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第84話 ダイヤマト号に向かえ

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 ワンパール号とナイスパール号の爆発を防ぐために、俺たちは船に向かった。あと3分で大量の兵士を全員倒すなんて無理だ、いくら最強の感覚を持っていたとしても、殺さないように制限しながら力を使うなんて難しいところだ。ジャッカルもそれで苦戦している。


 空間把握能力の優れているハルは、ジャッカルの持つワイヤーを借りて、一網打尽に飛び回っている。どこかの障害物にぶつかるなんてこともなく、屋根を飛び回りながら、剣を構える兵士の顔に拳を入れていく。運動神経はそこまで良くないが、元から持つモンスターの代謝でカバーしている。


 視力の優れているマサカリは、奇妙な動きで弾を避けながら、装填するタイミングを狙って攻撃を繰り返している。どうやら集中して一点を見つめると、動きが止まって見えるようで、それで高速で動く弾すらも避けられるみたい。上体を反らしバランスよく立つ様は、まるで鶴のよう。


「あと2分か、下手に近づけば起爆を早めるかもしれない」と、フィールドは小声で言う。


 聴覚の優れているフィールドは、周りで聴こえる些細な音を全て拾い上げ、それらを俺たちに伝えてくれる。例えば「南の方向で弾を装填する音が聞こえた」とか「東から〜〜という会話が聞こえた」とか。


 ジャッカルは優れた記憶力を、俺は優れた嗅覚を持っているが……さっきから何かがおかしい。言語化できる違和感ではなく、言語化できない方の違和感。匂いというものは多種多様で、例えようにも「〜〜に近い臭い」とか「腐った臭い」としか言えないことがある。視覚や聴力のようにハッキリと「〜〜が見えた!」とか「〜〜が聞こえた!」なんて言えない。


「西地区から更に兵士が押し寄せてくる! ダイヤマト号に向かえ!」


 そうやって叫びながら切り込んで行くジャッカルの後に続いて、俺たちも群がる兵士を倒していく。ワイヤーを巧みに使って兵士の首を絞めたり、鉄砲を奪って足に向かって撃ったり。足を撃たれた兵士は気絶するだけで死にやしない、ちょうどいい塩梅だ。


 3つの船が停まっている港の前までやってきた、その瞬間。とあるモンスターが、突然、目の前に出現した。




「まずい、ドラゴンだ!」




 炎を吐きながら赤い翼で飛び回る、ドラゴンと呼ばれるモンスターは、そこら中を燃やしつつも俺たちのことを狙ってきた。何だコイツ、見たこともない。伝説上の生き物にドラゴンっていうのは居ると聞いていたが、まさか実在していたとは。


 他にも空を舞いながら爆発物を投げつけるランタンや、電気の力を操ることのできる珍しいモンスターのエレクトが、港にいる俺たちめがけて電気や爆発物を浴びせようと狙ってきた。何なんだよコイツら、昔聞いたことはあるけど、実在していたなんて聞いてない。


「おそらく魔王が召喚したものだろう、厄介だな」


「エルド、攻略法は知っているか? 一応、エボリュードだったろ」


 ビルディングの狭い路地を駆け抜けながら、ジャッカルやフィールドに討伐方法を聞かれたが……何も知らない。緑色の体で空を飛ぶランタンや、黄色と青に光るエレクトは、珍しいからたまたま覚えていただけで、普通に考えても出会ったことなんてない。教科書でもササッと触れて次に行くレベルだぞ。


 しかも白い光と共に現れたドラゴン、普通に登場しているだけじゃないから、魔王に召喚された存在なんだろう。それは確実だが、尚更倒し方なんて分からない。その上魔王が良いタイミングで作り出したモンスターだ、もしかして俺たちの行動が読まれているのか?


「僕は知っている、封印される前にコイツが暴れているのをどこかで見た。炎の溜まっている腹を狙えば倒せるだろうけど……いけるか?」


 ジャッカルとフィールドはワイヤーを補填しながらも、倒れた兵士から鉄砲を回収している。他の兵士はドラゴンやランタンなんかお構い無しに、俺たちのことだけを狙ってきている。ビルディングがドラゴンのせいで炎に包まれていっているというのに。余程俺たちのことが憎いか。


「まずい、爆発する」


 フィールドが小声でそう呟いた瞬間、ナイスパール号の方から火薬に着火した匂いがした。そこから間髪入れずに、船は大爆発を起こした。海の上だろうとも火は止まらず、轟々しく燃え盛る炎に包まれた船は、もう跡形もなくなっていた。それなのに、何故かダイヤマト号は無事であった。隣のワンパール号には火が移っているというのに。


「ダイヤマト号は頑丈だ、今行ったら間に合うかもしれない。ダイヤマトに乗れなくても、中に小型ボートがあるはず。というか、ある」


 空間把握能力の優れているハルは、数キロ離れた場所から、煙に包まれていて視認できない船の構造を理解していた。そもそも、巨大な船に乗る必要もない。とにかく、数千キロの航海を共にできる船が必要なだけで、特殊能力を持つ俺たちなら、小型ボートでもだいぶ無理を強いる形にはなるが、いけるかもしれない。


 でも、どっちにしろ、魔王に召喚されたモンスターと兵士を倒す必要がある。体力を若干消耗し始めている俺たちに、更なる試練として特殊なモンスターが与えられた。攻略法も分からないし、攻撃を避ける方法も未だ発見されていない。魔王はここまでして俺たちを島に近づけたくないのか、なら、何で俺たちを殺さない?


 俺たちを儀式の時に殺しておけば、今ここまでする必要はない。どうしても俺たちが今後の儀式に必要なのなら、俺たちを捕まえて牢屋にでも入れておけばいい、その時は能力で脱するが。俺たちを野放しにして、グルガルタ島まで「来れるものなら来てみろ」というテンションで迎え撃つ魔王の考えが、あまり理解できない。


 そう考えていた時、海の中から轟音が鳴り響いた。


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