第85話 アルビノ巨人
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「ウオオオオオオオオオオ!!」
海上から突如現れた、真っ白な体をした巨人は、ワンパール号を軽く持ち上げ、それをランタンのいる街に向かって投げた。火薬のパンパンに詰まった船は衝撃で着火、とてつもない爆発を引き起こした。ドラゴンの炎のせいで焼け落ちていた港だったが、巨人のせいでもっと残酷になった。
兵士らは爆発に巻き込まれて死亡、ランタンもワンパール号の瓦礫に押し潰されて死亡。ビルディングの街並みは炎と瓦礫のみとなっていて、とてもじゃないけど人が住めるような場所ではなくなっていた。焼け散る瓦礫が降り注ぐ、俺たちはそれをただ眺めていることしかできなかった。
「グオオオオオオオオオオオオ!!」
続いて、また別のアルビノ巨人が、海上から這い上がってきた。奴はダイヤマト号に付いていた帆と柱をもぎ取り、槍のようにしてドラゴンと戦っていた。炎を吐きながら飛び回るドラゴン相手に、アルビノ巨人は槍を横暴に振り回し、辺りを巻き込みながらも戦闘を繰り広げている。
「見ろ、ドラゴンが!」
ドラゴンの心臓部分には、アルビノ巨人が振り回した槍が深く刺さっていた。やがて、大量の血を吐いて、ドラゴンは絶命した。ドラゴンの血を浴びた真っ白な巨人は、勇ましくその場に立っている。
巨大なダイヤマト号を遥かに越える大きさのアルビノ巨人、もちろん自然に生まれたモンスターではないことくらい分かっている。ラルティーグが生み出したんだろう、前にも見たことがあるし。その時は失敗したゴブリンだったが。
「これに乗るんだ」
荷車を引いて走ってきたのは、ラルティーグ。森の中に隠れていると思っていたのだが、俺たちが思った以上に苦戦しているのを見て助けてくれたんだろう。ただ、それにしては人を巻き込み過ぎた。ノエイン港は完全に壊滅、ビルディングの大半が焼け落ちた。瓦礫の雨が止まらない、これじゃ一般人にも被害が出る。
槍を持って勇ましく立っているアルビノ巨人は、ダイヤマト号の中にあったボートを引っ張り出し、それを思いっきり俺たちのいる方へ投げてきた。これも全部、ラルティーグが自分の意思で操作しているもの。
「……いいタイミングだ、ダイヤマト号じゃなくても現地に向かえる」
俺たち6人は、小さなボートに乗り込んだ。当初の計画とは違うが、これで向かうのも悪くない。俺たちの持つポテンシャルと能力を駆使し、島へ向かう、たったそれだけのこと。そういえば、進歩もあった。ラルティーグが普通に会話をしている、この戦いで失った物は……数多く存在するが、得た物も多い。
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島まで数千キロ離れていると聞いていたが、能力もあってかボートは超高速で海上を駆け抜けている。ジャッカルの持つワイヤーを駆使し、物理の法則を何個か組み合わせつつも、能力を使ってオールを漕ぐことで、全てのエネルギーを無駄なくボートに送ることができる。理屈はよく分からないが、使えるのなら使っておきたい……そういう判断だ。
「雲行きが怪しい、天気ではなく、エネルギーの変動が原因と見られる。状況は思ったよりも芳しくない、生命の石のエネルギーと星のエネルギーが組み合わさって放出されている。世界の破壊も時間の問題だ」
過去に教師と学者を生業としていて、世界やエネルギーに詳しいフィールドは、感覚を頼りに状況を理解しようとしている。しかし、起こっていることが壮大で、なおかつ初めての事象だからか、完全な攻略方法を探すことはできなかった。研究職にしか分からない苦悩だろう。
でも、エネルギーの変動はこの身でも感じることかできた。俺の体にも生命の石が少しだけ入っているから分かるんだろうけど、体の中に眠るエネルギーが疼いている。心から外に出ようとしている感触も。
小さなボートはちょうど6人が乗れるほどの大きさで、エンジンも付いていないから人力でどうにかするしかない。木製だから燃える可能性もあるし、何より今でもミシミシ……という音が聞こえる。もしかして6人乗り用のボートではなかったか、席は6つあるのに?
辺りは大海原、見渡す限り海しか見えない。
ツバメは慌てふためくように周りをグルグルと飛んでいる。やっぱりツバメも異変に気づいているのか、この島の星のエネルギーの変動に。このままでは島近辺の生態も崩れることとなる、早めに行かないと。ツバメの呼吸音も不思議と聞こえるからな。
と、その時。魔王の声が聞こえた。
「レミノウ」
魔王がそう言った瞬間、何故か俺たちは島に来ていた。噴火している火山の麓には魔王が、悠々と勇ましく誇り高く立っている。火山から溢れ出しているのは溶岩でもなくエネルギー、星のエネルギーが放出されている最中というのか。
つまり、ここはグルガルタ島。デストルドー計画とインフィニティ作戦を遂行する場所でもあり、星のエネルギーを直接取り出せる未知の領域でもある。それにしても……何で俺たちはもう島に到着しているんだ。さっきまでボートで島に向かっていたというのに。
辺りを見渡すと、俺も含め6人全員がこの島に来ていた。火山だけで植物も何も生えていない無機物のグルガルタ島に、ラルティーグと似たような姿をした6人の姿。全員色違いの仮面とローブを身に着けているから、お互いに誰が誰なのかは分かるが……何でここに?
「レミノウ、これは空間を破壊する呪文だ。エネルギーを我が身に宿すことにより、呪文までもが使えるようになったのだ。それで私は、貴様らの道中に存在する空間を破壊し、貴様らを直接ここに呼び寄せたまでだ」
魔王は白い儀式服を着用し、世界滅亡の儀式を始めていた。この世に呪文が存在していて、生命の石と星のエネルギーから使えるなんて、魔王にはそんな能力もあったのかよ、想定外だ。どうやって倒せばいいんだ、呪文なんかいう奇妙な言葉を使う奴に。もはや物理攻撃なんて効くのか?
「私は魔王ではない、シンカと呼べ」
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