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第91話 エルド、覚醒

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 光の巨人の持っていた翼は消滅し、輝きもなくなっていった。どうやら、ジャッカルの唱えた呪文が効いたらしい。俺たちのことを掴んでいたアルビノ巨人は消滅、岩場にいたハルたちも解放されていた。


「何をした……?」


「言っただろ、石を完全に覚醒させた。石の主導権も俺にある」


 肝心のシンカは、生命の石と書を失っていた。逆にそれらはジャッカルが手にしていた。書物が手元にないため、シンカは石を取り戻せずにいた。光を失った光の巨人は気を失ったのかゆっくりと落ちていくのに対し、シンカは怒りで顔が真っ赤になっている。


「何故だ、貴様が書を読むことなどできない」


「いいや、呪文を記憶した」


 ジャッカルの手には、紫色に光る石があった。これが生命の石か、生で見るのは初めてだ。ずっとラルティーグの体に埋められていたから分からなかったが、こんなに美しい見た目をしているのか。まるで、宝石みたいだ。


「自然の摂理に反するな」


 そう言って、シンカはジャッカルから石を奪おうとした。しかし石の力を失ったシンカは弱々しく、モンスターを生み出すことも制御することもできなかった。光の巨人を消滅させればシンカも死ぬ、だけど光の巨人を動かすと体力を消耗する。シンカは何も出来ない状況に置かれていた。


「Belyy、Gigant、Mir、Spasti、Berserk、Prodolzhat……この呪文は何か分かるよな?」


「止めろ、今すぐ止めろ」


 シンカの戯言を聞かずに、ジャッカルは石を俺の中に埋め込んだ。一瞬だったから分からなかったが、今読んだ呪文が石を埋め込む呪文なんだろう。覚醒した生命の石が入ったからか、体の全ての力も覚醒したようにみなぎっている。


「書は俺が持ち、石はエルドが持っている。次することは分かるよな、書物を読んだことのあるお前なら」


「止めろ、私を殺せば世界が消滅するぞ」


 みなぎる力は俺を興奮させ、最高に強くさせる。手元に落ちていたゴブリンの棍棒を持つと、それはハンマーになった。これだ、マイト・ラスターも同じように、武器を作り出していた。更に生命の石はここでは終わらない、何もないところから生命を作り出せるようになっていた。俺はドラゴンを生み出し、崩れゆく岩場にいたハルたちを助けるよう指示した。


 真っ青な体をしたドラゴンは、俺を襲うようなことをせず、指示通りに彼らを助けに行った。崩れた岩場から怪我を負っているサーベルトを救出し、4人を回収してから近くの島へ向かった。こんなこともできるのか、生命の石って。


 更にエネルギーを動かすこともできる。俺は全世界に放出された星のエネルギーを、海の中に戻した。光の巨人はもう完全に消滅しており、この島が地面に落ちるのも時間の問題となっていた。しかし、それもまた生命の石で対処できた。海から大量の長いツタを生み出し、島を支える。普通のツタじゃない、石が生み出した最強のツタ。


「……恐ろしいな」と、ジャッカルがボソッと呟いた。俺もぶっちゃけそう思っている、人間でもないしモンスターでもない、何なら魔王を超える程のとんでもない力を手に入れてしまった……と。星を滅ぼそうとしていた魔王よりも恐ろしい存在となってしまった気がする。


「待て、私を殺すな」


「言うことを聞くと思うか?」


「私は観察者だ、私を殺せば、星もろとも消滅する」


 生命の石を手にしたものの、観察者というシステムは未だに理解できていない。星を見守るだけの存在なんだろう、魔王が観察者になれたということは俺でもなれるのか。でも、書物には何も書かれていない。というか、俺では読めない。生命の石を手にしたのにも関わらず。


「観察者を引き継ぐ前に私を殺せば、星はどの道消滅する。これは脅しではない、事実なのだ」


 嘘か本当かは分からないため、とりあえず生み出したツタを使って、シンカの体を空中に固定した。緑色の強固なツタはシンカの体を的確に掴み、離さない。これは島を空中で支えているのと同じツタ、つまりどんなことがあっても離せない。シンカがどんなに足掻こうとも。


「そうだ、これでいい」


 シンカは動けない状態となりながらも、喜んでいた。別に殺さない訳じゃない、真実が判明すれば真っ先に俺がこの手で討伐する。島の地面から鋭い剣を2本生み出し、腰のベルトに差し込んだ。生命の石というのに、生命でもない剣まで作れるのか。やはり人智を超えた石だけあるな。


「貴様らが石と書を渡さないのなら、それで良い。しかし私は観察者、世界は私の手に委ねられている」


 もし、シンカが本当に観察者なら、俺がこの手で殺してしまえば世界が消滅する。このままシンカを見逃してしまえば、デストルドー計画の続きが始まる。石を完全に覚醒させたとは言え、無限の力を手に入れたとは言え、不明なことが多すぎる。


「そうだ、私が何故人間の姿であるか、教えてやろう」


 シンカはツタで拘束されているのにも関わらず、勝手に1人で話し始めた。ジャッカルは書物を読むのに集中しているし、他の4人は近くの島にいるから、聞いているのは俺だけだと言うのに。


「魔王の姿でいれば、この状態でも抜け出せる。体を煙にして逃げればいいのだから。しかし人間の姿であると不便と同時に、人間にしかできないことがあるのだ。元々は人間だと勘違いしていたエルド・ミラー、貴様に尋ねておこう」


 人間にしかできないこと……か。そう言われてみてば分からないな。人間はただ人間として生きているから、人間にとっては普通の生活なんだ。モンスターと自覚してから出来ることなら多く見つかるが、改めて考えてみれば……見当がつかないな。




「答えは簡単、容易に死ねることだ」


 そう言って、シンカは喉を掻き切って死亡した。

 それと同時に、世界は真っ白になった。


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