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元世界最強の勇者、畑を耕すつもりが野菜が全部S級アイテム化してしまう  作者: 妙原奇天


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最終話「世界を耕す畑へ」

海上決戦の終幕


 藻塩の盾の上で芽吹いた希望の実は、瞬く間に大樹へと成長した。

 枝葉が海を覆い、黄金の光が大陸へ届くほどの輝きを放つ。


 黒鎧の首領は狂ったように叫んだ。

「俺こそが種を支配する者だ! 世界は俺の畑だ!」


 だが、希望の樹の光は彼の身体を包み込み、闇を溶かしていった。

 残ったのは、ただ飢えに苦しんだひとりの男の影。

 彼もまた救われるように光に抱かれ、静かに消えていった。


大陸を包む光


 大樹の果実が弾け、光の種が風に乗って世界中へ舞い散った。

 砂漠には緑が芽吹き、北方には豊かな牧草が広がり、南洋の島々には果樹が根付いた。

 人々の歓声と涙が大陸中を震わせる。


 ——戦は終わった。

 畑が、世界を耕したのだ。


のんびりの約束


 戦いを終えた俺たちは、再び小さな畑に戻っていた。

 鍬を振り、苗を植え、水をやり、ただ土と向き合う。


「やっと……のんびりできそうだな」

 俺がつぶやくと、魔王が笑った。

「のんびりとは、世界を耕す最も強い力だ。忘れるなよ」


 リラは大根を抱えて笑い、カイは勘定をつけ、ミーナは水菜の鎖を手入れし、レオンは弓を磨いていた。

 エリシア王女も農作業に加わり、泥にまみれながら微笑んでいる。


 戦も政治も、今は遠い。

 ただ鍬の音と、土の匂いだけがここにあった。


そして未来へ


 夕暮れ、畑に小さな芽が顔を出した。

 それは特別な力を持たない、ただの野花だった。

 だが、仲間たちと共に見るその姿は、どんな奇跡よりも尊かった。


「……これでいい」

 俺は鍬を土に立て、空を見上げた。

「畑は、今日も未来を育てている」


 風が吹き、灯籠の残り火が揺れ、星々が輝きを増した。

 勇者と魔王が肩を並べて耕した畑は、永遠に人々を照らし続ける——。


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