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第53話 エボリュード、壊滅

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「……エルド・ミラー、君はもうこのパーティーから去ってもらおう」


 突如、俺はそう告げられた。害悪なモンスターを討伐するためだけのパーティー・エボリュードのリーダー、ガイドから。それもいつもと違って冷酷な目で。


 この場には全員揃っている。俺、リーダーのガイド、金髪のシルバ、赤髪のレドルラ。「重要な話があるから」とガイドに呼び出されたが、まさか俺の今後の処遇についての話だったとは。それにしても、何でこのタイミングで。


「お前はもうこのパーティーには必要ない、理由は……実力不足だからだ。俺たちのパーティーには強者しか求めていないからな」と、ガイドは俺の目の前でそう言った。


 確かに俺以外の3人は素晴らしい。身体能力が長けていたり賢いため、単独でも上級モンスターを討伐することができる。俺はあまり頭が良くないから、作戦を考えることなんて苦手なんだ。でも、前々から言っててくれれば、何かしら対策できたのに。急に言われても困る。


「残念……あなたはもうエボリュードのメンバーじゃない。それにポリスタットやシティストと違って、ここは追放支援金が出ない。追放されても金は貰えない。だから早く出てって。荷物をまとめて」


「理由に納得できないなら言うか? お前は力不足で何にもできない……ただの必要ない存在だ。そのくせに最近は討伐のミッションがあるからとお前を呼んでも、お前は来ない。その謎の使命感があるなら、呼んだ時には来い」


「とにかく、もうお前は必要ない存在だ、モンスターみたいに。だから荷物をまとめてここから去れ、もうお前の顔なんて見たくない」


 何も反論できずに、俺は拠点から出ていった。追放されたって事実を噛み締めることしかできなかった。俺は無力だった、でも従うしかなかった。追放されてもしがみつくことなんてできないから。厄介なシステムだよ、追放なんて。


 それで、何で俺はまだ部屋の中にいるんだ。俺は拠点から出ていったはずなのに。それに、何で俺は今このタイミングでエボリュードの拠点にいるんだ。エボリュードは既に引退したと聞いた、なのに何故俺は追放されているんだ。


 拠点に残っているガイド、シルバ、レドルラは俺の姿が見えないようで、俺を追放した後しばらく黙っていた。あんなに意気揚々に俺を追放したのに、追放したらしたで気まずい空気になってどうするんだ……何だよこれ。


 さっきまでストーズの洞窟の中に閉じ込められていた。ネオルが真実を語るとか言い出して、ハルの制御を奪っていた。そのくせに真実は語らずに、俺に妙なことを言ってそのまま……どこに行ったんだ。


 ここにいるのは、冒険用のアーマーを着けた俺と、俺が追放された時と全く同じ格好をしているガイド、シルバ、レドルラのみ。ネオルどころか、ハルもジャッカルもいない。確かにここはエボリュードの拠点だけど、今は空き家になっているはずだ。


 俺が追放されてから月日が経っているはずなのに……というか、さっきまでここに俺がいた。追放された時と同じ服装だ。となると、これは夢か。夢だという意識がある、特殊なタイプの夢なんだろうな。じゃないと説明がつかない、自分が追放されていく様を見届けるなんて。


「いいや、違う」


 突然、何者かがそう発した。俺じゃないし、3人は黙り込んでいるから違うように見える。それに聞いたことのある声、これを発したのは一体誰なんだ。


「私だ」


 背後からした声に思わず振り向いてみると……そこには俺が立っていた。正確に言えば、俺に似たような何かだ。決して俺じゃない。でも俺だ、外見はそっくりで、目つきや表情が少し違うくらい。他の人が見れば「お前だ」というだろう。そのくらい似ているけど……俺じゃない。


「いいや、私はエルドだ」


 俺と同じように冒険用のアーマーを身に着けた奴は、自身のことをエルドと名乗っている。でもエルドは俺だ、それに一人称が違うし、言葉遣いも違う。あんな気持ち悪い笑みなんて浮かべたこともない。




「……偽名はもう捨てよう。私の名前はマーク・リューゲ・ラルティーグ、神の使いだ」




 ラルティーグの名乗る男は仮面を着け、透明な壁を突き破って向こう側へ行った。向こうにいるのは、エボリュードのメンバー達。俺を追放したばかりで、気まずいのか何故か喋らない。ラルティーグ……俺の名前のことを偽名とか言っていた、何なんだコイツは。


「私の指示通りに、エルド・ミラーを追放したか?」


「見ていただろ、何がしたいんだ」


 ガイドは拳を握りしめながら、ラルティーグと話している。それに……どういうことだよ。俺の追放は、ラルティーグの差し金だったってことかよ。コイツがガイドに指示して、それで俺が追放されたっていうのか。それにガイドは、何でラルティーグの命令を聞いた?


「……家族には手を出すな!」


 ガイドは鋭い目つきで、ラルティーグのことを睨んでいた。彼らの会話から察するに、もしかしてガイド達は家族を人質に取られていたのか。「手を出すな!」って、普通じゃ聞かない言葉だぞ。ますます謎が深まる、ラルティーグは何をしてるんだ。


「……もう出したぞ。まとめて海に捨てた。約束は破るためにあるものだからな」


 そう発した瞬間、ガイドとレドルラは近くに置いてあった対モンスター用の剣でラルティーグに斬りかかった。奇襲に対処できなかったラルティーグの腕からは血が溢れ、止まらなくなっている。だが余裕そうに笑みを浮かべながらも、ポケットに入っていた石を手に持って話し始めた。


「エルドが追放された今、君らは用済みだ。でも、リーダーには話しておきたいことがある」


 そう言って、ラルティーグはレドルラとシルバの顔面に向かって石を投げた。奴も特殊能力を持っているんだろう。石の当たった2人は顔面から勢いよく血を噴出し、その場に倒れた。即死だった、一瞬で心拍数が急激に上昇して、一瞬で聞こえなくなったから。


 俺は家の中を自由に散策できる、なのに彼女らに触れることはできない。手が拒んでくる、何を恐れているかも分からない。石をぶつけられた2人は何も抵抗できずにただ死んだ。引退したと聞いていたのに……2人とも死んでいたなんて。


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