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第78話 感覚の覚醒と超越

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 ルイさんは、都市・ガーディアの一角にある喫茶店で働いているみたい。それで彼女の家は、ガーディアの役所の人間の娘の家でもあるらしい。けれども事情を知った役所の人間が「娘が遠くに行ったから」と家を貸してくれているみたい。もちろん、事情というのはバーンズ村の一件。だから、地下室もあるし庭もある。


 食欲もないし睡眠したいとも思わない、そんな不思議な体になってまですることがある。それは、考え事。ここからどうすればいいのか、魔王が世界を滅亡するのにどれくらいかかるのか分からないけど、それまでここに居座っていいのか。今もどこかで儀式をやっているのか、それなら儀式の際に生じるエネルギーで場所が分かるはず。


 もちろん、モンスターでも生物でもない魔王に匂いなんて発生しない。だから、残り香で位置を特定するなんていう猟奇的で変態じみた行動は取れない。エネルギーの変動が感じられない今、魔王はまだ行動を起こしていないようにも思える。だとしたら、魔王は何をやっているんだ。準備か、何を?


「僕が昔聞いた話だ、この星のどこかに高エネルギーが眠る島がある。生命が誕生するキッカケにもなったエネルギーを、魔王は利用しようとしているに違いない。もちろん、ただの噂だから信ぴょう性は低い」


 教師で世界の地理に詳しいフィールドは、地下室の机の上に手書きの地図を置き、説明を始めた。未だに部屋の隅でうずくまっているラルティーグを除いた5人は、地図とフィールドを囲むようにして話を聞く。


「僕らは最強のモンスターで、感覚も優れている。使い方が合っているとは明確には断言できないが、エルドは嗅覚が発達し、僕は聴覚が発達した。喫茶店で働いている彼女の声も聞こえるんだ。今は塩を探しているみたい」


 やっぱり、モンスターと自覚してからか異常なまでに感覚が発達していた、それは皆同じみたい。ただ人によって異なるようで、フィールドは聴覚。それも数百メートル先の彼女の声が聞き取れるようになっていた。地下室だから制限されているだけで、地上に出たらもっと凄いのかも。


「それなら俺も心当たりがある。記憶力が異常に発達した気がする。全ての会話とそれに付随する情報が頭の中から離れない上、忘れたくても忘れられない。例えば……ルイが持っている服の数も記憶した、言えないが」と、ジャッカル。


「それなら私も、視力が良くなった気が。隣の都市・バルパーの西にある店の看板はさっき見えた。数キロ離れているはずなのにな」と、マサカリ。


「ボクもだ、強いて言うなら空間把握能力か。建物の構造がどうなっているか、立体的に頭で計算できる。役に立つかは置いておいても、計算力が高くなったと思う」と、ハル。


「俺は……分かんねぇな。ラルティーグはどうなんだ?」と、サーベルト。もちろん、ラルティーグはうずくまったまま、何も返さない。聞こえているはずなのに。


 とりあえず、ほぼ全員の感覚が進化していることが判明した。これは大きな進歩だ、デストルドー計画を止める最大の武器になると思われる。魔王は人間を滅亡させるだけでなく、星全体を破壊しようとしている。普通に破壊するのではなく、エネルギーを使った儀式を行うことで、内部から破滅させることができる……というのがフィールドの予想。


「星に眠るエネルギーと、生命の石に眠るエネルギーを呼応させれば、エネルギーを使って動く全ての物体が"反万有超引力"により消滅する。人間も植物も、車もモンスターも。もちろん、エネルギーで動く星も何もかも。生命体かどうかなんて魔王に関係ない、星さえ破壊できればそれでいいはずだ。しかし、それには生命の石の完全覚醒が求められる。だから今は石の覚醒を待っているんだろう。つまり、デストルドー計画に力の石も時の石も必要ないってことだ」


 魔王はマイト・ラスターを探しに行っているのかと思ったけど、そうでも無いみたいだ。石を覚醒させたことがあるのは、マイト・ラスターのみ。同時に魔王を倒したのもマイト・ラスターのみ。俺たちも彼に会えれば楽なんだけどな、生憎彼の居場所は掴めない。残り香とかそういうのじゃなくて、そもそも感覚が彼を拒否している。


「僕は真実に近づいていたから、魔王を介したラルティーグに封印された。だからここから話すことも信ぴょう性は低いけど、核心には迫っているはず。星の中心に眠るエネルギーが集う島の名前は……"グルガルタ島"。セントリーから離れた場所に位置するが、ここからでも行けなくもない。生命の石を使ってワープするという選択肢もあるが、ラルティーグの意志がないと」


 教師で学者でもあるフィールドは、色々なことを知っている。もちろん、グルガルタ島なんて聞いたことないけれど、セントリーの南の方にいくつか孤島があるというのは知っている。セントリー周辺の地理は学校で習うから……全部、ラルティーグに作られた嘘の記憶なんだけども。


「デストルドー計画は、石の完全補完後に、地下に眠るエネルギーを地上に持っていく準備が必要だ。それもまだ感じられないということは、今はエネルギーを地上に持っていく準備の準備段階にあると思う。だから僕らがすべきなのは、世界滅亡を止める作戦を考えることと、彼と話すこと」


 ラルティーグの中には微量ながらも、生命の石が埋め込まれてある。それは魔王が生命の石を抜く時に、あえて残しておいたもの。理由は簡単、俺たちの体が分裂していた方が好都合だから。喧嘩し合うとか、仲が悪くなるとかそう思っていたんだろう。でも違ったな、魔王。俺たちは想定以上に団結しているぞ、ラルティーグを除けば。


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