなんじゃない?素直に受け取ってあげてもらえないかしら」
「はあ・・・」納得いかない。
私は帰ったらデルレイに話をつけることにした。
読了ありがとうございました。
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七生からすると、自分の知らないところでそんな話になっていたのが納得いかないわけです。
デルレイの善意、空回りってやつです。