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第64話 妄想、発狂、独り言

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「そういえば、今はお前何してたんだっけ。鉄工の職人目指してる。そうか、お前子供産まれるのに忙しいな。そうでもないな、お前こそ何をやっているんだ? 俺は……モンスターと戦っているぞ。ゴブリンを蹴散らしたり、スケルトンの骨を折りまくったり、楽しいぞ。ストレス解消にもなる。


 でもお前は、ハルマーナを救えなかっただろ。お前が生み出したモンスターは、ルフラーン村を襲った後どこに行った? 知らないなら教えよう、ハルマーナを襲いに行った。ゴブリンも巨人も消滅したけど、お前は無意識に別のモンスターを生み出していたんだ。それは何か、それはお前だ。お前だよ、最低最悪のモンスターって。


 お前はストレス解消のつもりでモンスターを倒していたのかもしれないけどな、そんなの嘘だよ。お前は幻覚を見ていたんだ。モンスターだと勘違いして人を殺したんだ、何十人もの人を。


 お前もこの世から消滅するべきなんだ。お前がこの世にいたから、俺は死んだんだぞ。俺の娘も奥さんも、何でか分かるか、お前が生み出した巨人が原因だよ。お前が何もしなければ俺は死ななかった。他にも言おうか、そもそも俺は存在しない。お前に友だちなんて居ない。ピザ屋の看板娘、存在しない。ルフラーン村に親友、存在しない。ピザ屋くらいはあるだろうけど、誰もお前なんかに話しかける訳がない。


 ルフラーン村にも妊婦はいた、でもローグなんて男はいないし、そもそもお前に友達なんていないだろ。幼少期にストーズに連れ去られたんだ、それ以前からお前の父親が犯罪者でそれで誰がお前なんかと仲良くするかよ。お前の母親はとある病を患った。それは人に移る伝染病だ、誰がお前なんかと仲良くするかよ。大体、何がラルティーグだ。


 うるさい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ああああああああああああああああああああああああああああああアああああああああああああああああああああああああああああああゴああああああああああああああああああああああああああああああブああああああああああああああああああああああああああああああマああああああああああああああああああああああああ


 落ち込むなよ、大丈夫だ。君に親友なんてそもそも存在しなかったんだ。関係ない人間が巻き込まれただけ、誰よりも早くこの汚れた世界から逃げられただけでマシじゃないか。


 君は……誰だ?


 僕はネオル、君は大変そうだ。でも安心してほしい。僕は君を助けたい、君をサポートしていたい。僕はそのためだけに生まれた生命体だ。


 ネオル、私は幻覚でも見ているのか。


 幻覚なんて前々から見ている、君の親友は存在しないんだ。だから安心してほしい、これで目の前のパンも食べれるようになっただろう。パンがダメなら、そこら辺に売っているピザでもいい。看板娘と仲がいいでしょ?


 私はこの世に生まれてはいけない存在だった。


 誰もそんなこと言っていない。言っているのは君だけ、君以外は誰も言っていないそんなこと思っていない。試しに僕の頭の中を覗いてみてくれ。


 ……本当だ。君は綺麗だ。何をしたらそんな美しいことを思い浮かべられるのだ。


 僕は今、生まれたばかり。それに……花って綺麗でしょ。お花畑を想像するんだ、香りも思い浮かべて、花の蜜の味も考えてみて。僕が言っていることが分かるはず。今日生まれた僕の誕生日、花の素晴らしさを体験してくれただけでも満足だよ。


 君は何で私と話しているんだ。私はこの世に生まれてはならない存在なのだ。私と一緒にいても、救われないぞ。私は何せ---


 誰も君に言っていない。これからは僕と歩んでいこう。魔王とか関係ない。僕は君と共に人生を暮らしていきたいんだ。モンスターとか関係ない、そういう世界があったっていいじゃないか。


 それもそうだな」


 恐ろしいことに、ここまでラルティーグが独りで喋っているのである。ピザ屋の看板娘の話からネオルの誕生まで。そもそもルフラーン村に親友がいなかったことも今初めて明かされた。ラルティーグは俺たちに隠し事はしないと言っていたはずなのに、何で親友がいないって言わなかったんだ。


 もしかして、ラルティーグ自身も思い込んでいた部分もあるのか。親友がいて、その親友が巻き込まれて……その根幹部分を覆すことなく今まで生きていたとしたら……ラルティーグは一体何者なんだ。病んで病みまくって、そのまま生きてきただけの青年なのか。


 行きたくもない戦争に連れていかれ、死にかけて生きるためならと魔王と契約し、人の石を埋め込まれて無理やり働かせられる。ここまで見てきて分かった、もしかしてラルティーグも相当な被害者なんじゃないか。魔王が存在していなければ、ここまで病むことはなかった。


「……魔王様を悪く言うな。ガーゴイル計画の遂行まであと一歩。私はそのために戦い続ける」


 場面は切り替わって、また現実世界に戻った。今はポリスタットの路地裏にいる。俺たちに記憶を見せるために裏に来ていたが、休憩するためにまたバベル城近くにある居酒屋で酒を飲んでいる。まだ昼なのにも関わらず、それにそのお金……俺たちのだろ。


「隠し事はしない約束だ、つまり君たちの財産も私のものとなる。私に辛い過去を見せた代償とでも考えておくんだ」


 近くに人がいるためか、ラルティーグは小声で、フォークに向かって話しかけている。多重人格者であっても外見からはよく分からない、だから頭の中に響く声と話していたとしても、周りからは「独りで喋っているおかしな人」と思われる。実際にラルティーグは……狂っているが。


 そこでジャッカルは、ある質問をした。


「ネオルを殺した時の気分はどうだった?」


 実に暗殺者らしい、狂いに狂った質問だ。ネオルはラルティーグの唯一の理解者で唯一の救いだった。でもネオルがラルティーグに寄り添っていた理由は、あくまでも人類の絶滅を阻止するため。それでラルティーグに阻止の計画がバレてしまい、殺された。ストーズの洞窟で話したのが最後だ。


 さっき、妄想から生み出された架空の親友が殺された話をしたからか、生命の石を無理やり使って空間を生み出したからか、どっちかは分からないけれども、明らかにラルティーグは体に支障をきたしている。呼吸も乱れてきており、それに手も震えている。


「黙れ!」


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