表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/100

第70話 魔王の犯した真罪

----------


「しかし、魔王として君臨したところで、役割を果たすことはない。私は、真の役割を把握しているから。私が魔王として生まれた理由、それは人間の進化を促すため。私に抗うことで人間は更なる進化を遂げる。体に羽が生えるとか、個体を捨てるとか、そういった目に見えるものではない。他の個体と協力し合い、新たなコミュニティを作り出す……それが進化だ」


 場面は変わり、人間と思われる生物がコミュニティを作り協力し合う姿が見られた。しかし、そう上手くはいかない。別のコミュニティを形成した人間が、弱小と呼ばれるコミュニティを侵食したのだ。そうやって強いコミュニティが弱いコミュニティを取り込んでいき、やがて戦争が起こった。


「人間は考える生命体でなく、直感で動く生命体。タカとは違い、目に入る利益を得るためだけに動くのだ。食物連鎖とか均衡とか気にせずに、我の強い人間は次々に他の生命体を襲う……そうはさせない、と誓った」


 今度は魔王が人間を襲っている様子が映し出されていた。巨大化して家を踏み潰す姿、炎を吐いて人間を焼き焦がす姿、怪力で人間の体を握り潰す姿。それらが次々に連続で映し出されるのだ。こんなもの、当時の人間からすれば恐怖の対象でしかない。


 強いコミュニティが弱いコミュニティを襲う、でもそれは嫌がらせとかじゃないはずだ。中には嫌がらせとか意味もない暴力も含まれているのかもしれないが、強いコミュニティだって明日を生きなきゃいけない。生きるためには、他の生命体を殺すこともやむを得ない。


 それで魔王を倒さねば、自分たちが倒される。下手すれば人間という種族が滅ぶ。だからどうにかしてでも倒さないといけない。ところで、こんな魔王をどうやって倒したんだ。石の力を使ったのか、二大賢者とかいう人達が、どうにかして。




「そうして、私は人間を滅ぼした」




 ……魔王は人間を滅ぼしたことがあるのか。また場面は変わり、人間らしき種族が完全に絶滅した様子が映し出された。真っ赤な血に染まった魔王は人間を殺したことに歓喜していた。人間の骨を燃やし灰にしたり、腐った肉を捨てたりと、魔王らしい行動を取っていた。何が魔王らしいかはよく分からないけど、とても残虐な行為を。


 人間を滅ぼした魔王は眠りについたが、すぐに何者かに叩き起された。これも具体的に言えば比喩で、真実を言うなら天に召されていった。魔王の体は地面に落ちているのに、魔王の魂だけが空高く昇っていった。どういうことかはよく分からない。


「私は観察者に呼び出された。どうやら世界の均衡を守っている真の神らしい、私の犯した罪は許されざるもので、世界から追放すると告げられた」


 ……この世に神って本当に存在するんだな。それも魔王を追放しようとしていた。人間という覇権を制した生命体を滅ぼした罪で。なのに、魔王は今でもこの世界に君臨している。それに今度は世界滅亡だ、人間の度合いを超えている。


「だから私は観察者を殺した。神殺しを犯した私は永遠に生きることとなった。永久に償い続けるべき罰として、また新たに受け持ったのだ。しかし、真の目的は達成したように思えた、人間を滅ぼすことはできたからだ」


 場面は変わって、人間のいない星で別の生命体が生まれようとしているのを、普通の暮らしをしている魔王が見届けていた。畑を耕している魔王、それも人間のような見た目をしているから、見ている側としては複雑な気持ちだ。神を殺した魔王は、永遠に生きなきゃならない。何かしないと、暇を潰せないんだろう。


「だが、また人間が生まれた。今度は繁殖能力を持っていた。無性生殖、細胞を分裂させて生命を生み出していた人間が、次は複数人で協力し合い生命を生み出すようになっていた。当たり前だが、観察者はいない。私を止める者なんていない、だから滅ぼした」


 また人間は滅ぼされたみたい。それにしても、昔の人間は無性生殖と呼ばれる生殖方法だったのか。それも生々しいな、細胞を分裂させて生命を生み出すなんて。今の方がよっぽどいい。まぁ、詳しく言えば、昔の人間と今の人間は異なる種族なんだろうけど。


「それでもなお、人間は生まれ続けた。やがて休みを得る人間もいた。睡眠を取り、体を休めてから戦い始める人間も。永遠に眠ることなく生きる私にとって、それは天敵に近い存在であった。その人間も滅ぼしたが、私の感知しかねる場所で、新たに生まれた人間が石を拾った」


 場面は変わり、今の人間と変わらないような姿をした人間が、赤く光る石を拾っていた。多分、これが力の石なんだろう。石を直接見たことはないけれど、頭の中のどこかに不思議な感覚として残っている。記憶とは言い難いし見たこともないのに、色は覚えている。時の石は緑色で、生命の石は青色に近い紫色だったはず。


「力を手にした人間には敵わなかった。力の石も奪われ、時の石も取られたところで、私は生命の石を発見した。人間は生命の石の存在に気づかなかった。生命の石を手にした私は人間を滅ぼしに向かったが、返り討ちに遭い……そのまま封印された」


 場面は変わり、紫色に光る岩に体が吸い込まれていく魔王が見えた。力の石の効果もあり、思うように力を発揮できない魔王は、時の石を操る賢者によって、生まれたばかりの姿に戻され、そのまま岩に封印されたのだった。これで一件落着かのように思われたが……人々は生命の石の存在に気づいていなかった。それは、魔王を封印した後も。


「賢者らは交代交代で、封印された私を抑え込んでいた。封印といっても半世紀で解くことが可能、しかし人間は賢かった。封印を解いた瞬間に時の石を使って私を封印された状態に戻したのだ。それを永遠に繰り返されて……今に至ると言えばよいのかもしれないな。私もそう単純な王ではない」


----------

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ