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第67話 私の計画を邪魔するな

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「私の計画を邪魔するな!」


 ラルティーグの意識は回復しているものの、俺から体を奪う体力も残されていないみたいで、ただ言葉のみで抗うのみ。それでも俺の精神が攻撃されていく。俺が負ければ、また奴に体を取り返されて終わる。せっかくのチャンスが台無しになる。それだけは……この作戦はネオルの犠牲あってのもの。俺のミスで全てを地に還す訳にはいかない。


「お前は俺たちには勝てねぇよ」


「今は眠った方がいい。ネオルもそう言っているはず」


 ジャッカルとハルの言葉攻撃も効かなくなっており、体の左半分の感覚が薄れていった。もしかして、ラルティーグは俺の左手の感覚だけを奪ったのか。全体を奪い返すのを諦めて、効率よくモンスターを操作できる手だけでも奪ってやろうと。


 ボコッ……


 左腕の制御権を得たラルティーグは、俺の顔面を殴り続けている。どうにか感覚の残っている右手で抵抗しようにも、本気の攻撃には勝てっこない。右利きなのに、何なら同じ人間の手なのに、攻撃力がまるで違う。


 その上、奴の左手によってグギッ……と右手首を折られ、抵抗さえできなくなってしまった。それに俺の顔面を殴り続けた左手にも少しずつ傷が増えていった。これはラルティーグが狙って付けた傷だ。俺の顔面を殴り続けて意識を奪おうと試みつつも、左手に怪我を負わせることで……人の石の効果を発動する。


「教会にワープせよ」とラルティーグが唱えるだけで、辺りは白い光に包まれ、一瞬で例の教会に移動した。体の持ち主である俺の許可なく勝手にワープしやがって。しかし、体の半分の制御権を奪われている、これからどうすればいいんだ。


 無理やり魔王の封印されている教会にワープした俺は、どうにか奴の攻撃を避けている。右手首は折られていて、攻撃を防ぐことはできない。残されているのは頭と足くらい、だから足を器用に使ってその場で転げ回ることで、左手の攻撃を避けている。


 それでも完全に避けることはできない、何発かは顔面に当たっていて……もう何発か食らったら死にそうだ。口や鼻といった穴からは血が噴き出しており、呼吸もままならない。右手首の傷はいつまで経っても治らないし、ジャッカルに体を預けようにも、その一瞬の隙をついてラルティーグに体を奪われそうな気がする。


「私はこれから魔王を復活させる! だから邪魔をするな!」


「黙れ、ラルティーグ! 深く考えたことはないのか、闘争心を無くせば人類は進化できずに死ぬぞ! 他の生物もだ! そのまま世界は滅亡する、それでもいいのか?」


「私のことは気にするな、私は魔王の側近だ、魔王の言葉を信じる」


 奴は俺から完全な制御権を奪おうとしているが、そうはさせない。右腕だけでほふく前進しながら、教会から這い出でる。どうにかして魔王から離れないと、魔王が復活すればどうやっても勝てない。そうなる前に賢者やデリーシャに伝えなければ。


「止まれ、私に体を寄越せ!」


「……無理だ。これは俺たちのものだ」


「架空の人物が、私に盾突くつもりか!」


 頑張って草原を歩いていたが……徐々に右腕の感覚も薄れていく。左手と急激に回復した右手によって交互に殴られる俺は、どうにか足だけでバランスを崩さないように歩いているが、それでもラルティーグの本気のパンチは恐ろしい。歯は欠け、耳は潰れ、目が少しずつ見えなくなっていく。


「私の勝利だ、無駄な抵抗は止めてくれ……」


「嫌だ、それよりアルビノゴブリンは?」


「……黙れジャッカル、二度とその話題を口に出すな」


 両方の手から本気のパンチを顔面に受けていた俺は、バタン……と草原に倒れてそのまま動けなくなった。意識は残っている、でも体は動かない。動かしたくても、そもそも感覚が残されていないから。これは……ラルティーグに負けたというのか。ジャッカルとハルと、亡くなったネオルと協力して戦ったのに、孤独の奴に負けるなんて。


「……これで終わりだ」


 俺から制御権を奪い返したラルティーグは勝ち誇ったような表情していたが……突然、その場に倒れた。精神的にも肉体的にも苦痛だったんだろう、人の石を酷使しているラルティーグは、魔王と契約しているとはいえ普通の人間だ。ただ、普通に意識を失ったにしては……何故か制御権を奪うことができない。


「……何かがおかしい。彼の心拍数が上がっていく。まるで、人が亡くなる時みたいだ」と、医者の経験のあるハルは口にする。


 もしかして、ラルティーグはここで死ぬのか。そう考えていた時、突如俺たちも意識を失いそうになっていた。目の前が真っ黒になって、記憶も何もかもが消えてしまいそう。気合いで繋ぎ止めているけど……もう無理そうだ。




 プツン……




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「起きろ、あれから5年が経ったぞ」


 俺は何者かに手を差し伸べられ、無理やり立たされた。ここはどこ、俺は……エルド・ミラー。でも結局架空の人物とか何とか言われたな。あれは全て現実だったのか。となると、ここは教会の近くの森の中か。それで、ラルティーグはどうなったんだ。


 というか……5年後って何だよ。


 俺はさっきまでラルティーグと戦っていて、ジャッカルとかハルもいた。ネオルは既に殺されていてこの場には居なかったけれども。俺の言うことを聞かない両腕から一方的に殴られ続け、体の制御権を奪ったと思えば、いつの間にか寝ていた……はずなのに。


「私が助けた、君はエルド・ミラー。バルパーで討伐者をやっていたな」


 ……恐ろしいことに、俺に手を差し伸べて助けてくれたのは……俺自身だった。文字通り、目の前に立っている人物というのは……俺だ。


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