第88話 蹴り上げろ!
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「人間のメリット、魔王のメリット、巨人のメリットを全て兼ね備えた生物って訳か」
「いかにも、生命の石にこだわり過ぎた。結局は私の力のみで星など破壊できる。無論、永遠に続く宇宙もな。宇宙の中心に位置する生命体として、私にも役割が生まれたよ」
「……何も無いだろ、することなんて」
「いいや、全ての生命体の意識を変えなくとも、星を破壊することができる。それは私の努力の賜物でもあり、世界を安楽へと導く鍵となる。それは私の管轄する星だけではない、全ての星を安楽へと導く必要がある。私は観察者として、他に存在するいくつもの星を破壊し、全てを無に還し、そこから新たな幸せを紡ぐ必要がある」
シンカは観察者になったからか、考えることが壮大になっていた。世界を滅亡させたい謎のモンスターかと思っていたのに、その割には計画の結末があやふや過ぎる。俺でも思うぞ、もっと用意周到に出来ただろう……って。シンカとなるために人間に成り上がったり、その割にはすぐに人間の体を捨てて巨人になっている。
それに星のエネルギーを抜いて星を中から破壊するとかいいながら、次は星を単独で破壊するとか、もう最初の計画なんて覚えてないだろ。何で逆に俺が覚えているんだよ。観察者となったシンカは、星に関する全ての知識が入ってきたからか、頭がパンクしているのかもしれないな。
それでも、俺たちのやることは変わらない。魔王、シンカを完璧に殺して、世界を救う。まずはどうにかして巨人を倒さないと、巨人に世界を踏み潰されるのが先か、エネルギーが全て放出されるのが先か、俺たちが放出を止めるのが先か。
「これは貴様らにとっても、私にとっても最後の戦いだ。存分に楽しませてもらおうじゃないか」
そう言って、シンカは大量のモンスターを召喚した。ゴブリンからスケルトンといった雑魚モンスターから、ジオンガルムやマーナガルムといった上級モンスターまで。更にはドラゴンやランタンまで召喚していた。それも数が尋常じゃない、ゴブリンだけで数万体はいるぞ、それらがシンカの手のひらの上に乗っかっている。
シンカ巨人は島を手のひらで持ち上げるように出現しているため、まだ顔や体は見えていない。だから弱点であるとされる背中もまだ見えていない。もちろん、巨人の弱点をそのまま引き継いでいたら……の話だが。いくら俺たちがモンスターと言えども、水中での戦闘には慣れていない。
「武器を取れ、状況は簡単。殺るか殺られるか、せっかくなら前者を選びたい」
ジャッカルは皆に武器を配りながら、士気を上げるために声掛けをした。
「俺はいくつものミッションをこなしてきた。しかし、こんな強大な敵と戦うのは初めてだ。だが、ラルティーグ。お前は唯一の経験者だ、全てのモンスターと戦ったお前なら何か分かるはずだ。弱点は戦いながらでもいい、頭の中で教えてくれ。それと……エルドとサーベルト。お前らは死ぬなよ」
何故、2人の名前だけ上がったのかは聞かなくても分かる。俺はサーベルトと顔を見合わせて、無言で分かち合った。ここにいる皆、戦いの前なのにも関わらず笑顔。もちろん、俺を含めて。あのラルティーグも、この場の空気に圧倒されたのか笑っていた。
「最後に……魔王のケツを蹴り上げるぞ」
ジャッカルの掛け声と共に、俺たちは進行してくるモンスターに向かって、突撃していった。
四方八方から迫り来るゴブリンに対して、俺とジャッカルは対モンスター用の剣で蹴散らしていく。ジャッカルの持つ剣はゴブリンに対して有効で、俺の持つ剣は上級モンスターに対して有効。だから迫るモンスターの種類によって武器を交換し合い、対処していった。
「ちっこいのを寄越せ!」
ジャッカルの声と同時に、俺は剣を投げ、その片手間で近くにいたゴブリンの頭を鈍器で叩き潰す。そこから剣を受け取り、突進してくる”スルラガ”の心臓を貫く。スルラガは調教されて車として扱われているモンスター、こんな奴までもが戦いに巻き込まれることになる、これが戦争だ。
「島全体から高エネルギー反応、シンカが来る!」
と、ここで遠くの方で戦っているハルの声が脳内に響いた。ハルはラルティーグとマサカリと共に、巨人やスルトといった大型モンスターを討伐している。超跳躍力を持ったハルは高く跳び、その勢いのまま巨人の背中を叩き切る。
炎に包まれた巨人・スルトはラルティーグの渾身の一撃で倒された。爆弾を落としながら辺りを舞うランタンは、マサカリの放り投げた槍によって墜落し、そのまま爆裂四散した。皆、モンスターの討伐経験が少ないというのに、感覚を研ぎ澄ませて戦っている。
それで、実際に俺もエネルギーの変動をこの肌で感じ取った。白い肌をした巨大な男は島を手のひらで支えているのか、未だに顔が見えない。でも、シンカなのは分かっている。
さて、シンカを完璧に倒すには、この白い巨人を倒す必要がある。巨人の弱点は背中だが、白い巨人の手しか見えていないため、今から倒すのは難しそう。手を傷つければ少しは反応を示すか、このまま無限に出現するモンスターを相手に戦っていても、仕方がない。
「……エルドの言う通りだ、このアルビノ巨人を完全に潰しておかないとな」と、また遠くの方でドラゴンと戦っているサーベルトが反応を示した。
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