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第55話 生命の石とガーゴイル計画

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 外に出たラルティーグは、急に表情を変えて西の方に向かっていった。ここからは覚えている、俺はバルパーの中心部に行ったんだ。討伐者になるためにも、まずは金を稼ぐ必要がある……と思って、仕事を探しに。


 俺が追放されてから家を出るまでに、こんなことが裏で起きていたなんて。知りたくもなかったけど、知らなかったら無責任だ。エボリュードを追放された原因は俺自身にあり、俺ではなかった。正確に言えばラルティーグの仕業だ、そもそも俺は存在していなかったし。


 それで、急に場面が変わった。


 エボリュードに追放された過去を見せられていたってのは分かっている。ラルティーグの謎の力によってリアルな過去を見せられていた。でも、何の力なんだ、少なくとも俺もジャッカルもそういった能力は持っていないように見えた。


「……いいや、君らにもあるが……私が原点であることに変わりはない。私に生み出されただけの似非生命体とは違って、私自身は純粋な人間だ……ところで、ここに見覚えはあるか?」


 ラルティーグは結界のような透明な壁を解いた。すると周りの景色が急に見えるようになった。体は動かせないものの、草原に転がっているガラスの破片から外が見えるようになっていた。ここは、森か。でも森ならどこにでもあるけど……あの建物は何だ。


 教会か、ステンドグラスは割れていて柱も崩落しそうだが……もしかして、前にネオルが訪れていた場所か。シティストの北部にある、既に廃れた教会。外見だけしか見えないから判断できないけど、意識すればするほどそっくりだと感じる。


「ご名答、中に入ってみよう」


 今、体を動かしているのはラルティーグだろう。真っ白な空間の中には俺しかいない。他のネオルとかジャッカルとかハルは消えている。こんな真っ白な空間の中には俺だけ、外にいるのは得体もしれないラルティーグとかいう男。気が狂いそうだ。


「……感情も伝わってくる。君は私のことを『得体の知れない』と言ったな。分かっているだろう、私は原点だ。エルド、ハル、ネオル、ジャッカル、他にも色々な人間を生み出した、神の使い……ということにしておく」


 待てよ、ラルティーグの言うことが正しければ、4人以外にも人格が存在したことになる。例えばストーズで活躍していたデーヴィーネッド、アイツももしかしたら俺から生まれた人格なのか。いや、でもラルティーグが生み出したとか……本当に俺は存在しないのか?


 俺には記憶がある、炎の巨人に村を潰された記憶だ。ラルティーグは嘘をついているに違いない。オリジナルと自信を呼称して、俺を騙そうとしているはずだ。じゃないと辻褄が合わない、俺は何でモンスターの絶滅を願ったんだ。炎の巨人に復讐するためだろ。


 人間をモンスターに変える能力を持つ奴が生み出した人間が、モンスターを絶滅させたいと願うはずがない。どうして矛盾した行動を取ろうとするんだ。『私はオリジナルだ』と言って宿主を困惑させたいだけだろう、じゃないと……説明が----


「黙れ! お前は私から生まれた架空の人物だ。証拠も見せてやりたいが、その前に私は王に謁見しなければ」


 奴は教会に来ているのに「王に会う」とかほざいている。教会は神を崇めるために作られた建物なはず、こんな所に王がいる訳がない。それにここは廃れている、物好きな王じゃない限り来るはずがない。


「いいや、ここで眠っておられるのだ。名前は魔王、文字通り、魔の力で世を征服するために戦っておられる王。私は魔王の側近として生きてきた」


 ラルティーグは突拍子もないことを言っている。魔王って何だよ、聞いたことはあるけどそれは物語の中でしか存在しないやつだろ。昔読んだ本にも登場していて、勇者に立ちはだかる悪の組織のトップとして君臨していた。そいつが……現実に?


「この世界には魔王が封印されている。魔王の封印を一時的に解いて能力を受け取る。だから邪魔をするな」


 そう言ってラルティーグは、教会の中にある石を触り始めた。この石も見たことがある、前にネオルが触っていた。神様がどうたらこうたら……と言っていたけど、もしかしてネオルは魔王とかラルティーグの存在を知っていたのか。前に教会に訪れた時も不穏だった。


 ラルティーグの触れた石は紫色に光り輝き、やがてそこから煙がモクモクと立ち上がった。でも何かがおかしい。うっすらと何らかのシルエットが見える。人にも見えるし、悪魔にも見えるし、神にも見える。視認し難いけど、何かしらの生物に見える。




「見えているぞ、"生命の石"を持つ……ラルティーグよ」




 人の形をした煙は何か不思議なことを言っていた。もしかしてこれが魔王なのか。魔王は俺の姿が見えてないようで、ラルティーグに向かって話しかけている。こんなの有り得ない、超常現象みたいだ。それで、生命の石って何だ。


「魔王様、治安兵士のリーダーの暗殺に成功しました。ストーズの王はこれから、既に破綻寸前ではございますが……それと、"力の石"の保持者を発見しました。ストーズの王暗殺後に向かいます」


「……"ガーゴイル計画"も大詰めか。私が完全に復活するまで3年、その事実は賢者にも知られているだろう。だが人の石の存在は知られていない……そこで、ラルティーグに人の石を完全に分け与えよう。その代わり、力と時を奪ってこい。楽しみに待っているぞ」


「了解しました。決して後悔させません」


 魔王らしき煙は徐々に薄くなって、やがて消滅した。ラルティーグは何をどう……何がどうなっているんだ。さっぱり分からない、普通に生きていたあの過去は何だったんだ。魔王が本当に存在するとか、ネオルから聞いたこともないし。


 そんなことより生命の石とか力の石とか、ガーゴイル計画って何だよ。ネオルが言っていた戦争ってやつと関係あるのか。治安兵士のリーダーの暗殺とか、ストーズの王の暗殺とか、ジャッカルに関係あることも何で知ってるんだ。魔王に伝えて……ダメだ、何の説明もないから分からない。


「魔王との謁見が終了した。次は3年後、楽しみでならない。それで私はストーズの王を暗殺しに行くが、その前にエルドの心のケアをしておかなければ。私に聞きたいことが山ほどあるだろう。せっかくの人生だ、楽しく生きましょう」


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