本物の魔法少女、幹部と戦うようで。
フラワーバッド視点です。いい子。
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「…っ!」
わたし──魔法少女、フラワーバッドは、目の前にいるダークマ団の怪人…スパイダー伯爵につかまっている子からとたんに力が抜けるのを確認した。
それと同時に服装が魔法少女のそれから、普通の服装に変わる。
気を失ったのかな。
きっと身動きがとれない怖さかもしれない。
あの子が一体だれなのかは、まだわかってないけど、怪人に襲われる怖さはわかる。
わたしはポルるんが来てくれたから、魔法少女になることを決められたけど…。
きっとあの子は、自分でなりたくてなったんじゃないんだと思う。
妖精の姿も見えなかったし、それにポルるんが感じたって言う悪い魔力。
それに今のつかまっているあの子は見ればわたしだってわかる。きっと、あの子はダークマ団に無理やり魔法少女にされてしまったんだ。
そして、なんとか逃げ出したけれど、ダークマ団の怪人にまた見つかってしまった。
わたしのせいだ。もっとあの時、あの子によりそってあげれていたら。そしたら何かがかわったかもしれない。
いや、まだ間に合う。
「フラワー!集中するポ!まだ間に合うポ!」
「わかってるよ、ポルるん。スパイダー伯爵をたおして、あの子を助けだす!」
スパイダー伯爵にフラワーステッキをかまえる。
「ほぉ、たかが魔法少女一人がこの!ダークマ団幹部であるスパイダー伯爵に歯向かおうというのかね!」
「はむかうんじゃない、あなたをたおすんだ!」
本当のことを言うと、わたしも怖い。
スパイダー伯爵は自分のことを幹部って言っている。
幹部って言うのは、確かすダークマ団の中でもすごく強い怪人たちだって、ポルるんから聞いたことがある。
…わたしは、魔法少女としてはまだまだ半人前だ。
先輩の魔法少女のソードちゃんなんかとくらべると、本当にそう思う。
でも。
それでも。
「それでも、わたしがここであの子をみすてていいことにはならない!」
集中するんだ。
魔法少女の力は、思いが大事。
だれかをたすけたい、世界を平和にしたいって。
そういう気持ちが、わたしたちにはたくさんの力をくれるんだ。
だから。
「絶対に!あの子を助けるんだ!!!!」
ぎゅっとフラワーステッキをにぎって、スパイダー伯爵にむけて走りだす。
「はっ!近づいてくるのであればそれはこのスパイダー伯爵の蜘蛛の巣トリングスの餌食になるだけのことよ!くらえい!蜘蛛の巣!トリングス!」
「やああああっ!!!」
「なにっ、蜘蛛の巣トリングスがこうも容易く千切られるだと!?なんだ貴様、その力は!」
わたしに目がけておそってきた蜘蛛の糸を、がむしゃらにフラワーステッキをふりまわして千切る。
なんでだろう、今のわたしは、負ける気がしないよ!!!
「フラワーの魔力がどんどんあがっているポ!それだけあの魔法少女を助けたいという気持ちが強いんだポ!」
「ふざけるな!なぜ実験体0号にそこまで真剣になれるのだ!貴様とてわかっているはずだ!実験体0号が、我々ダークマ団の開発した人造魔法少女だと──」
「知らない!」
「なにぃッ!?」
「わたしは、その子のことをなんにも知らない!!だから!助けるんだ!その子のことを知るために!仲良くなりたいから!!!くらえ!フラワー・ボム!!!」
「あり得ない!このような魔法少女に!この、スパイダー伯爵がっ…!!!」
わたしの全力のフラワー・ボムが、スパイダー伯爵にあたる。
た、たおした…のかな…?
もくもくとしたけむりが晴れると、そこにはダメージを負ったスパイダー伯爵がいた。
せなかから生えてる足の数もへっているし、ちゃんとダメージはあたえられている…んだけど…。
「た、たおせなかったの…!?」
「今のはこれまでのフラワーの中でも最高の威力だったポ!か、幹部はやっぱり強いんだポ…!」
「よ…くも…この…オレに…これほどのダメージを…!許さんぞ、許さんぞ魔法少女がぁ!!!」
スパイダー伯爵が、キズだらけの体でさけんでいる。
本当なら、もっとフラワー・ボムをうちこまないといけないんだけど…、わたしの体は、言うことをきかずにその場にたおれこんでしまった。
ごめん…ごめん…助けられなくて…ごめん…!
わたしがそんなことを考えながら、あの子を見ると。
「………助けてくれて、ありがと」
奇麗な銀色の髪の毛が、風にゆれて。
白黒の魔法少女が、そこに立っていた。
ブクマがじわっとしてもらえて大変嬉しい。
評価、コメント、ブクマは物書きの永遠のモチベである。