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第18話「大陸を結ぶ希望の実」

希望の実、収穫


 収穫祭の翌朝。

 農園の中央に根を下ろした希望の苗が、白金色の果実を実らせていた。

 それは丸く小ぶりだが、掌に乗せるとほんのりと温かく、疲れを癒す香りを放つ。


「……これはただの果実じゃない」

 カイが鑑定札を当て、目を見開いた。

「食べれば体力だけじゃなく、心の傷すら癒す力がある」


 リラは思わず拳を握る。

「これさえあれば……戦争で泣く子どもも救えるじゃない!」


 俺は鍬を肩に担ぎ、深く息をついた。

「希望の実か。……畑は本当に、大事な時に答えをくれる」


分け合う決意


 各国の使節団が集まり、実を前に議論が起きた。


「我が国の民は病に苦しんでいる。すぐにでも分けてほしい!」

「いや、飢饉が続く我らに優先してくれ!」

「輸送の管理は誰がするのだ!」


 声が重なり、再び争いの気配が漂い始める。


 エリシア王女は立ち上がり、毅然と告げた。

「希望の実は、誰かが独占するためのものではありません。——大陸を結ぶ架け橋なのです!」


 俺は彼女の言葉に頷き、鍬を掲げた。

「ならば、分け合おう。各国に均等に。畑は命のものだ。支配じゃない」


癒しの奇跡


 その日のうちに、希望の実は分けられた。

 砂漠の国では病に伏せた子どもが一口で目を覚まし、

 北方の戦士は怪我から立ち上がり、再び馬に跨った。

 南洋の村では飢えた母親が涙を流しながら実を我が子に食べさせ、笑顔を取り戻した。


 豆の通信網を通じて、その喜びの声が農園に届く。

「ありがとう!」「生き返った!」「これで未来を繋げる!」


 農園は一気に希望の象徴として、大陸全土に広まった。


忍び寄る影


 だが、光が強まるほど、影も濃くなる。

 夜、農園の見張り台でレオンが耳を澄ませ、眉をひそめた。

「妙だ……周囲に不審な動きがある」


 カイが札を走らせ、震える声を漏らす。

「……各国の中に、“希望の実を奪い取れ”という暗号が流れてる。正体は分からないが……闇はまだ生きてる」


 ミーナは鎖を握りしめ、真剣な表情で言った。

「アルト様。希望の実は、人を癒すだけじゃなく……人を惑わせる可能性もあるんです」


 魔王は低く笑った。

「なるほど。奪おうとする者は必ず現れる。だが——その時こそ、本当の農園同盟が試されるのだ」


大陸を結ぶ約束


 翌日、俺たちは再び円卓に集まった。

 俺は鍬を地に突き立て、仲間と各国の代表を見渡した。


「希望の実は、土がくれた未来だ。

 だが、未来は誰かが守らなきゃならない。

 次は“分け合う”だけじゃ足りない。——“共に育てる”時だ」


 エリシアが笑みを浮かべ、力強く宣言した。

「農園同盟は、世界農園連盟へ。

 希望の実を守り、未来を育てるために、私たちは一つになります!」


 歓声が上がり、各国の旗が並んで風に揺れた。

 だが俺は、その空に重い雲が滲み始めているのを感じていた。


次回予告:第19話「奪われた希望、連盟の危機」


世界農園連盟の船団が各国へ実を運ぶ。


しかし、海上で何者かに襲撃される。


新チート作物「藻塩の盾」が、波と炎から仲間を守る!


希望の実を狙う正体不明の勢力が、ついに牙を剥く……!

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