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第61話 くたばれ

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 フォギー城は跡形もなく、陥落した。


 燃え盛る炎と煙に包まれた都市に富など存在しない。裕福な家庭だろうと金持ちだろうと関係なく、皆炎に飲み込まれていく。人種も関係ない、ただ炎は自我を持たずに目の前にいる人間を燃やすのみ。消防の人間も焼かれ、火を消せる人間はいなくなった。


 レンガで造られた城は崩落し、中にいた人間は全員押しつぶされて死んだ。巨人はレンガをボールのようにまとめて投げていく、目標はもちろん他の建物。まだ崩落していない塔の根幹を蹴り落としたり、丸くまとめたレンガを投げたりとやりたい放題。


 どれもこれもラルティーグの指示だ。ラルティーグは人間なのに、人間じゃないみたいな価値観を持っている。魔王と契約したからか、それとも生まれた瞬間からか、それとも拉致された時からか。いつかは分からないけど、コイツが歪んでいるのは事実だ。


 無事なのはフィスクやキャッスルに暮らす貧困層のみ。だけど彼らはマードックにいる住民を助けようとはしない。何故か、それは過去に差別を受けていたから。貧しいとかいうだけの理由で、隅に追いやられていたから。災害の前では平等だけど、助けるか助けないかは自由に決めていい。それで、彼らは助けないという道を選んだ。


「醜い。所詮ストーズの人間だ。お互いにやり返すことしか考えていない。闘争心の有する人間の弱点だよ。まぁ、ここで助けたとしても彼らは処罰されるだろう。私の長年の経験上、ストーズはこのまま滅ぶ」


 ストーズの王も城の崩落に巻き込まれたかと思いきや、違った。地下にある通路からこっそり脱出していたのだ。でもラルティーグは把握しており、巨人の力を使って通路を踏み抜いてもらっていた。でも、そこにいたのは王じゃなかった。ただの王の格好をした側近。


「王はどこにいる?」


「……くたばれ」


 王の格好をした側近はナイフで自殺を試みたが、ラルティーグに力で止められ、そのまま圧縮されて殺された。惨い死に方だった、頭も足も手も一瞬で潰されて、拳くらいの大きさになるんだから。血も一気にブシャッ……と噴き出しており、死塊からは目玉がこぼれ落ちている。


 影武者というところか、本物の王はこれを察知して既にどこかへ逃げていた様子。人の石を使えば簡単に人探しもできるはずなのに、何故かラルティーグはやりたがらない。それどころか疲れているのか、その場に倒れ込んでいる。俺たちはその様子を鋭いナイフから眺めることしかできない。


「何でアイツは眠っているんだ?」


「おそらく疲れたんだ。あくまでもボクの推測の範囲内だけど、人の石を使えば使う程、エネルギーが必要となってくる。エネルギーはラルティーグの体から吸収されているんだろう。それで巨人を使って体が窮地に追いやられているんだ」


 目を開いたまま気絶しているラルティーグを、巨人は拾い上げてそのままどこかへ走り去っていった。ナイフはその場に置いていかれたため、俺たちはそこからどうなったかは確認できずにいた。奴の鼓動音と意識の有無は内部からでも感覚で確認できる、それで今……奴は気絶している。


「今がチャンスだ、体の制御を奪おう」


 ハルは俺とジャッカルを無理やり立たせて、奴から体の制御権を奪おうとしたが……そう簡単には上手くいかなかった。それどころかハルの体力も急激に奪われて行った。ハルはその場に倒れ込み、うめきながら何かを俺たちに伝えようとしてるいる。


「……ダメだ……生命の石の力……驚異的だ……」


 ハルもまたラルティーグと同じように、目を開いたまま気絶した。急いでハルの目を閉じさせて眠らせたが……これはどうなっているんだ。ハルの言葉とラルティーグの最後から察するに……どうなってんだよ。


 さっきから、さっぱりだ。巨人は自然に生まれないモンスターで、それでバルパーとバーンズ村を襲わせた。エボリュード時代に戦ったハイカイも奴の作り出したモンスターで、どちらにせよ多くの人を失った。それでいてラルティーグはルイさんとか、また多くの人の命を奪うつもりだ。


「石の過干渉が原因だろうな。機械で言うところのオーバーヒートだ。人格が違えど同一人物、ラルティーグとハルもだ。石を使いすぎた副反応が、体を奪おうとしたハルにも効いたんだろう。だから俺たちは何もしてはいけない。体を奪ったら気絶する」


 ジャッカルはこんな時でも冷静に考えることができている。お前とは違って、俺はつい最近真実を知らされたばかりなんだ。それにバーンズ村の村長が死んだ理由もさっき知らされたから……頭の整理が追いつかない。


 俺が存在しなかったら、俺がエボリュードを辞めさせられた後にルイさんを助けなかったら、または助けたとしてもバーンズ村に行かなかったら、彼らが巻き込まれることはなかった。バルパーだってゴブリンに襲われたし、スルトにも襲われている。全て俺の責任だ、俺が存在しなかったら……全て解決するのに---


「馬鹿野郎ッ!」


 俺はジャッカルに、それも拳で強く殴られてしまった。真っ白な空間の中、痛みも感じないけど衝撃は強く感じた。その場に倒れ込んでしまってもなお、ジャッカルは手を止めずに俺のことを殴り続ける。


「お前が悔しがろうと勝手だ、でも俺たちが止めなきゃ次死ぬのは誰だ? お前じゃない。ルイとか罪のない人間だ。見ただろ、罪のないストーズの人間が炎に包まれる様を」


 ジャッカルはストーズを毛嫌いしていたのに、今はラルティーグの敵だからか……ストーズのことを思っているみたいだ。前までは「生まれてきたのが罪」とか言っていたくせに。ジャッカルは俺を殴る手を止めることはなく、俺も俺で何故か抵抗しなかった。


「それにお前は生まれたくて生まれた人間じゃない、生み出したのはラルティーグだ。お前が後悔する必要はないだろ。それに……お前はお前だ。ラルティーグの後片付けをする必要もない」


 そう言ってジャッカルは、倒れ込んでいる俺の前に手を差し伸べてきた。


「くたばるのはアイツだ。できるのは俺とお前と、あそこで眠っているハルしかいない。今ならラルティーグにも聞こえないだろう。早いうちに作戦を考えるぞ」


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