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第90話 これで終わりだ

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「よし、準備はいいか?」


「あぁ」


 ラルティーグは、自身の召喚したアルビノ巨人を一箇所に集めた。巨人を動かすだけでもかなりの体力を消耗するため、周りにいる俺とジャッカルが助けないといけない。もちろん、その間にもモンスターは襲ってくる。


 さっきバジリスクとやらを倒したから、魔王は真剣に止めようとしてくるだろう。奴は光の巨人になっているからここまで来れないだろうけど、大量のモンスターを無限に召喚しているんだ、全てのモンスターを俺たちのところに向かわせるのも可能だろう。


「……ウッ……ぐッ」


 ラルティーグは痛みをこらえながら、アルビノ巨人を一生懸命動かしている。その間に俺とジャッカルで手分けして、迫り来るモンスターを討伐する。アルビノ巨人は全員、火口を塞ぐのに使われる。だからモンスターを倒すのは俺たちしかできないこと。


 火を放つドラゴンに飛び乗り、牙をへし折ってから目を殴り続ける。剣を失った今、有効な武器は拳しかない。ジャッカルも、空を飛び回りながらランタンの爆弾を奪い、それをゴブリンに向かって投げている。体力の消耗とか言ってられない、モンスターの汚い返り血を浴びてもなお戦い続ける、それこそが討伐者。


 と、ここでハルが怯えたような声で、脳内にあることを伝えてきた。


「……島が浮いている。光の巨人だ」


 ハルの言っていることを確かめるために、もう一度、空を飛ぶ”フライホース”というモンスターの背中に飛び乗ってから辺りを確認すると……確かに島が浮いていた。正確に言うと、光の巨人となったシンカが、グルガルタ島を手のひらで持ち上げているんだ。両手で、川の水をすくうようにして。


「これぞ、光の巨人だ」


 シンカの声が聞こえたのと同時に、島を持ち上げている光の巨人の姿も顕になった。アルビノ巨人にそっくりな見た目をしているが、体は何百倍も大きく、所々体から光が漏れている。目も黄色く光っており、光の巨人にふさわしい見た目をしている。


 フライホースの翼を折り、尖った翼の先端を体に突き刺して討伐、その後柔らかいゴブリンの体を使って着地し、状況を整理するためにラルティーグの元に戻った。彼はまだアルビノ巨人を制御していたが、光の巨人の放つ反エネルギーのせいで、上手く動かせずにいた。


「ダメだ……光の巨人の影響を受けている……」


 やがて、アルビノ巨人の顔から新たな顔が何十個も生まれ、奇妙な姿へと変化していった。女性らしい顔や男性らしい顔、子供らしい顔や猿みたいな顔、それがアルビノ巨人の穴という穴から現れてきている。これも反エネルギーの影響か。


「どうなってんだよ、これ」


 アルビノ巨人の変化を目の当たりにしたジャッカルは、ボソッと呟いていた。アルビノ巨人の手からは真っ白な液体が吹き出し、口からは別の男の顔が詰まり気味に出ようとしている。足はひねくれ、その場で倒れた。他の2体も同じ、もはや火口を塞ぐとかいう域ではなくなっていた。


「これで最期だ」


 シンカは光の巨人から新たに人間態を生み出し、俺たちの前に現れた。同時に俺たちはアルビノ巨人だったモンスターに掴まれ、身動きが取れなくなった。もはやアルビノ巨人はアルビノ巨人じゃない、全く別のモンスターへと変わっていたのだ。それだけじゃない、シンカは新たに生命体を構築していた。


 ハルに脳内で助けを呼ぼうとしたものの、彼らもまた別のモンスターに捕らえられていた。ハルとマサカリはドラゴンに押さえつけられ、フィールドはスケルトンに囲まれ、サーベルトはシーハロークに強く握られていた。たった一瞬で、この有り様。


「ようやく、石の完全覚醒となるだろう。ご苦労だった、バジリスクも。長年の苦労が報われる」


 そう言って、シンカは巨大な書を、光の巨人の前に生み出し、中に書かれてある呪文を読み始めた。石の完全覚醒に直結する呪文なんだろう、何の文字かは全く分からないが。




「Evolyutsiya、Uchrezhdeniye、Vosem、Krot、Yuzhnaya Medveditsa、Ovets、Muzhchina、Prikosnoveniye、Zhalkiy、Dva」




 シンカがそう唱えた瞬間、ラルティーグの体は消滅した。生命の石が完全に補完され、完全に覚醒したのだ。ラルティーグの体は消滅したものの、魂はシンカの体に吸い込まれていった。これでシンカはこの世で最も最強で、全ての生命体を凌駕した存在となった。


 同時に、光の巨人も完全に覚醒した。島を持ち上げている光の巨人は立ち上がり、グルガルタ島を天空まで持っていった。島の端にある岩場は崩れ始め、海に落下していく。やがて光の巨人は巨大な翼を生やし、島を持ったまま星の外へ飛び立とうとしていた。


 黄金に輝く体と、紫に光る翼を持った光の巨人。計画を止めたくても、アルビノ巨人に掴まれているため、為す術もなく、ただ光の巨人と島が飛び立つのを見ていることしかできなかった。反対にハルたちは、岩場の近くにいるため、今にも海に落ちそうになっていた。


「この星に用はない」


「……待て、最後に話したいことがある」


 シンカは光の巨人に体を戻そうとしたが、何故かジャッカルがそれを止めた。為す術も残されていないのに、ジャッカルは何をするつもりなんだ。


「いいだろう、星の生命は皆怯えている。人間はどうだっていいが、他の生命体が可哀想だ。だから早めに終わらせろ、彼らに苦痛の時間を与えたくはない」と、計画の終了が近いシンカは、ジャッカルの提案を受け入れた。


「それで、何を話したい」


「さっきの呪文のことなんだが、あれは何語だ?」


「無知のまま死ぬのが苦しいか、ならば教えてやろう。生命の石が書き連ねた呪文だ、過去の世界での出来事を踏まえ、全ての理が平等となるために作られた言語。名前は知らないが、書を読めば全てが分かる」


 生命の石が書き連ねた呪文……答えになっているのか分からない。それに、ジャッカルはどういう意図があって聞いたんだ。脳内で話せたり、ジャッカルの思考が読めるはずなのに、今は全く分からない。まるで別の生命体になったように。


「そうか、呪文を唱えれば石を覚醒させられるのか?」


「その通り、だが貴様らが書を読むことはできない。書は私が手にしたからな。無駄な抵抗は止せ」


「無駄な抵抗じゃないぞ」


「何を言っているのかさっぱりだ、貴様はどうしたい?」


「決まっているだろ、石の完全覚醒だ」


 そう言って、ジャッカルは呪文を唱え始めた。ジャッカルの特殊能力は瞬間記憶、見たものを全て覚えられる。それでシンカの唱えた呪文を全て覚えたというのか。俺が嗅覚で場所を特定したように、ジャッカルは記憶力で魔王を討伐しようとしている。そうか、その手があったのか。ジャッカル。


「---Zhalkiy、Dva。終わりだ、シンカ」


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