模倣少女、次なる追手に見つかるようで。
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「つまりオイラはお前がぼんやり抱えていた「魔法少女には妖精がつきもの」って思い込みが模倣された妖精もどきってことさ。少女みたいな思い込みしててウケるな…いたっ!」
「……うるさい」
パチるんに簡単な説明をされて、思わず枕を投げつけてしまう。
くっ、顔が熱い。ちょっと無自覚だったことを言われるって、こんなに恥ずかしいことだったか?なんとなく違和感を感じる。調子が狂う。
しかしパチるん、パチるんか…。
おそらくパチもの+ポルるんの合わせだとは思うけど、いくらなんでも名前が少々安直じゃないか?そう思って折角だし、直接聞いてみた。
「だってオイラはお前の思い込みから生まれてるんだぜ。つまりオイラの名前がダサいとしたらシンプルにイミテーションのネーミングセンスが…あいたっ!」
余計なことを言おうとするパチるんに、今度はティッシュ箱を投げつける。
やっぱりおかしい、オレはネーミングセンスの無さを指摘された程度で怒るようなやつだったろうか。
もしかして、精神が体に引っ張られてるのか…?
だとすると結構まずいのでは。このままじゃあ本当のイミテーションになってしまう。
どうあれ、早く元に戻らないといけないが、もしかすると時間はあまり無いのかもしれない。
ともかく、だ。
折角目の前に情報をもっていそうな妖精もどきが現れたのだから、利用しない手はない。
色々と聞いてみよう。
そんなことを目論んで、魔法少女の力の使い方だとか、ダークマ団の居場所だとか聞いてみたのだけれども。
「だーかーらー。オイラはイミテーションから生まれた存在なんだから知るわけないだろ!無茶ぶりはよくないぜ」
「じゃあ…なんで無知子とか…煽ったの!」
「オイラの趣味だ…あいたぁ!イミテ!投げるものに躊躇が無くなってきてないか!?」
「その…イミテっていうのも…なんなの…!」
「略称だよ、イミテーションだと言いにくいだろ?ちょっと可愛くて似合うと思っ……待て!ベッドランプはダメだって!」
「ふー…っ!ふー…っ!」
思っていた何倍も何にも知らなくて、完全に肩透かしを喰らった挙句、無駄に煽られまくってオレはキレていた。
「しっかし、いよいよ子供みたいになってきてるぞイミテ…」
「え…?……あ」
「自覚なしか~。こりゃ本物の女の子になる日も遠くないんじゃないか~?」
「うるさい…!」
本当に味方の妖精なのかこいつ。というかオレが産み出したのか?
あーあれか、妖精は基本的に邪悪な枠とか思ってたからか。自業自得極まれりだ。
ともかく。
「オレは、男。必ず戻るから」
「その姿だと説得力は欠片もないけどな」
「言ってると、いい…」
いつか必ずこのくっそ生意気な妖精にほえ面をかかせる。オレは心の奥でこっそり誓った。
「それより気づいてるか、イミテ」
「何が…っ!?」
聞き返すのと同時に、部屋の窓ガラスが勢いよく割れた。
「あちゃー、気づいてなかったか。魔力を感知するのはオイラの役目かもな」
「一体…何が…」
「追手だよ。ただダークマ団の方じゃないな。見えてきたぞイミテ」
衝撃と共に撒きあがったが土煙が晴れていくと、その中の人影がはっきり視認できた。
「見つけましたよ、模倣少女イミテーション。正義の刃が悪を断つ。魔法少女ソードプレイ、推参しました」
そこにはフラワーバッドとはまるっきり違う、敵意を込めた瞳が、オレを睨んでいた。