第96話 世界大戦
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魔王を討伐してから、約400年が経ったある日、世界大戦が巻き起こった。セントリーを侵略する軍隊が各地に現れ、無実の人々が次々に殺されていった。ストーズの隣国であるシンジュも侵略され、マサカリの国も無くなった。サーベルトが義賊として活動していた国も、壊された。
しかし、戦争は自然の摂理だと受け入れた。
ジャッカルは戦争を止めようと、侵略軍を次々に殺していったが、俺はそれを止めた。俺たちはもう人間じゃない、だから人間社会に関わる存在ではない……と諭した。だってそうだ、俺たちはどの兵器よりも強い。治安兵士の持っていた飛行船なんて一発で撃ち落とせるし、何千人の兵士とも戦える。
でも、ジャッカルはセントリーの人々と仲良くなっていた。だから大切な人が目の前で殺されるのを無視できなかったんだろう。俺の忠告を無視して、ジャッカルは侵略軍を全滅させた。しかし戦争は収まらなかった、そう簡単に収まる戦いじゃなかった。
結局、セントリーは別の国に吸収された。ジャッカルが命を懸けてまで守り抜こうとした国は、簡単に消滅した。そういうことがあってから、俺はジャッカルと会っていない。方向性の違いというやつだ、それでも……彼もまたどこかで自警団としてヒーロー活動をやっているんだろう。
俺は戦争の直後に拠点を別の国に置いた。セントリーだった国は侵略され、植民地として支配されていたから。俺はセントリーを見捨てた……というのは間違ってもいるし、当たってもいる。俺だってセントリーを守りたかった、でももうそんなことを言えない領域にいた。
それで、今はセントリーから見て東にある、遠く離れた国にいる。もちろん、ストーズでも何でもない。ただの国だ、世界大戦に巻き込まれたものの、何とか生き残った国。俺は生活をそこで送ることにした。といっても、そこは無人島が多い国だったから、俺は誰もいない無人島で勝手に暮らした。
生命の石を使って、誰も来ないような空間を作り、そこから拠点を建築した。また、モンスターに栄養など必要ないから、最低限の水と陽の光だけ確保できるような造りにした。侵略軍の兵器じゃビクともしないような、強固な家に。
そこに俺は独りで暮らし、独りで集中して、独りで全てを見た。全世界で起きていることを、全て感覚で拾えるようになっていた。各地で起きている事件も見えるようになった、例えば子供が誘拐されていたり、飛行船が墜落したり。こういうのは助けに行こうと思った。でも、俺が助ける前に、別の誰かが助けに向かっていた。
だから、俺は彼らに任せて、数年ほど体を休めることにした。魔王で例えるなら、封印だ。強大な力を持った生物は封印される運命にある、だからこそ自分の手で自身を封印する。生命の石を誰にも使わせてはいけない。魔王のような最悪の生命体を生み出さないためにも、俺は自分の手で自身を封じ込めた。
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巨大な爆発音で、俺は目を覚ました。
封印を剥がす程の爆発、何が起きたんだ。
急いで感覚を駆使して、原因を調べたが……俺は最悪のことをしてしまった。人類最悪の発明を防ぐことができなかったのだ。自身を封印していた間に、人類最悪の発明となった爆弾がとある国に投下された。その爆弾の威力は凄まじく、遠くの島で眠っていた俺のところまで、爆音と衝撃波が届いた。
生命の石を使って、様子を見に行くと……土地は枯れ果てていた。建物も何もかも消滅していて、黒い灰が永遠に降り注いでいる。爆弾は辺りを破壊するだけでなく、とある害悪なエネルギーを発したようで、辺りにいる人の体調が悪化していくのが見えた。その場で倒れ込む者、火傷を負い意識が朦朧としている者、川で白目を剥いて浮いている者。それら全てを視認した。
爆心地が近く、死体ごと消えた者もいた。地面に照らされた影が爆発した当時の様子を表している。爆発から数分しか経っていないが、酷い有様だ。こんなこと、誰がやったんだよ。もうモンスターなんていないし、モンスターはそもそも架空の存在だったことになっている。だから犯人は分かっている、人だな。
俺はその場で腰を下ろし、嘆いた。
あの時、セントリーの戦争を止めていたら、こんなことにならなかったんじゃないか。爆弾を落としたのは、セントリーを侵略していた国。あの時、ジャッカルと一緒に戦いを止めておけば、こんな大惨事には繋がらなかったはず。人間の域を越えていた俺でも、大惨事を止められなかった。
ここで、俺は決心した。
この世界は俺の暮らす星でもある。だから人間の域とか社会関係とか言ってられない、ジャッカルに言ったことは全て無かったことにしよう。俺はモンスターであり、人間だ。石の保持者でもあると同時に、人間だ。だから、戦争を止めなきゃいけない。次の被害者が出る前に。
そう考えていた時、背後から声がした。
「違う、そうじゃない」と。
声の主はジャッカルだった。彼もまた、この爆音を聞きつけて現地に向かっていたのだ。彼は俺の考えが読めるからか、俺の決意をわざわざ言葉に出して否定していた。そして俺の前に立ち、首を横に振っている。
「何が違う?」
「俺たちがすべきなのは人助けだ。戦争を止めるのもそうだが、困っている人を助けに行くぞ。俺たちの存在意義は、それだ。明確に区別しなければならないと分かった。もう一度言うぞ、エルドと俺がすべきなのは、人助けだ」
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