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第81話 戦わない選択肢

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「魔王と戦わないつもりか、どうするんだ?」と、ジャッカルが間髪入れずに尋ねた。


 魔王はただでさえ恐ろしい存在で、過去に人間を何度も滅ぼしたことのある生命体。何度も何度も人間を全滅させても、また新たにどこからか湧き出てくる。それは生命体の進化の法則に成り立っていて、何もおかしいことはない。ただ、それに憤慨した魔王は、人間共を完全に滅亡させるために、この星ごと破壊しようと企んでいる。


 だから、戦わないで放っておくと……この星ごと滅ぶ。人間が、とか言ってられない。星全体の問題なんだ。俺たちが死ぬだけならまだしも、世界全体の生命体まで死ぬんだ。それらの出来事を知っているのは俺たちだけ、ここで止めないで、誰が止めるんだ。


「……俺は戦いたくない」


 サーベルトは続けて言う。


「俺は、ただ貧しい人々に金を与えるだけの人間だ。義賊、デーヴィーネッド、何でもいい。俺は世界を救うのにふさわしくない……モンスターか、俺はモンスターだったな、人間じゃない。俺は今まで甘い生活を送ってきていた、相手は人間でそれも、俺のことを殺すことなく平和に倒そうとしてくる。彼らは俺を捕まえるのが目的だからな、なのに急に封印されて、起きたと思ったら、世界滅亡の危機か。そんなもの、俺は知らない。戦いたいのなら好きにしろ、俺は平和を目指す」


 なるほど、サーベルトは怯えているのか、魔王という脅威に。救われなかった人々に金を盗み分け与え、自身もその盗賊行為を楽しむという生活を送ってきていた。自身を捕まえようとする人達もまた、デーヴィーネッドに感謝していた部分もあるんだろう、これは俺の推測だが。


 それで俺やジャッカルは命に直面した仕事をしていた。俺は討伐者としてモンスターを討伐し続け、ジャッカルは暗殺者として人の命を奪ってきた。どちらかと言えば、サーベルトは人を救う仕事をしてきている。でもその一方で、直接人を救っている訳ではなく、金を奪って分け与えているだけ。だから、彼はこんなにも怯えて---


「黙れ、俺は怯えてなんかいない!」


 ……心の中でそう思っているだけなのに、サーベルトには聞こえているのか、突然、彼は叫び出した。冷や汗が止まらない、これは彼も俺も同じ。誰だって魔王という脅威に怯えている、ここにいる俺はもちろんのこと、ハルもマサカリもラルティーグも。誰だって、世界滅亡という恐怖に、簡単に立ち向かえる訳がない。


「……取り乱した。続けてくれ」


 サーベルトは急に素直になり、話を続けるよう促した。妙な切り替えの速さだったが、彼の本心が聞けたという意味では良かったことだろう。あのまま島に行っていたら、思惑の違いからごちゃごちゃになっていたところだった。ハルはペンを取り、地図に新たに書き加えた。


 ”ノエイン港で戦闘、被害は最小限に。クロノス海を通り、グルガルタ島へ”


「出発は明日の朝、私らに睡眠は不必要だとは思うが、念の為に休んでおこう。シンカ戦闘時に体力を非常に消耗する恐れもあるからな。そこから先に話した通り、港からグルガルタ島へ向かう。役割分担も決めておこう。魔王から石を切り離す班、石を覚醒させる班、魔王の周りに群がっているであろうモンスターを蹴散らす班、リーダーとして1人欲しい、7人で向かう前提だが……行くかどうかは個人に任せる」


 ラルティーグはこの場にはいない、でも優れた感覚で今どうしているかは分かる。庭で、立って考えているんだろう。うずくまるのはもう止めた、ここからはどうやって立ち向かうか考えるパートなんだろう、彼の中では。地下室に入る勇気は無い、でもそれでいい。それも個人に任せよう。


「よし、事前にハルと私で決めておいた。石を切り離すのは、私とフィールド、いずれも古代の知識があるからな。石を覚醒させるのは、ラルティーグとジャッカル、いずれも覚悟を持っている。モンスターを蹴散らす班は、サーベルトとエルド、いずれも身軽だ。そしてリーダーにはハル、君は優れた才能を持っている、リーダーシップを発揮して、私らを勝利へと導いてほしい」


 役割分担も決まったところで、インフィニティ作戦のリーダーとなったハルが、とある疑問を投げかけた。


「さっきから考えていたんだけど、僕たちが同一の体として存在していた時、僕たちは思考を覗くことができたよね。マルチ・パーソンズ・ディメンションでの会話も行動も、外にいるのに分かった。今は別個体になっているから思考なんて覗けないはずだけど……分からない? 前から、誰かの声がうっすらと聞こえるんだ、幻聴にしてはリアルだ」


 確かに言われてみたらそうだ、俺は幻聴を聞いた側ではないが、他の人たちは皆俺の考えていることが分かっているようにも見える。サーベルトだって俺が考えていたことを当てていたし、前にハルも俺の思考を読んでいた。もしかしたら、体は別々でも、思考は何となく読めるのかも。


「……今、エルドはこう思ったよね? 体は別々でも思考は読めるのかも、って。僕もそう思っていたし……読めてる!」


 ハルの考えは当たっていた、俺の思考は彼に読まれていた。それもいい意味で。俺の考えていることは、彼に伝わっている。何も言わなくとも彼の耳に入っていることになる。それにサーベルトも。俺が考えていたこともサーベルトの耳に入っていた。


 もしかしたら、ここにいる全員の考えが読めるのかも。元は同一個体の存在だ、バラバラになったくらいで結束は解けないんだ。ラルティーグが死なない限り俺たちは生き続けるし、その結束も解けないまま。


 みんなで作戦を話し終わった後、俺たちは軽く休みを取った。といっても4時間くらい寝るだけ、睡眠は良いものだ、スッキリ目覚めればその日全体がハッピーになる。まぁ、俺たちモンスターに睡眠は必要ないが、人間の名残もあるからな。少しくらいは休みたいし。


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