第59話 血だらけの左手
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厄介なことに、俺たち3人の会話はラルティーグに筒抜け。つまり作戦とかをどんなに話し合っても、結局は聞かれてしまって対処されることになる。こうなると……万事休すという訳か。何をしても無駄になる。
「計画を立てるのも、何をするのも自由だ。しかしガーゴイル計画の邪魔だけは許さない。私と魔王が築き上げてきた王国の破壊だけは。最悪、君たちを殺害する選択肢も視野に入れることにしよう」
そこから、ラルティーグの声はまた聞こえなくなった。ネオルもデーヴィーネッドも、先生も王もラルティーグに殺された。俺たちが殺されれば、それこそ本当に対策する術が無くなる。魔王と契約したラルティーグを倒せる技術なんて存在するのか。いや、治安兵士なら有り得るか。
だからこそ、ラルティーグは治安兵士の壊滅を狙っていたのか。治安兵士の技術は素晴らしく、裏でストーズが関わっているとはいえども、持っている兵器はどれも強かった。ジャッカルが持っているワイヤーとかクッションとか、どれもこれも戦闘に役立った。
ラルティーグや魔王からすれば厄介者だろう、治安兵士を影で援助しているストーズも共に。だから悪い面だけ教えてジャッカルに暗殺を依頼した。暗殺者として生まれ、ネオルに「君は偽物の人格だ」と言われたジャッカルは、依頼を遂行するしか、他に道がない。
ハルにはツェッペリンの地下都市で闇医者として働くという義務があった。病んで多重人格の病を発症したラルティーグは光を求めていたが、結果として光を自ら生み出してしまった。それで秘密裏にハルに診てもらっていたと。ハルもそのことには気付いていなかったし。
「……そうだ、1つ言い忘れてたことがある」
突然、口を開いたのはラルティーグ。彼が今何をしているのかは分からない。近くに反射するガラスが無くて、外の様子が確認できないからだ。ただビュンビュン……と風を切る音だけが聞こえる。ワイヤーの射出音も聞こえるし、ジャッカルの武器を使って悪事を働いているんだろう。
「……この世界には3つの石が存在しており、それぞれ力・時・生命となっている。3つが合わさると、とある最強の力を手にすることになる。世界の構造を作り変えることも可能だ……ところで、石にはある特有の能力が備わっている」
ラルティーグはどこかに辿り着いたみたいで、急に彼の姿が見えるようになった。近くのガラスから外を見てみると……そこはストーズの王が暮らすフォギー城だった。フォギー城のテッペンに着いたラルティーグは腰からナイフを取り出して、ある準備を進めている。
「私の持つ能力の出処は、先程話し合っていた結論の通り、魔王と契約したからだ。君たちの反射神経や超進化感覚も、魔王の能力を一時的に預かる契約で使えるようになっている。しかしそれだけじゃない」
ラルティーグは塔のテッペンで突然、手をナイフで切り刻んだ。普通なら激痛が走るはずなのに、彼は呑気に携帯していた水を飲んでいる。血だらけの左手は徐々に白く光り始めて……点滅していた。何がどうなっているか分からないけど、その光は彼の手から離れて、キャッスルにある森の方へ飛んでいった。
「ストーズにはモンスターも出現するにはする。しかしマードック付近には出現しない。というか、出現しない地域に王が暮らしているから当然か。すなわち、マードックを警備する人達はモンスターを討伐する方法を知らない。今ここでモンスターに襲われても倒せない」
光の飛んでいった方向から、突然モンスターの気配がした。さっきまで何もいなかったはずなのに、急に感覚が研ぎ澄まされたかと思ったら、ゴブリンの臭いを感じ取れるようになっていた。ゴブリンだけじゃない、スケルトンとかオークもいる。ガラス越しだから、何体いるかは分からないけど……結構多いぞ。
「私は生命の石を手にしている。生命の石は周りの生物を制御でき、左手の自傷行為により発動する。左手じゃなくても可能だが、私はこれに慣れているのでね」
森から現れたゴブリンらは、フォギー城めがけて走っている。いつもなら棍棒を持っている個体もいるはずなのに、何故か今回はいない。フォギー城から森まで随分と離れているはずなのに、奴らは周りの人間を襲うことなく一直線に駆け抜けていく。もしかして……ラルティーグが?
「私が召喚した……というよりは、呼び起こしたモンスターの軍団だ。討伐者のエルドよ、モンスターは敵ではない、言葉の通じない最高の味方だ」
ラルティーグはフォギー城周辺に集ったモンスターの軍団に向けて、血だらけの左手を掲げた。するとモンスターらは、フォギー城を破壊し始めた。周りに警備の人もいるのに襲わず、ただ一心不乱に目の前にある構造物を壊そうとしている。
警備員は警備員で対モンスター用の武器を持っていないため、戸惑うことしかできない。対人間用の武器を使ったところで、攻撃は効かないから。倉庫から対モンスター用の武器を持ってくるのが先か、またはモンスターの出没するキャッスルかフィスクに協力を要請するのが先か、もしくは絶滅が先か。
俺たちはただ黙って見ていることしかできない。モンスターを倒そうにも体は動かせないし、そのモンスターを動かしているのはラルティーグだ。きっとこのままフォギー城に暮らすストーズの王を暗殺するつもりなんだろう。
「そうそう、肝心なことを言い忘れていた。石を持つ生物は特殊なモンスターを操ることが可能だ。それはゴブリンとかスケルトンとかいう雑魚じゃない……巨人だ」
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