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第54話 エルドの真の正体

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「エルド、これは過去なのだ。君は何も手出しできない。全て終わったことなのだから」


 どこかから、ラルティーグの声が聞こえる。よくよく考えれば正体なんて分かる。俺と同じような声をしていて、俺と同じような顔をしている。もしかして、コイツは俺なんじゃないか。ただしエルドじゃなくて、ジャッカルでもハルでもネオルでもない、また別の人。


「……てめぇ、何しやがる!」


 ラルティーグに抵抗しようとしたガイドの太ももには、どこからともなく出現した槍が刺さっていた。何が起きたか分からない、でもいつの間にかガイドの足には槍が刺さっていた、これもラルティーグの持つ特殊能力か。


「……何なんだよこれ、ふざけん……なよ」


 流石のガイドも呼吸が荒くなってきた。手も震えていて、持っていた対モンスター用の剣も床に落としてしまうくらいだった。でも槍で地面と固定されているせいで、逃げることもできない。助けを求めようにも、ラルティーグがいる。


「君に私の正体について話しておきたいことがある。エルドの追放を依頼し、君の家族を殺した私についてね。君も気になるだろ、どうせ死ぬ運命だ、知らないよりはマシだろう」


 悶えているガイドをよそに、ラルティーグは仮面を脱いだ。中にいたのは、俺だった。流石のガイドも二度見していた、やっぱり何がどうなっているか理解できていない様子。だってそうだ、さっき追放した相手が目の前にいて、そいつが自分の家族を殺していたんだから。


「お前……エルドかよ、何を……何が……何してんだよ……どうなってんだこれ」


「今の私はエルドじゃない、マーク・リューゲ・ラルティーグだ。長いからマークで良いさ、私の方が歳上だが呼び捨てでも構わない」


「どういうことだよエルド、説明しろ!」


 ガイドの悶える姿を見て、俺は震えが止まらなくなっていた。これは過去を見ているんだ、でも実体験なのは事実。俺の知らない物語、俺の知らない過去を追って体験している。俺が追放された後、エボリュードはどうなったかを、ラルティーグに見せられている。


 ガイドは俺に対して叫んでいる訳じゃない、目の前にいるラルティーグに向かって叫んでいる。それでも胸が痛む、目の前にいるのに何で助けられないか……と。俺がバルパーでゴブリンに襲われている間、裏ではこんなことが起きていたなんて、恐ろしい。




「エルドという男は存在しない、私が原点だ」




 何言ってんだ、俺はエルドで存在する。今までもこれからもエルドとして生きていく。エルド、俺は確実にスルトに襲われたあの村で生まれたんだ。俺から生み出されたネオルとかジャッカルとかハルとは訳が違う。スルトに襲われたあの日のこと、今でも思い出せるぞ。


 でも、ネオルが最後にこんなことを言っていた。「君はオリジナルじゃない」とか「君は病んでいない」とか。ネオルの言うことが本当なら、多重人格としてネオルとかハルとかジャッカルを生み出したのが俺じゃないということにならないか。それに、オリジナルじゃないっていうのなら……もしかして。




「エルドは、私から生まれた架空の人物だ」




 この言葉を聞いた俺は、呼吸できなくなっていた。衝撃の事実で、手どころか足の震えまで止まらなくなっていた。確かに村で生まれて、スルトのせいで全てを失った。それで孤児院で暮らして、モンスターを討伐するために街に出た。学校に行きながら討伐者を目指し、色々とあってエボリュードに所属した。


 それらの記憶に嘘偽りなんて一切含まれていないはず。だってこの身を持って体験してきたものだから。夢なんてこともありえない。夢で家族を失うことなんてあるか、実際にスルトに殺されたんだ。親も弟も。何もかも失った。


 モンスターに対する憎悪もそこで生まれた。それが全て夢だったのなら、俺は何をしに生まれたんだ。いや、架空の人物ってなんだよ。ネオルとかハルとかジャッカルは、病んだ俺から生まれたと思っていた。なのに違ったのかよ、俺が……俺じゃないのか。


「ご苦労だった、エルドは解放された。どうでもいいモンスター討伐ごっこに巻き込まれなくて済む。お礼だ、君たちの死体を消去しよう。代わりに君たちをゴブリンとして蘇らせる。自由意志は無い、歩く屍だけどね」


 そう言って、ラルティーグは力を使い、3人の姿をゴブリンに変えた。亡くなったはずのレドルラとシルバも生き返っている、姿はゴブリンのままだけど。でもなんで、人をゴブリンに変える能力なんて物騒な力を持っているんだ。普通に生きていたら必要ないだろ。


「3体じゃ少ないな、せめて2倍にしてやろう」


 ラルティーグは更に力を使って、目の前にいる3体のゴブリンを分裂させた。ゴブリンは増殖して6体になったのだが……何をどうしたらそんな卑劣なことができるんだ。人間をゴブリンの姿に変えるなんて。


「よし、君らは大回りして、バルパー西部を襲うんだ。他のゴブリンも着いてくるはずだ、何だって今の君らはゴブリンだからね。仲間は大切にしておきなよ」


 まさか……バルパー西部って、あの時のゴブリンじゃないよな。俺が追放された後、バルパーの西の方で出会ったゴブリン達。ルイさんが襲われていて、俺はそれを助けた。あの時ネオルは止めようとしていた、もし事情を知っていたなら?


「……その通り、エルドは自分の仲間を殺そうとしていた。モンスターになったメンバーだとは知らずにね」


 急に吐き気が止まらなくなってきた。体の震えも限界を通り越して、立っていられなくなった。意識も朦朧としてきて、何だか不思議な感覚に陥りそうだ。フワフワする、まるでもう生きていないように。手の感覚も薄くなってきたし、頭もぼーっとする。


「……効果が切れたみたいだ」


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