表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/100

第69話 マイト・ラスター

----------


 何故だ、魔王は確かにピンク色の髪をした男に殺された。背後から刺されて、青い血液もビシャッ……と辺りに飛び散っていた。男は謎の力で剣を巨大化させて、魔王の心臓を確実に貫いていた。そこで場面は終わったが……何で魔王は生きているんだ?


「それもこれも今から説明しよう。生命の石の力で、既に私の魂をとある生命体の中に移していたのだ。然るべき事象に備えて。王に歯向かう生命がいるのもまた事実」


 魔王に歯向かったというのは、あの5人組なんだろう。ピンク色の髪をした男は特に、人間じゃないみたいだ。ゴブリンの持つ穢れた武器から新たなハンマーを作り出したり、スケルトンの腕から槍を生み出したり……と、普通じゃできないことばかり。力の石を持っているから、そりゃそうか。


「男の名はマイト・ラスター。デリーシャの一員で、力の石と時の石を完全に覚醒させた。私は奴に殺されたが、奴は甘かった。生命の石の存在を知らなかったのだ」


 デリーシャ……力の石を分割して持っているパーティーか。どういう経緯で石を持ったのかは知らないけれど、シティストどころかセントリー内でも名の知れている討伐パーティーだ。俺は何故か知らなかったけど。


 でも、最近出会った時……正確に言えば、ラルティーグが彼らから石を奪おうとシティストの城に乗り込んだ時、マイトと呼ばれる男は小さかった。身長とかいう意味じゃなくて、雰囲気が違ったように感じたんだ。その時は銀髪だったのに、今はピンク色だし。3年経ってるにしては、面構えが全くもって異なっていた。


「タイムスタンプでも確認不可能だったが、確かに時空に乱れが発生していた。おそらく、マイト・ラスターは時の石を使って、過去に戻ったのだろう。覚醒状態だ、過去も変えることが可能」


 ここからは俺の推測だけど、魔王によって世界が1回滅亡したんじゃないのか。それで力の石と時の石を覚醒させ、魔王を殺して未来を変えるために過去に戻ったんじゃないか。タイムスタンプとかは分からないけど、生命の石で記憶が消せるんだ。名前の通り、時の石も時を操れそう。


 魔王、シンカと名乗る男は、足元で泣いてうずくまっているラルティーグを何度も何度も蹴り上げる。ラルティーグは病みに病みまくって、人格の暴走を抑えることができなかった。俺とジャッカルとハルが外に出ようとしたせいで、体が耐えられなくなり、5年間眠るはめになってしまった。魔王からすれば……戦犯だ。


「貴様は最低最悪の生命体だ、ここで消し去ってもよいが、私は小心者ではない。貴様が消えたところで真の計画に何ら影響は無い。魔王の側近という、貴様の役目もこれで終了だ」


 シンカはラルティーグを突き放しているのにも関わらず、ラルティーグはシンカの足にしがみついて離さない。


 何でだ、せっかく魔王から解放されたというのに。二度と人殺しなんてしなくていいのに。ラルティーグの病むキッカケは、大体魔王のせい。魔王が力を与えなければ、普通に暮らしていけたのに。


 ラルティーグの思考が俺には分からない、病みたくて病んでいる訳じゃないだろ、だったら魔王を倒して終わらせればいいだろ。俺だったらそうする、今の俺には決定権がないからできないけれど。どうせ、架空の人物止まりだし。


「私を見捨てないで頂きたい。私は王に仕える従者です! 私をどうか貴方の傍らに---」


「もう貴様は終わっているのだ。これを見ろ、生命の石と呼応した貴様は無意識に人格を大量に生み出した挙句、彼ら全員に体を与えることとなった。生命の石を無駄使いするような奴に、価値はない」


 木々に囲まれた草原には、8人の俺がいる。正確に言えば6人の、ラルティーグが生み出した架空の人物と、シンカとラルティーグ本人。けれども、全員同じ顔をしていて、同じ場所に傷を負っている。目つきが異なるくらいで、判別は不可能に近い。


 それもこれも全て、病みに病みきったラルティーグが生み出したというのか。それも生命の石を使って、どういう目的なのかは分からないが、6人の架空の人物に体を与えたのは事実。それで魔王を憤慨させているのも事実。


「---私の手で貴様を殺すなんて無様だ、しかし貴様が貴様自身の手で全てを終わらせることは可能だ。貴様が自ら死を選べばな」


「いいえ、私は貴方についていきます。それが私の生き様であり、願いです。どうか私をこのまま---」


「安心しろ、貴様も真実を聞けば、きっと死を選ぶ。私は貴様の感情を理解しているからな、貴様なら情報量に耐えきれずに逃亡する、逃げるだけならまだしも別世界にな。つまり……死を選ぶだろう」


 そう言って、シンカは生命の石の力を使い、記憶を映し出した。その瞬間、ラルティーグから生み出された5人の姿は見えなくなった。逆に、顔面を蹴られたラルティーグと、場面を映し出しているシンカのみ、その場に残った。あくまでも俺目線の話、ジャッカルからしたらまた見え方も違うだろう。


 それで映し出されたのは、古代の地球だった。もちろん、人間どころかほとんどの生物が生息していない。確か、深海の生物が進化して陸に上がり、そこから徐々に二足歩行になっていって、人間に近づいていったんだっけ。人間の起源も未だに研究中でよく分からない、だからこれはあくまでも仮説。


「地球に生命体が誕生する少し前、私は生まれた。正確に言えば、私は概念としての誕生であり、体は有していなかった。正義の代償として生まれた私は、正義に溢れた生命体を滅ぼすことを目的として活動することになった。それが運命であり、命運なのだ」


 紫色に光る煙は、他の生命体の誕生を見守った。特に何も手出しせずに、滅ぶのを見守り、また成長するのも見守った。これこそが正義の代償として生まれた悪魔の意義なのか。今のままだと、ただ見ているだけに過ぎないと思うが。


「この星で覇権を制したのは人間だった。そこで私は人間ごと世界を滅ぼすこととした。それが私の唯一の目的だ、生命には全てに目的が存在する。人間の目的が家族を生み育てて社会を構成することなら、タカの目的が食物連鎖のトップとして他生命体との均衡を守ることなら、私の目的は世界滅亡に変わりない」


----------


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ