被観察者の生い立ち
私はNO.9。9番目の見守る者。
テュソラータ国。
それはこの世界一、魔術が発展した国。
本来であれば国の頂点に立つ国王の上に、真王として魔導師が君臨する。
とはいえ上位の魔術師は絶対的な力を持つため、どの国であっても基本的には魔術師が実質的な支配者になっているが。
テュソラータ国は人間の雑事は国王が、それより大きな力がいることは真王が担う国。
そんな国の片隅でひっそりと彼女、アルマは生まれた。
貧民には珍しい、魔力持ちとして。
物心ついた頃から両親からは忌み嫌われていた。
かけられる暴言から察するに両親にはない色彩と魔力を持っているため誰の子かわからないということと、魔力持ちは15歳になると専門の施設に引き取られるため、将来的な労働力にもならず無駄飯食いということが理由らしい。
魔力を持たぬ者、正確には生命維持に必要な最低限の魔力しか持たぬ者は黒の髪と瞳を持つが、魔力持ちはその魔力が髪や瞳に影響するため様々な色彩を持つ。
そして彼女の父親は今でも語り継がれる程の大魔道士だ。
こちらから見ればれっきとした2人の子どもなのだが、愚かなことだ。
母からはお前のせいで浮気をしたと周囲に思われていると散々詰られ、父からは誰の子かもわからず労働力にもならないと日中は家から追い出される日々。
それでも引き取られることが決まっているため、不審な死に方をしていたり、いなかったりすると保育者に厳罰が与えられる。
そのため夜は家で寝ることを許されていた。
そしてそんな生活が10年も続けばある程度は順応してくる。
彼女はいつものように手伝いをしている教会へ顔を出す。
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「おはようございまーす!」
今日も私、アルマはいつものように挨拶とともに教会の一室に入室する。
「アル。おはようございます。
今日は煎じ薬作りの補助に入っていただけますか。」
挨拶を返してくれたのは、この教会の執務を取り仕切るトルクスィー様。
オールバックの薄紫色の髪で、濃紫の瞳が知的でダンディなお方。
そして机に向かう時はシンプルな銀のフレームの眼鏡をかけている。
ちなみに私の髪は銀色で、赤い瞳をしている。
家の付近の治安が悪いので怖い目に遭うという理由で、あまり女性らしさを出さずに短髪にしている。
最近知ったことだが、魔力を持たない……正確には持っていると言えるほど持っていない人のや瞳は黒か茶色
らしい。
そして数百年前は魔力持ちもそうでない人も一緒に暮らしていたため、両親は魔力を持たない人でも先祖に魔力持ちがいれば子どもに魔力持ちが出ることはあったらしい。
つまり私の色彩が両親に似ていないのは魔力持ちだからで、母の不貞による子ではないと思われる。
父が数代前の魔力持ちの先祖の自慢をしてるのも聞いたことがあるし、そちら由来の力だろう。
そんなことを今更両親に話そうとも思わないけど。
「そうそうアル。今日の手伝いは午前までで、午後はこの部屋へ来てください。
貴女の将来に関する重要なお話があります。」
「わかりました。失礼します。」
何の話だろう。でも、とりあえず朝のお手伝いが先だ。
私は調薬室に足を向けた。
お読みいただき、ありがとうございます。
1話目なので説明が長くなってしまいますね。
しばらくこんな感じかもしれません…。