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第72話 偽りの存在

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「やがて、数千年が経った頃。突然、貴様に新たな感情が生まれた。それは嫌悪感、同族に近い存在の人間を殺害した罰として、そういった複雑な感情が出来上がっていったのだった。同時期に、私は貴様の体に生命の石を埋め込んだ。私の封印が永遠に解かれなくとも、貴様の体を操って世界を滅ぼすためにと。しかし、貴様の体は徐々に穢れていった」


 場面が変わって映し出されたのは、耳を押えて発狂しているラルティーグの姿。背景として、炎に巻かれた村が映っている。ラルティーグの近くには血で真っ赤に染まったナイフが、もしかしてラルティーグが後ろの村を滅ぼしたのか。人間社会に溶け込みつつ、モンスターを制御するのが役目だったはずなのに。


「私の指示なくして、勝手に村を滅ぼしたのだ。滅んだところで大差ないが、私の指示なく殺害したのは初めてだった。体の異変には気づいていた、だが貴様の体の異変をあえて放っておいた。人間に最も近いモンスターの、心の病など見物だ」


 魔王は症状に気づいていたのにも関わらず「見物だから」という理由で放っておいた。こうやって見ていると、何だかラルティーグも可哀想な人間に見えてくる。実際はモンスターだけど、真実を知らないまま魔王の部下として働いていた訳だ、少しくらい思うところがあるだろう。


「貴様の体はストレスと、生命の石の力に耐えきれずに破壊されていった。記憶は失われ、多重人格も生まれた。そこで私はラルティーグという男に作り変えたのだ、姿はそのままで、感情もそのまま。加えた要素はただ一つ、偽りの記憶だ。貴様がなり損ない共に語っていた記憶もあるだろう。ストーズに拉致されて、戦争に連れていかれたこと。私と契約したこと……それらも全て嘘だ」


 ……ラルティーグも、俺と同じように偽りの記憶を埋め込まれていたのか。ストーズに誘拐されたとかも嘘、魔王と契約したとかも嘘。結局、無意識な暗殺者であるジャッカルと同じように、ラルティーグも魔王の道具に過ぎなかった。俺もハルも同様、ラルティーグが安らぎを得るためだけに生み出された存在。


「ラルティーグよ、世界滅亡の計画を手伝ってくれてありがとう。私はマイト・ラスターに討伐されたが、貴様の体に埋め込んでおいた生命の石により復活した。もはや貴様に用はない、貴様がここで死んでも死ななくとも計画に支障はない。だから自由に生きてくれ、どうせ貴様も死ぬ運命だ」


 そう言って、魔王は景色を元通りにした。またさっきいた、木々に囲まれた草原に戻ってきていたのだ。体も自由に動かせるし、魔王もラルティーグも近くにいる。それなのに、何故か俺たちは動けなかった。身体的じゃない、精神的にも気力が無かった。


 ラルティーグは未だに魔王の足元で咽び叫んでいる。精神的に大ダメージを負ったんだ、仕方ない。俺も「自分が偽りの存在」だと知った時はそうなりかけた。それ以上にラルティーグの行動を止めることで精一杯だったけど。でもそれは、同じ気持ちを味わったジャッカルやハルがいたから、立ち直ることができた。


 ぶっちゃけ、ラルティーグと同じ思いをしている生命体はここにはいない。数千年も生きていたのに、記憶を失ってはまた取り戻して、何度も何度も人間やモンスターを殺してきた。人間に最も近い生命体であるラルティーグは、人間を殺す度に嫌悪感と不快感を覚えていた、だからこそ……キツいよな。俺はここ数年で生まれた存在だから。


「これから"デストルドー計画"を実行する、まずは生命の石の完全補完からだ」


 シンカが手を広げた瞬間、俺たちの体は動かなくなった。シンカが左手を挙げると俺も左手を挙げ、右手を挙げると俺もジャッカルもハルも、皆が右手を挙げるような状態になっていた。さっきまで自由に動かせていたのに、またもや自由を奪われたのか。


「もはや世界滅亡に、力の石も時の石も必要ない。結局は星ごと破壊すればよい、必要なのは完全補完された生命の石のみ」


 シンカが改めて手を広げると、俺たちの体から青色に光るエネルギーが飛び出していった。半透明に光るエネルギーみたいなものは、全てシンカの体の中に集まっていく。空中に浮かばされた俺たちは、手を広げた状態で固定され、どんどんエネルギーを奪われていった。


「生命の石を覚醒させるには、完全なる石が必要だ。貴様らの個体を形成したまま石を奪うなど容易い。マイト・ラスター同様、石を覚醒させることもな」


 シンカは生命の石を回収し終えると、俺たちを解放せずに、空中に放置したまま話し始めた。まだ手を広げて固まった状態だ、それなのにシンカはそれを滑稽だと思っているのか、笑いながら語ろうとしている。


「---失敬、素晴らしい表情をしているな。ところで、何故私が計画を全て話しているか分かるか。普通なら貴様らに止められて終わるはずだが、貴様らに計画の全貌を話している。もちろん貴様らが無力であるのは知っているが、それだけじゃない」


 舐めた口調で、俺たちのことを馬鹿にしながらシンカは話を進めている。計画の全貌を話した理由、ラルティーグが俺たちにガーゴイル計画の内容を話した理由は「止めることなんてできないから」だった。魔王もラルティーグと同じ思考を持っているのか。それなら短絡的だな。




「簡単だ、私が観察者だからだ。私はこの世を観察する者として、神に等しい存在となっている。私の計画を止めることなどできない。デストルドー計画を止めようとするならば、その時は全力を尽くして破滅させてやろう。手加減なんぞ必要ない。マイト・ラスターはもういない、デリーシャは石に関する記憶を失っている、二大賢者は死んだ。貴様らだけでどうやって対抗するのか……見物だな」




 そう言って、シンカは俺たちを解放した後、姿を消した。ここにいるのは、未だに草原の上でうずくまっているラルティーグと、厳しい目つきをしたジャッカル。この場の空気を伺っているハルと、何が何だかよく分かっていない俺。更に名前を知らない者が3人。ネオルはこの場には居ないみたいだ。


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