第14話「廃墟決戦!種泥棒の首領」
廃墟を覆う黒い苗
蔦に覆われた首領の腕から、黒い苗が噴き出した。
それはたちまち廃墟の石畳を割り、建物を飲み込み、夜空をも覆う勢いで広がっていく。
「なんだ……この力は!」
リラが叫び、大根槍で蔦を切り払う。だが切った端からすぐに再生し、さらに増殖する。
カイが鑑定札を走らせ、顔を蒼白にした。
「……これは盗まれた苗を、呪術で無理やり掛け合わせてる! 本来の命じゃない、“黒い苗”だ!」
悲鳴のような葉擦れが夜風に響き渡る。
生かされながら奪われる命の呻きだった。
農園同盟の総力戦
「怯むな!」
俺は鍬を掲げ、仲間たちに叫んだ。
ミーナの水菜鎖が黒い苗を絡め、引き裂く。
レオンの矢が要となる蔦の結節を撃ち抜く。
エリシアは後方から王家の紋章を掲げ、各国の使節団に声を飛ばした。
「今こそ農園同盟の力を見せるときです!」
それぞれの国の兵士や学者たちも奮起し、鍬や籠を手に加勢した。
廃墟の都に、国境を越えた掛け声が響く。
魔王の力、勇者の鍬
魔王が両腕を広げ、漆黒の魔力を大地に叩きつける。
だがそれは破壊のためではなく、苗を拘束する影の鎖となって伸びた。
「俺はもはや支配者ではない……畑の守り手だ!」
俺はその隣で鍬を振るい、黒い苗を根元ごと掘り返す。
土に返すことで、わずかに残った本来の命が解放される。
苗の悲鳴が小さくなり、ほんの少しだけ土が柔らかくなった。
トマトの陽炎
だが首領は笑っていた。
「無駄だ……闇の苗は幻そのもの。斬っても掘っても終わらん!」
確かに、苗は幻のように揺らめき、数を増し続ける。
そのとき、畑から赤い光が迸った。
トマトが一斉に実り、空へ舞い上がる。
弾けた瞬間、真紅の陽炎が広がり、幻を焼き払っていった。
「……これは!」
ミーナが目を見張る。
「トマトが幻影を消している!」
陽炎に包まれた黒い苗の群れが次々と溶け、実体を失って崩れていく。
首領との対峙
幻を焼かれた首領は狂ったように叫んだ。
「やめろ……! 俺は種を支配する! 命は力だ! 畑は金だ!」
その叫びの中、ニンニクの聖火が自然に燃え上がった。
嘘と強欲を焼き尽くす白い炎が首領を包み込む。
蔦に覆われた身体が軋み、膝をついた。
「俺は……ただ……飢えが怖かった……」
本音が滲み、黒い苗は霧散した。
残ったのは、痩せた一人の人間だった。
決戦の終わり
廃墟の都に静寂が戻る。
黒い苗の残骸は土に還り、瓦礫の隙間から新しい芽が覗いていた。
リラが大根槍を肩に担ぎ、息をつく。
「勝った……のか?」
俺は鍬を突き立て、答えた。
「いや……畑が勝ったんだ。俺たちは、少しだけ手伝っただけだ」
魔王が隣で笑う。
「勇者、畑はお前に似ているな。頑固で、のんびりで、強い」
新たな芽吹き
翌朝。
廃墟の都の中央に、ひときわ大きな芽が伸びていた。
それは見知らぬ植物だが、金色に輝き、触れると温かい。
エリシアが目を潤ませて呟く。
「これは……平和の証。農園同盟が大陸に根付いた証ですわ」
俺は鍬を肩に担ぎ、仲間たちを見渡した。
「まだ闇は残ってるだろう。でも、この芽がある限り、土は俺たちに味方してくれる」
仲間たちが頷き、光を浴びた芽はさらに高く伸びていった。
次回予告:第15話「大陸農園会議、世界を耕す」
廃墟決戦の勝利を受け、大陸各国が正式に集結。
農園同盟が「世界農園会議」へと発展!
新チート作物「リンゴの未来樹」が、次の世代を示す。
物語はいよいよ、世界全体を耕す局面へ!