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男子高校生、悪の組織に捕まり魔法少女になったようで。

 事の始まりを遡ると、オレがある夜に悪の組織に捕まったことに起因する。

 そう、悪の組織。

 悪の組織である。

 オレも驚いたよ。まさかそんな時代錯誤な連中が本当にいたなんて。

 しかも後々わかったことだけど、思ったより派手に暴れまくっていた。

 そういうのってテレビとかで報道されないにしても、目撃者から広がると思っていたけれど、意外と気づかれないものなんだな、各所で暴れる連中の存在って。そんな風に感心してしまったまである。果たしてそれを隠蔽しているのが悪の組織なのかお国側なのかは未だにわかっていないけれど。

 ともあれ。

 そんな悪の組織に捕まったオレは、当然叫んだ訳だ。

 「嫌だ、死にたくない!まだ生きていたい!」って。

 そりゃ誰だってそうだろう。例え死にたがりの厭世家だろうが、悪の組織に殺されるなんて末路をほいほいと受け入れられるやつなんて早々ないだろう。

 特にオレは別に死にたがりでもなんでもない、ただの男子高校生なのだ──だったのだ。

 死ぬ覚悟なんて微塵も出来ていなかった。それは今でも出来てない。

 そしてそんな風にみっともなく抵抗するオレに、悪の組織の誰かが──これが本当に誰なのかがわからないのである。だって全員黒いマントを被っていたし。とは言えシルエットすらほとんど同じになっていたのは何かがおかしいと思う。超技術とかあるのだろうか。あるのだろう──こう言った。

 「安心しろ、貴様を殺しはしない。大事な()()なのだからな」

 その直後に何かのガスを噴射され──おそらくは麻酔とかだったのだろう──気を失いながらも、それを聞いたオレは、少しだけ安心してしまった。あぁ、少なくともここで命を落とすことはないのだ、と。

 流石に、ある意味死ぬより酷い目にあうことは想定していなかったけれど。


 目が覚めた時に最初に感じたのは、「成功だ」「これで奴らに対する対策と研究を……」と言った悪の組織の連中の喜色染みた声。そして自分の体への強烈な違和感だった。

 何か体中にこれまで感じたことのない正体不明の力を感じたのだ。そしてこの体は、その力の使い方が本能的にわかっていた。

 やつらがオレを見下ろして何やら議論しているのを見ながら、腕に力を込める。少し動かすだけで、パキンと音を立てて手首の拘束が外れた。

 続けて足にも力を込め、足首の拘束も外す。

 周りの連中が何やらざわついているのは感じ取れたけど、その時のオレは「今なら逃げられる!」という全能感しかなくて。

 そのままの勢いに任せて、オレは悪の組織を力尽くで脱出した。

 

 なんとか逃げ切った後、オレは深夜の町を駆け抜けながら、ふと横目で建物の窓に映った自分の姿を見て足を止めた。

 「なに……これ…」

 それまでは必死だったから全く気がつかなかった体の変化。

 ボサボサの黒髪と、イケメンとは言いがたい普通の顔、そこそこの身長。それがこれまで生きてきたオレの体だった。

 しかし、反射した窓に映る自分の体は、それらから全くかけ離れていた。

 白……いや、白銀の色をしたツインテールに、ギリギリで中学生だと言えそうな身長。そしてとんでもない美少女が、表情筋の死んだ顔で、どこか恐怖を感じるような赤い目でこちらを見ていた。

 「どういう…こと?これが…オレ……?」

 声も、高くなっている。

 それも声変わりしていない男子の声でもない、女児の声。

 なんなら、喋り方まで強制的に変わっている。

 口が上手く回らない。たどたどしい喋り方になっている。「オレ」という呼び方が変わっていないのは、助かったけど。

 何より目を引くのは、その服だった。

 間違いなくオレは捕まるまでは学ランを着ていたハズだったのに。

 今目の前に映る少女が──つまりオレが着ていたのは、黒を基調としたフリフリの衣装。

 つまり、魔法少女のような服装だった。


 「嘘……もしかして……オレ…」

 魔法少女にでも、改造されたって言うのかよ!?


ともあれ、こんな経緯で魔法少女に(不本意ながら)なったオレは、自分が元に戻るために悪の組織と戦い……ながら。


「待ちなさい!今日こそ逃がさないから!」

「無理……貴女ではオレを捕まえられない」


他の魔法少女に追いかけられるのだった。

いや、おかしいだろ!色々と!

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