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第86話 光の巨人

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 魔王……人間と同じ体を持つシンカは、既に儀式を始めていた。不思議な文字の書かれた祭壇の周りに身動きの取れないゴブリンたちを配置し、それらを擬似的なモンスターの器とすることで、エネルギーを保管する場所を作っていた。


 外に放出されたエネルギーは、身動きの取れないゴブリンたちに注がれているという訳か。それもそうだな、貴重な星と生命の石のエネルギーを、放っておくなんてもったいないし。せっかくなら世界滅亡後に活用したいと考えるのが普通だ。


「……私の計画を勘違いしているな。何故、ラルティーグを生かしておいたか分かるか?」


 空間をねじ曲げて、俺たちの目の前に姿を現したシンカは問いかけてきた。ラルティーグにしかできないことをするためだろう、この島に来てから何となく魔王のやりたいことが分かるようになってきた。石が教えてくれる、直感で。デストルドー計画の止め方も、何となくなら。


「貴様にしかできないこと、それは巨人の操作だ。私でも正確に巨人を操作するなど不可能に近い。だからこそ、貴様を生かしておいた。デストルドー計画の最終段階、それは……”光の巨人”の生成だ」


 空間をまたねじ曲げ、俺たちの背後に立ったシンカは、ラルティーグのみを攫い、祭壇に戻った。一瞬でラルティーグが奪われてしまった、取り返そうにも体が動かない。生命の石とか呪文とかで体の制御権を奪われているんだ。他の5人も同じく、口すら動かせない状態となっていた。


「光の巨人には、巨人を操作する生命体・巨人を動かすエネルギー・器となるゴブリン・生命体のバックアップとして貴様らの体が必要だ。古の理を破壊するためには、世を超越する存在となる、星を生み出したその者を擬似的に召喚し、私が成り変わることで、真の観察者と化すのだ。同時に星は壊滅、もはや宇宙の理も無に帰す」


 シンカはエネルギーを巨人に移し、もはやこの星だけでなく宇宙全体を破壊しようとしているのか。思った以上に規模が大きいじゃないか、何でシンカはここまで人間を憎んでいるんだ。人間だけを滅ぼすのなら、この星を破壊するだけでいいはず。


「生命の石を完全覚醒させる条件が判明した。それは、人間が持つことだ。今まで誤解していた、人間などゴミにも等しい分際だと思っていたが、真のトリガーは人間という種族のみであった。そこで私は考えた、貴様らモンスターでも、魔王でも覚醒させることのできない石を覚醒させるにはどうすれば良いのか。答えは等しく……私は人間と化した」


 ……奴は、シンカは望んで人間と成ったか。魔王の方が人間よりも優れた生命体だと思っていたが、そもそも石を覚醒させる条件が間違っていたため、シンカは石を覚醒させるためだけに魔王という称号を捨て、魔界でもなくモンスターでもなく、人間となったのだった。


 しかし「レミノウ」とかいう呪文を使っていたから、ただの普通の人間ではないんだろう。魔王の持つ力を最大限に引き継いだ、人間。もはや人間に近いように作られたモンスターのラルティーグなど端に等しい。そもそも人間となったシンカと、どう戦えばいいんだ。対人間用の剣で戦えばいいのか?


「さぁ、ラルティーグよ。光の巨人を生み出すのだ」


 ラルティーグは頭を掴まれ、シンカによって無理やり、力を行使させられようとしていた。しかし、ラルティーグも生命の石を持つ者、それを拒んだ。体が紫色の煙に捕食されようとも、エネルギーを吸われようとも、頑なに断り続ける。実際に言葉に出さずとも、その目と動作で伝わってくる。


「私の命令を拒むというのか。貴様は何を望んで拒むのだ?」


 首を振り続け、シンカの傀儡になることを拒否するラルティーグは、シンカの殴りによって気絶させられてしまった。ただ、気絶したラルティーグの力を奪って無理やり行使させることはできないらしく、シンカはラルティーグが起き上がるのを待っていた。


「私に歯向かうなど有り得ない……そういえば、1人足りないな。仲違いか、それも人間らしくて素晴らしい。しかし、マザーの儀式には7人の体が必要だ。私が後に呼んでやろう、その前に貴様らに話しておきたいことがあるからな。知りたいだろう、デストルドー計画の真の手段を。貴様らの理解を得ることで、儀式は成功し世界は破滅する。これは私のためでもなく、時間稼ぎのためでもない、貴様らのためだ」


 シンカ、魔王として長年この星を裏から支配してきた奴は、今になって俺たちに理解を求めようとしてきた。儀式を成功させたいんだろう、過去にマイト・ラスターによってデストルドー計画を防がれているから。ここでやっておきたいんだろう、マイト・ラスターが勘づく前に。


「デストルドー計画の最終段階では、2つの儀式を行う必要がある。片方はユーアローンの儀式、これで星のエネルギーを外に放出した。次にマザーの儀式、母なる光の巨人にエネルギーを詰め込む。巨人を生み出すことができるのは、ラルティーグ、ただ1人。私はラルティーグと石の覚醒を待つのみ。貴様らも私を倒したいだろうが、無駄だ。私は観察者、この世の理を全て見てきた。私が敗れる理など存在しなかった」


 そもそも、シンカに体の動きを止められているから、動かしたくても動かせない。


 というか、ラルティーグは光の巨人を生み出すことを拒み、シンカに殴られて気絶した。でも巨人を生み出すことができるのは、ラルティーグだけ。ならシンカはここからどうやって、巨人を生み出すつもりなんだ。彼は芯のある人間だ、もう魔王のことなんて聞かないだろう。


「……洗脳とは程遠いが、やむを得ない。生命の石で生命体の行動を全て書き換えることが可能。本人の意思で生み出したかったが、仕方のないこと。ラルティーグ、貴様が何を拒もうとも、貴様の能力は有難く使わせて頂く」


 生命の石に洗脳能力もあったのか。いや、思い返してみればおかしいことばかり、あると辻褄が合う。シンカはラルティーグの頭を掴み、紫の石を彼の体から引っ張り出した。亜空間ポータルも生まれている、やっぱりこれが生命の石なのか。ラルティーグの体の中に埋め込まれていた石が、完全補完され、シンカの手元に戻ってきた。


 石は完全補完されたというのに、俺たちの意識と体はバラバラなまま。石が俺たちの心と体の境を作ったんじゃないのか。俺はシンカにそう聞かされていたぞ、何で俺たちは? ジャッカルもハルもフィールドもマサカリも近くにいる、祭壇にいるラルティーグもここから見える。


「……どうやら、サーベルトとかいう奴が遠くにいるからか、意識の統合が困難なようだな。私の持つエネルギーで空間を破壊することが可能かは分からないが、計画のためだ。やむを得ないこともやると告げた、私自身の体に」


 そう言って、奴は「レミノウ」と唱えた。空間を破壊し、対象物を近くに連れてくる呪文だ。それでサーベルトを呼んだかに思えたが……シンカの持つエネルギーが少なかったのか、空間にヒビが入るだけでサーベルトの姿は見えなかった。


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