第57話 唯一の理解者
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「話を戻そう。ネオルは全てを理解して、俺の手助けをしてくれた。魔王を除いて、唯一の理解者だったが、ネオルは私を裏切るために理解者のフリをしていただけだった……それはまた別の話か」
ネオルは最後に自身を洞窟の中に埋めようとしていた。もしかしたら、それがネオルの最後の抵抗なのかもしれない。でも奴は出てきてしまった。ネオルは何も知らない俺の裏で必死に戦ってくれていたのか。
「理解者がいたとしても、私は孤独だった。魔王と共に正義のために戦っているが、結果として親友を失うことになった。そう考えれば考えるほど、深いストレスが心にのしかかった。そこで正義のために悪を遂行するサーベルトが生まれた」
……サーベルトって、ストーズで義賊として金をばら撒いていた奴か。
「しかしまただ、私の本業が疎かになってしまった。唯一の逃げ場をまた封印せざるを得なくなったのだ。そこで私はサーベルトを殺した、これも最近か。残念ながら私は自身の首を締めていることに気付かなかった、ここから一気に人格が生まれてしまった」
……サーベルトは殺されたのかよ。それにしてもどうやって。
場面は変わって、ストーズを舞っているラルティーグの姿が映し出された。しかし何者かによって撃ち落とされて墜落した。起き上がってきたのは目つきの悪いラルティーグ。きっと落とされたのがサーベルトで、起き上がったのが本物のラルティーグなのかも。
「サーベルトを殺した快感から暗殺者のジャッカルが、ジャッカルは自由気ままに生活しだし、私の生活を邪魔するようになった。もちろん私の存在には気付いていない、だから私はジャッカルを利用した。魔王でも私でも殺せない相手を、代わりに暗殺してもらおうとね」
……ジャッカルは古くから存在していた。あんな凶暴な性格になったのも今なら分かる。
場面は変わって、人を殺しているラルティーグと、患者を診ているラルティーグと、ラルティーグの側に立っているだけのラルティーグと、泣いているラルティーグの姿が見える。それぞれ、ジャッカルにハルにネオルに、本物のラルティーグなんだろう。
「しかしジャッカルが罪を犯せば犯すほど、私の体に偽罪が積み上がっていく。そこから教師とか王様とか生み出したが、彼らは自分の仕事に集中していたから殺した。そこで生まれたのが、最後の架空の人物、エルドだ」
……俺が最後だったのか。
場面は変わって、草原で泣いている男が映し出されている。しかし何故かその場に急に倒れ込んだ。気絶したのかと思ったら、その男はまた急に立ち上がり、対モンスター用の剣を構えながら、近くにいたモンスターと戦った。
「モンスターを操作する苦しみから逃れたい私が生み出した最後の人間は、よりによって討伐者だった。こいつも殺してやろうかと迷ったが、生憎私に仕事は残されていなかった。ネオルのせいで参戦できなかった賢者との争いも、魔王が代わりに戦っていた。だからこそ私は彼らに人生を与えてみた。どう過ごすのか考えながら。妄想としてバックグラウンドも作ってみた。人生を操っているようで楽しかった、私の体験できない人生を、代わりに体験させるようで」
……結局、俺の家族がスルトに殺された、というのもラルティーグの作り出した嘘。全てはラルティーグの手の中で展開されていた物語に過ぎなかった。それでもルイさんに出会ったのは事実、だけど俺はただの作られた登場人物で、彼女は本物でも俺は偽物だった。
「……ガーゴイル計画も終わりが近い。妄想など言ってられない、だから私はここで計画を話した。君たちの人生はここで終わりだ、所詮は登場人物。私の人生を豊かにしてくれるためだけに作られた、ちょっとしたスパイス限りの存在。かと言ってネオルのように殺したりはしない、永遠に生き続ければよい、この虚空の中で」
……やっぱりネオルは殺されたのか。代わりにジャッカルとハルは無事なのか。でも今更どうだっていい。何をしようにもラルティーグが魔王と共に願いを叶えるのには変わりないから。ハルがいようがジャッカルがいようが、俺たちは無力だ。
「横を見ろ。お前の唯一の仲間がいる。ジャッカルとハルだ。彼らは殺さずに置いておいた。絶望を知る人数が多ければ多いほど、楽しいからな」
ラルティーグの言葉通りに横を見ると、そこにはジャッカルとハルがいた。だけど2人とも黙ったまま、何も喋らない。同時に場面も変わって、またいつもの真っ白な空間に飛ばされてしまった。しかし、ネオルはいない。やっぱりラルティーグの言う通り、本当に殺されてしまったみたいだ。認めたくはなかったけど、事実なんだろう。
「エルドに人生を与えたのは私だ。何も持っていなかった討伐者に名前を与え、過去と夢を与えたのも全て私だ。エボリュードからはお前が勝手に動いた結果だが、スルトとか孤児院とかは私が追加した設定。青年がどう動くか見物でな」
……これは事実なんだろう。何も言い返せない。
「ジャッカルとハルは『自身が何者かによって生まれた嘘の人格』ということを認識していた。だからネオルに頼んで、エルドが全てを生み出したことにした。エルドには邪魔もなく普通に生きてほしかった。結局多重人格とバレてしまったが、私の存在には気付けなかった」
……ということは、ジャッカルもハルも今起きていることについて何も知らないということか。知っているのはネオルのみ、でもそのネオルは殺された。
「ガーゴイル計画、残されているのは厄介者の討伐と、石の完全奪還だ。二大賢者は魔王が殺した、後は石を奪うのみ。幸い力の石を持つ5人は発見している。それに厄介者も1人はジャッカルのお陰で殺せた……そう、ここまで言ったら分かるだろう。ジャッカルに暗殺を依頼した人間の正体が」
……もしかして、ジャッカルに暗殺を依頼したというのも……ラルティーグなのか。魔王が厄介者を消すためにラルティーグに依頼したけど、奴はモンスターを操ることしかできない。だから暗殺者であるジャッカルに依頼して暗殺させたのか。
「いいや、殺したのはネオルだ。バルパー西部、治安兵士の本部、シティストの城で気を失ったことがあるだろう。気付けば剣を持っていたことも。それは全てネオルが私の代わりに遂行した。ゴブリンを素手で倒したのは、お前じゃない。ネオルだ」
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