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第77話 猟奇的な再会

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 ルイさんを探し出す方法は、非常に原始的で猟奇的なものだった。


 まず、顔を特定されないようにするために仮面を被ることにした。仮面を着けて、必要のない情報を遮断することで、より目の前のことに集中できるという利点もある。それとフード付きのローブを7人分、色々なところから用意した。仮面の種類も変えた、誰が誰なのか判別できるように。


 ラルティーグは何もしなかった。ワイヤーを解除して地面に落ちても、受け身を取らずに落ちるのみ。怪我を治そうともしない、モンスターという自覚があるはずなのに。だからサーベルトが無理やりローブと仮面を着けた。泣いている仮面だった、彼の心情を表しているかは置いておいて。


 それで探し出す方法というのは……残り香を使ったもの。滅亡して誰も暮らしていないバーンズ村の跡地には、ルイさんの暮らしていた跡が残っている。普通の人間なら感知できない匂いだが、感覚の研ぎ澄まされたモンスターなら、この匂いも感じ取れる。


 香りというのは特別で、視覚とはまた違った記憶方法になる。それが情報として正しいかは別だが。ここには何回が来ているようで、またバーンズ村の跡地を訪れる物好きなんてそうそう居ないから、彼女の香りを特定するのにそう時間はかからなかった。


 それで後は、彼女の歩いた道を探すのみ。異常なまでに発達した嗅覚は、もはや人間の域を超えていた。ルイさんがここに来たのは、約3ヶ月前のこと、そのまま彼女はバルパーに寄ってから家に帰った。彼女の家はバルパーじゃなくて、ガーディアの近くの村。だからか、村に少し潮の匂いが混ざっていた。


 それに喫茶店の独特な香りもする。1人で喫茶店に寄ったのなら話は変わってるが、数年前にここに訪れた時の匂いにも付いているから、喫茶店に日常的に行っているか、もしくは喫茶店で働いているかのどちらか。多分、後者だろうな。


「……何だろう、気味が悪いね」とハルは言うが、こっちだって好きでやってるんじゃない。ただ猟奇的な方法しか思いつかなかったんだ。じゃないとやらないだろ、誰が人の残り香で位置を特定するなんてことするんだ。多少の倫理観を捨てた結果がコレだ、文句はジャッカルに言え。


 モンスターだと自覚してから、異常に嗅覚が良くなった。これはたまたまなのか、それとも他の能力も優れているのかは分からないけど、とにかく彼女の現在の居場所を特定した。そういえばジャッカルは異常に記憶力が優れていると前から言っていたけど、人によって役割が違うのか?


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「……何でここに?」


「すみません、色々とあって。お願いなんですけど、数日間だけ泊めてください。体を休める場所が、彼には必要なんです」


「……その前に色々と言うことがあるんじゃないの?」


「すみません。でも早くしないと、彼が死にます」


 流石にこの言葉を聞いたルイさんは、俺たちを家の中に招き入れた。ラルティーグは今でもジャッカルに背負われているから、大怪我でも負っているように見えたんだろう。実際には肉体的じゃなく精神的に大ダメージを負っているが。


 困惑しているルイさんを外に連れていき、事情を全て説明することにした。5年間連絡も何も取れなかった理由、そもそもエルド・ミラーが存在しなかったこと。ラルティーグという男の正体から、魔王という奴の存在まで。ガーゴイル計画やらデストルドー計画やら、世界滅亡に繋がる話を。今はラルティーグが何も話せない状態になっていて、頼れる人がルイさん以外にいない……ってところまで伝えた。


 彼女は終始、困った顔をしていた。それもそうだ、ルイさんからすれば俺は「幼少期に炎の巨人に家族を殺されて多重人格になった青年」という認識だったはずだ。それなのに連絡もなく、久しぶりに会ったと思ったら「実は存在しない架空の人物で、魔王に生み出されたモンスターが病んで生み出されただけに過ぎなかった」と伝えられたら、そりゃ困惑する。


 俺だっけ数回に分けて真実を聞かされてきた。まずはエボリュードの追放の回想で、ラルティーグ本人に「お前は架空の人物だ」と伝えられ、生命の石で過去を見せられながら「魔王と契約した」と言われ、5年後に魔王本人から「お前はモンスターだ」と告げられた。その度に驚いてきたし、何なら俺も今のラルティーグと同じ状態になっていた。


「---で、ルイさんの家に来ました。他に頼れる場所は無く、世界滅亡までの時間も限られているので。まずはラルティーグ本人の治療からです」


「……何で家が分かったの?」


「感覚」


 何も嘘はついてない、嗅覚で位置を特定した。5年ぶりに会った彼女は髪を結んでいて、見た目は少しだけ変わっていた。それもそのはず、喫茶店で働いているから衛生面には気をつけているんだろう。目立つ金髪も短くなっている、どっちでも好み……ダメだ、今は何を考えても気持ち悪く見える。残り香のことなんて絶対彼女には言えない。


「……私に新しい家族が出来ているとか、そういうことは考えなかった?」


「感覚で答えは見えていました。協力できないならできないで大丈夫です、ただラルティーグを治さないと……彼を放っておくと世界が滅亡します」


 脅し文句みたいで嫌だが、それも事実なんだ。ラルティーグが鍵になっている、彼が目的を持てば世界が救われる。逆にこのまま部屋の隅でうずくまったままだと、心の壁が形成されたままで、他人との関わりを求めずに、世界ごと消えてしまう。それはラルティーグだけの問題じゃない、セントリーを越えた世界中の問題になってくる。


「別にいいけど、私にも生活がある。だから前みたいに深くは頼らないで、7人で狭いだろうけど地下室を使って。ラルティーグさんのことは……私もどうにかしてみる。けれども深くは関われない」


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