第80話 インフィニティ作戦
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結局、ラルティーグを荷車に乗せたまま帰ってきた。特にこれといった対話はできなかったが、収穫がないかと聞かれると「そうでもない」と答えられる自信はある。
夜で辺りが暗かったため、仮面を外してゆったりとしていたが……流石はフィールド、元教師で学者をやっていた人だ。人への説明も、人の感情に乗るのも上手い。ラルティーグの精神状態がどうなっているかは分からないが……少しは楽になっているといいんだけどな。
それで、資材集めのために遠くへ行っていたジャッカルとサーベルトは、疲れ果てていた。どうやら、対モンスター用の装備を集めるために、バルパーとガーディアと、バルパーの南にある別の村を往復していたらしく、いくら能力が優れていたとしても、休憩する間もなく動き続けていれば、ヘトヘトになるみたい。
「魔王はモンスターを操る、だからモンスター用の装備を持っといた方がいいと思ってな。集めた手段は……聞くな、察しろ」
生命の石をほぼ完全に掌握している魔王は、計画を阻止しようと立ち向かってくる俺たちのことを、モンスターで潰そうと考えていると思われる。その証拠に、モンスターは生命の石で自由自在に作り出すことのできる存在だから。人を作ることなんてできない、それとはまた違う。
対モンスター用の装備として、7人分の剣と盾、またゴブリン程度のモンスターの攻撃なら防げるような、外見の貧弱な鎧が用意されていた。これで魔王を倒さないといけないのか……中々難しいじゃないか。かと言って、特注の武器を作らせる時間も無いしな。
力の石を持ったマイト・ラスターは、ゴブリンやスケルトンの武器を触ることで、それらを新たな武器へと変化させていた。俺たちにもそれができたらいいんだけどな。彼の居場所を探そうにも、魔王に生み出されたモンスターである俺たちは、彼のことを無意識に拒絶しているようで、彼の匂いを辿ることはできない。
「それで、ラルティーグはどこにいる?」
「彼は今、考え事をしている。庭の荷車のところにいるはず」
ラルティーグは、地下室の中には入ろうとしなかった。やっぱり、色々と思うことがあるんだろう。サーベルトとフィールドとマサカリの生活を根こそぎ奪って封印したことや、ルイさんの家族を殺したこととか。だからこそ、目を合わせないように、拒絶しているんだと予想する。
「まぁいい、私らがすべきなのは、魔王を倒して世界滅亡を止めることのみ。それで、作戦を練っておいたぞ、優秀なハルと共にな」
マサカリは、色々と書き込まれた地図を取り出し、机の上にバサッ……と広げた。世界の様々な情報が書かれた地図、もちろんセントリーもストーズも、魔王が向かっているとされるグルガルタ島も載っている。そのグルガルタ島の部分には、ハルの字でこう書かれていた。
”高エネルギー反応アリ、デストルドー計画の最終地点と予想。同時に、インフィニティ作戦の決行地でもある”
……インフィニティ作戦って何なんだ。
「僕たちが考えたんだ、デストルドー計画を阻止するための作戦。生命の石を完全に補完した魔王から石を奪い取り、それらを完全に覚醒させて、魔王という生命体を根絶する作戦、詳細はまた後で言うよ」
インフィニティ作戦、軽くハルから聞かされたが、本当にそんなことができるのか。石を他者から奪うことなんて、全知全能の存在である魔王ならできるかもしれないけど、そもそも俺たちは何も知らない。何かを知っているラルティーグは、ずっと塞ぎ込んでいる。自身を魔王の脅威から防御しているようにも見える。
装備を一箇所に集め、剣と盾を磨きながら、作戦の準備段階に入った。みずぼらしい剣と盾だが、磨けばそれなりには使えそう。後は個人の力技でどうにかするしかないが。
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「インフィニティ作戦の概要はここに書いてある通り。マイト・ラスターと同じように、生命の石を完全覚醒させる。方法は不明だけど、擬似的な進化エネルギーを用いることができれば、それを石の進化へと転用して、新たな光を生み出せるかもしれない」
「幸い、グルガルタ島周辺に人は暮らしていない。よって作戦に伴った、危険な行動も可能だ。魔王……シンカが星のエネルギーを吸収して破滅させるのなら、私らも星のエネルギーを分けてもらい、石へと送る。シンカから石を奪い取った後なら、覚醒条件さえ満たしておれば、最高の結末に導くことも可能」
作戦を立てていたハルとマサカリは、たくさんの文字が書き込まれた地図を見ながら、作戦について説明していた。もちろん、ラルティーグはここにはいない。彼はまだ庭にいる、荷車からは降ろされたが、地下室に入る勇気は無かった様子。別に俺たちも受け入れるのに。そういう問題じゃないか。
「それで石を奪う方法だけど……まだ考えられない。未定だ、どうやって石を奪うかなんて分からない。これはラルティーグの知恵を借りたいところだけど、彼が起き上がらないことにはどうにも。マイトさんに会えたらいいけど、やっぱり力の石を持っているからか、僕たちの能力だけじゃ辿れない」
「島に行く方法はただひとつ。セントリーの南にあるポリスタットの東にある都市・ビルディング、そこに大きな港があるそうな。港で船を奪い、島に向かう。一般人との戦闘は避けられないが、世界滅亡を防ぐためだ、やむを得ん。幸いにも7人分の装備は用意されている。後は戦闘時に感覚で作戦を練ってみるしかない」
……やっぱりか。作戦とは言ったものの、詳細まで決まってないみたい。それはここから詰めることだけど、皆知らないことが多すぎる。どうやって魔王が石を完全補完させたのかとか、マイト・ラスターが力の石と時の石を覚醒させた理由と方法とか、俺も分からないし、皆分からない。
分かるのはラルティーグのみ、でも彼も記憶喪失になっていた期間があるから、全てを正確にまで覚えていないかもしれない。だから後はマサカリの言う通り、戦いながらも感覚で作戦を練って考えるしかないのかも。地下室でただ考えるのと、現地で魔王と対面した状態で考えるのは、また違うからな。
と、ここでサーベルトが口を開いた。
「どうしても魔王と戦わないといけないのか?」
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