被観察者の日常
前半NO.9視点、後半アルマ視点です。
今日も変わらないお手伝い。
幼少期こそ色々あったものの、ここ最近の彼女の生活は安定している。
でも今日、彼女は選択しなければならないだろう。
私の手元には3枚の選択肢。
ようやく彼女の物語が動き出す。
主人公はどの選択肢を選ぶのか。
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「失礼します。」
ドアを開けて入ったのは調薬準備室。
今は誰もいないが、あと30分もすれば調薬室の主が現れるだろう。
ここで色んな施設からの発注書をまとめて、何をどれだけ作製するのかを計算し、そしてそれらの材料を準備するのが、私の仕事。
ここの治療室にこっちは魔塔…それから研究所、討伐部隊からもか…近々大規模な討伐がありそう。
通常のポーション、ハイポーション、マナポーション、エリクサーまで。
これはちょっと材料が心許ないな…。
材料の準備が終わったら在庫の注文リストも作らなきゃダメみたい。
そうしてバタバタと準備をしていると、ヨティリウス様が入室してきた。
彼は調薬室長で、この部屋の責任者だ。
普段は下ろしている薄青色の長いサラサラの髪は後ろに束ねられ、あまり感情を映さない髪と同じ色の瞳をこちらに向ける。
「今日のリストを。」
私は先程纏めた作製リストを手渡しながら、準備した材料を説明する。
「こちらがリストです。材料は右からポーション、ハイポーション、マナポーション、エリクサーで、エリクサー以外は全て10本分ごとにわけています。エリクサーは注文が3本だったので、5本分ご用意しました。何か追加はありますか?」
「いや…ありがとう。」
ヨティリウス様は、というかこの教会の方たちは何かすると必ずお礼を言ってくれる。
家ではそれが当たり前でなかった私には、その1言だけでとても照れくさい。
つい変な笑いが出てしまう。
「ふへへ…。では、私は材料の発注書を作成して、出来上がった薬品の納品準備をさせていただきます。何かあれば声をかけてください。」
そういった会話をしてると3人組が部屋に入ってきた。
調薬室のメンバーがこれで揃う。
この3人組はとても仲良しで、いつも一緒にいる。
右からラティアさん、ルーニールさん、キケットさんだ。
ちなみに様付けすると怒られる。
「おはようございます!アルもおはよう!」
とラティアさん。元気いっぱい。
「はよーっす。今日は何作るんだ?」
とルーニールさん。ちょっとぶっきらぼうだけど、気遣いができる優しい人。
「おはようございます。今日もよろしく。」
とキケットさん。2人に比べるとちょっと大人しい感じ。
リストを渡して、先程と同じ説明をする。
ヨリティウス様はとっくに自分の調薬室に入っている。
「げーっ!ポーション80本とか残業確定じゃんかー。」
など皆でわいわいしながら分担を決めて各自の部屋に入っていく。
調薬には魔力が必要で、お互いの魔力が干渉しあうことから個室で調薬することになっている。
文句を言いながらも仕事は早い人たちなので、発注リストの前に薬品があがったらすぐしまえるように、ポーションケースを準備しておこうかな。
そんなことをしているとあっという間に午前が終わり、トルクスィー様との約束のため彼の執務室に向かうことにした。
お読みいただきありがとうございます。
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