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名もなき剣に、雪が降る  作者: 妙原奇天


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10/10

『名もなき剣に、雪が降る』あとがきにかえて――

わたしはあの時、あの人の顕彰に猛反発した。

誰よりもあの人を称えたかったはずのわたしが、

その表彰が白々しく思えてならなかった。

勲章だの、功績だの。

あの人が望んでいたものじゃないと、そう思った。

戦のあと、わたしは軍を去った。

それと同時に――痛む左足を引き摺りーーあの人が生まれ、生き、戦い、そして消えた足跡を一つずつ辿る旅に出た。

白布の剣の鞘を見た山中も。

名もなき塚と呼ばれる岩の陰も。

伝承の形で残された、剣士の影を語る集落も。

どれもが、あの人そのものだった。

どれもが、あの人じゃないようでもあった。

わたしは、それらの情報を世に出すべきじゃないと思った。

いや――違う。

世に出さぬほうがいいと、“思いたかった”んだ。

誰かが語るのなら、それは――

生き延びた者の語りであるべきだと、

その“誰か”は、ほかならぬ自分であるべきだと、

否、そう“ありたい”と――

わたしは、そう願ってしまったんだ。

もう長くはない。

医者にはとうに、余命を宣告されている。

知っていたよ、ずっと前から。

この胸の奥に、ずっと何かが燻っているのを。

静。

もうすぐ、そっちへ行く。

お前がいつも、俺に立ち位置を任せてくれていた場所。

「左斜め後ろ」。

そこに俺はいるよ。

最期まで、背中は預けたまま、な。

じゃあ、また――


矢野 蓮 ーー本書を記し、三日後に永眠す。


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