はるのななつぼし
風に流れる花びらに
宙を流れる風が謳う
それは宛て名のない
手紙のように
風だけが知る行き先へ
春をゆるやかに
やさしく舞いながら
桜色の夕映えを
夢見鳥たちが静かに
羽ばたくように
薄紅色の花びらは
瞳から心へと
その色を移して
見つめる瞳には
葉のまばゆい翠が
鮮やかに映り込み
やがて
包み込むような
明かりを灯す月は
まるで光の華
そして北の夜空に
天高く舞い上がる
北斗七星
はるのななつぼし
それは星空の鍵
眠りから覚めた
おおぐま座の星々
その背に浮かび上がる
七つの光が空を拓き
開いた季節の扉から
女神や獅子たちが
その姿を現して
はるのななつぼし
それは導きの鍵
沈むことなく夜空を
照らし続けながら
きたのひとつぼしの
在り処へ導いて
地上で何かを
見失ったときは
たしかなものが
ほしいときは
空に浮かぶ鍵を
見つけて
その先にある
北極星の輝きを
道標にして
はるのななつぼし
それは星空の翼
草木たちの息吹が
空へとこだまする
春月夜の丘で
鳥来月の夜空を
天高く舞い上がる
星の光は翼のように
夢はきっと
育てていくもの
かもしれない
心に注ぐ陽射しで
あたためながら
心に降る雨も
いつか糧となり
心に吹く風に
願いをのせて
移りゆく季節と
変わらず見守る北極星
旅路が長いほど
道に迷うことも
きっと
あるけれど
空はいつも
見上げればそこに
そして
輝き続ける、
七つの星とともに
おおぐま座は、春の夜空高くに上がる星座で、その背中から尻尾にかけての七つのひときわ輝く星が北斗七星です。その形から「ひしゃく星」のほか「鍵星」とも呼ばれます。
北斗七星は春から夏に最も高く、他の時期もほぼ地平線に沈まず見ることができ、真北の空にある北極星(北のひとつ星)を見つける手がかりとされます。
夢見鳥は蝶、鳥来月は四月のことです。春の花と星をモチーフに、詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。