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第74話 裏切り者

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 地面にうずくまっているラルティーグに向かって、俺たち3人で声をかけることにした。あの時、体を奪い取るために……ラルティーグを追い込むような真似をしてしまったこと。病んでいたラルティーグを追い詰めた挙句、最悪な行動をしてしまったこと。それら全てを、謝罪した。


「ボクは医者だ、君が病んでいることを知っているのに、君に寄り添う言葉をかけることができなかった。本当に申し訳ない」


「俺を生み出してくれたのに、生みの親に酷い言葉をかけてしまった。本当にごめんなさい」


「……すまなかった」


 本当の気持ちが届いているかは置いといても、ラルティーグは地面でうずくまったまま、動かなかった。これでは埒が明かない、でも俺たちが無理やりラルティーグを動かすのもまた違う。だけど動くのを待っている時間はない、ここは何をするべきなんだ。


 こうやって行き詰まった時には、いつも3人が声をかけてくれた。最初はネオル、バルパーの時とかバーンズ村の時とか、細かいところまで教えてくれた。次にジャッカル、彼の発想は奇抜なものが多かったけど、暗殺者ならではの異常な考えが役に立ったこともある。次にハル、闇医者として落ち着いた考えができていて、全員役に立った。


 でも、今は体が分裂しているせいで、誰が何を考えているのかも分からない。ジャッカルとハルが近くにいるのは分かる、それは目つきで何となく判別できる。さっき喋っていたのがフィールドで、少し前に話したのがサーベルト。逆に話したこともないのがマサカリ、声も同じだから本当に注意しないと見分けられない。


 とにかく、もうネオルはいない。ジャッカルもハルも別の人間として存在している。前みたいに頭の中で話し合うこともできない。これからは、きちんと言葉にして発していかないと。自分だけで考えて理解して次に繋げる行為は終わりだ、皆で考えていかないと。


「……ここはシティストの教会近くの森。魔王は世界滅亡を目論んでいる。となると、魔王はどこに向かったんだ?」


 デストルドー計画と呼ばれる、世界滅亡の計画を魔王は実行している。それでさっきは石の完全補完を狙って儀式を始めていた。だとすると、次もまたどこかで儀式をやっているに違いない。そう簡単に、ワンステップで世界滅亡に辿り着けるとは思えない。


「そもそも3つの石を集めないと、世界滅亡に辿り着けないんだろ。だったらマイト・ラスターを狙いに行ったんじゃないのか。2つの石を覚醒させた男なんだろ?」


 そう口を開いたのはサーベルト。サーベルトの言う通り、魔王とラルティーグは「3つの石で計画が遂行される」と言っていた。そのうち2つの石をマイト・ラスターという男が持っているけれど、魔王はそのマイト・ラスターに敗れた。それなのに単身で挑みに行くとは……ちょっと考えられないな。


「生命の石を完全補完したと言っていたよね。それなら覚醒とまではいかなくても、それなりの力を持っているはず。魔王自身の力も計り知れないだろうし」


 次に口を開いたのはハル。ハルの言っていることも分かる、魔王は生命の石を完全補完するための儀式をさっき行っていた。俺たちを分裂させたままだと仲違いが起こる……とでも予想したのか、そのままにしてどこかへ消えた。


 実際には話し合っているだけで、特に連携の分裂は起きていない。体は分裂しているせいで、考えが伝わらないというのはあるけど、それは普通の人間と同じだ。


「魔王の契約とかは嘘で、魔王に作られたモンスターってのは本当だろう。その証拠に、魔王に裏切られた今でも能力は使える。普通なら契約破棄になって能力も失うはずなのに---あと、62秒後に人が来るぞ。それも剣を持っている」と、ジャッカルが教えてくれた。


 研ぎ澄まさた感覚は今でも使える。というか、そもそもそういう体で生まれてきたんだ、魔王に裏切られたとしても、魔王を倒したとしても、能力の有無に変わりはない。何をしても俺たちは一生、モンスターのままなんだ。もしかしたら生命の石で変えられるかもしれないが……今考えている暇はない。


「人数は4人、討伐パーティーの可能性もあるけど、同じ顔をした人間が7人もいるとなると不審がられる。ここは逃げよう、幸い運動能力も研ぎ澄まされているだろう」


 フィールドの言う通りだ、同じところに傷を負った青年が6人、何故かうずくまっている青年が1人、それら全員同じ顔をしている。5年前だけどポリスタットで暴れたこともある、ラルティーグ本人が犯した罪だけど。とにかく、ここから逃げないと何も始まらない。


 冒険用のアーマーを着ているから動きやすい服装ではある。それにここ周辺は木々に囲まれていて、飛び移ったり飛び越えたりが非常にやりやすい舞台ではある。人に見つからないように、またモンスターに捕まらないようにしながら、移動していけばいいだけ。目的地は移動しながら話し合うこととしよう。


 ただ、ラルティーグだけは動こうとしなかった。ラルティーグは未だにうずくまったまま、何も発さないし動かない。もう少しで剣を持った人が来るというのに、俺たちを拒絶しているのか、または孤独でありたいのかは分からないが、ずっと伏せている。


 説得しようにも時間が足りなさ過ぎる。あと12秒で人が来る。来ても気絶させればいいか……なんて悪魔みたいな思考になってしまったが、それよりも逃げた方がいいな。顔を見られるのだけはまずい、それはいつになっても同じだ。ポリスタットで指名手配されているのなら尚更。


「……チッ、俺が運ぶ。お前らは先に行け!」


 ジャッカルは持っていたワイヤーを無理やりラルティーグの体に括りつけ、彼を背負うような形にして移動し始めた。どうやっても機動力は落ちるが、承知の上なんだろう。グズグズしてたって何も始まらないというのに……今の彼には通用しないか。過去の俺にも通用しなかったし。


「……あれ、なんか声がしたような」

「気のせいだろ」

「ここはゴブリンの狩りスポットなんだ、急ぐぞ」


 どうやら、バレていない様子。


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