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第17話「希望の種、闇に挑む」

千灯祭の悲鳴


 農園の中央に掲げられた千の灯籠は、祭りの象徴だった。

 だが、地中から這い出した黒い根が次々と火を呑み込み、明かりが消えていく。


「灯籠が……!」

「消えるな、絶対に消すな!」


 子どもたちが泣き叫び、大人たちが必死に火を守ろうとする。

 けれど黒い根の勢いは止まらず、光と希望を奪おうとしていた。


 俺は鍬を握り直し、叫んだ。

「——ここで退けば、闇はまた芽吹く! 守るんだ、畑を!」


希望の種


 そのとき、畑の隅で小さな光が芽吹いた。

 ひときわ白く輝く苗。葉は柔らかく、だが黒い根に触れると瞬時に焼き尽くしていく。


「これが……希望の種!」

 ミーナが駆け寄り、そっと両手で抱えた。

「まだ小さいけれど……育てれば、必ず闇に勝てます!」


 エリシア王女はすぐに判断を下した。

「皆で護りましょう! この苗を中心に、灯籠の光を集めるのです!」


闇との激突


 リラの大根槍が黒い根を断ち切り、

 レオンの矢が闇の核を射抜く。

 カイは札を地面に突き立て、根の流れを地図のように示す。


「東から三十! 南から五十! ——西は危険だ、希望の苗を狙ってる!」


 ミーナが鎖を振り回し、黒い根を引き裂いた。

 魔王は影の壁を築き、苗を包み込むように防御を張る。


「勇者!」

 魔王が振り返り、低く叫ぶ。

「苗を育てろ! 余が守る!」


「ああ!」


希望を育てる儀式


 俺は希望の苗の前に立ち、鍬を地面に突き立てた。

 土の声が響く。

 ——「水を、光を、人の願いを」


「皆! 手を貸してくれ!」

 俺の声に応じて、子どもたちが灯籠を持ち寄り、輪を作る。

 大人たちが水を運び、仲間たちが歌を紡ぐ。


 その祈りと願いが土に染み込み、苗は瞬く間に成長を始めた。

 芽が幹へ、幹が枝へ、枝が光の蕾へ。


光の解放


 黒い根が最後の抵抗を見せ、苗を覆い尽くそうとした瞬間。

 希望の種が一気に開花した。


 白金の花弁が広がり、眩い光が闇を貫いた。

 光は波となって農園全体を包み込み、千の灯籠の炎を再び燃え上がらせた。


「うおおおおおっ!」

 人々の歓声と共に、黒い根は焼き尽くされ、跡形もなく消えていった。


守られた祭り


 静寂。

 夜空には灯籠の光が浮かび、風に揺れて星と溶け合う。

 人々は互いに抱き合い、涙を流し、歌を口ずさんだ。


 リラが槍を立てて笑った。

「勝ったな……!」


 カイが額の汗を拭う。

「数字にすれば、三百の根を焼いた……畑の力、恐るべしだ」


 ミーナは希望の苗を撫で、頬を赤らめながら言った。

「アルト様……これ、きっと未来を導く種です」


 エリシア王女は胸を張り、高らかに宣言した。

「農園同盟は、不滅です!」


 魔王が隣で笑い、俺の肩を叩いた。

「勇者よ。のんびりどころか、世界を守る農夫になってしまったな」


「やれやれ……本当に、土は人を休ませてくれない」

 俺は苦笑しながら鍬を担いだ。


新しい約束


 翌朝、希望の苗は小さな実を結んでいた。

 それは白金色に輝き、触れると温かく、人々の心を穏やかにする。


 俺はその実を掲げ、仲間たちに言った。

「これは畑が示した答えだ。俺たちが諦めない限り、闇は必ず払える」


 仲間たちが頷き、人々は再び鍬を取り、畑を耕し始めた。

 祭りは終わらず、むしろ新しい始まりとなったのだ。


次回予告:第18話「大陸を結ぶ希望の実」


希望の苗が実らせた果実は、人々を癒す奇跡をもたらす。


各国がその実を分け合い、大陸規模の交流が始まる。


しかし、その光を狙う新たな勢力が暗躍し……!?

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