第48話 新たな謎
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義賊……とは、偉い人から金を盗み取り、それらを貧しい人達に配る無法者。デーヴィーネッドって奴も、マードック周辺に暮らす貴族から金を盗み、キャッスルとかフィスクに暮らす人に配っていたのかもしれない。
より詳しい意味を聞こうとした時、彼は気を失ってしまった。死んでしまったか……と思い脈を測ったが、特に異常は見られなかった。若干普通よりも速いくらい、刺されてるから当たり前だけど。
「大丈夫、彼は死なない。後のことは救護隊に任せよう」
ハルの推測を元に、俺は槍を抜かずにその場から立ち去った。感覚を研ぎ澄ませてみると、確かに遠くから救護隊が接近してきていた。なるほど、ハルはこれを予測していたのか。
とにかく、今はデーヴィーネッドの正体について調べないと。どこかに身を隠す必要がある。近くに森があるからそこにするか、でも兵士に見つかる恐れもある。思い切ってフィスクかキャッスルに行くべきか、そこなら歓迎してくれるかも。というか、何で俺はデーヴィーネッドと勘違いされてるんだ。
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結局、そこら辺にある森の奥にある洞窟の中に入ることにした。流石のジャッカルでも、フィスクやキャッスルの地理は詳しくなく、マードック周辺しか分からないとのこと。だから、下手に寄って迷うよりも、森に行くことを選んだ。
まぁ、最悪迷っても感覚を研ぎ澄ませれば答えが分かる。空間把握能力を持っているから、目を閉じて集中すればどこに空間があるか、どこに扉があるか、どこに鍵が置いてあるか……とか、普通の人じゃ把握できない範囲まで分かるみたい。
だから隠し扉とかも見つけられる。鍵が必要でも蹴破ることができるし、頑丈な扉だとしても鍵のカチャッという音から推測して、鍵穴にバッチリ合う鍵を作成することもできる。でも、それらは集中している時にのみ有効。
周りを敵に囲まれたりして、集中できない時には使えない。だから敵に囲まれる前に色々と対処する必要がある。でもここは洞窟、人なんてそうそう来ない。来るとしてもモンスターくらい、だけどストーズにモンスターは滅多に出現しない。だから、ここは安心だ。
「……それで、デーヴィーネッドって?」
「俺も分からない。ストーズに何回か行ったことはあるが、デーヴィーネッドなんて初めて聞いたぞ」
デーヴィーネッドについて、ネオルもジャッカルも何も知らない。もちろん、俺もハルも。この中でストーズに行ったことがあるのは、ジャッカルのみ。でも仮面は着けてくれてたのだろう、デーヴィーネッドと言われたことがないみたいだし。
基本的に何でも知っている、記憶力の良いジャッカルでさえ知らないとなると、デーヴィーネッドはどういった存在になるんだ。どこかの神話に登場するキャラクターか、それとも実在する人物か。でもここまで襲ってくるとなると、本当に実在する人物なんだろう。
一応、ここは肌が黒い人が多い国。俺は肌が白めで、人種が違うようにも思える。だから、彼らは肌の色を見て認識していたんじゃないか。それで、肌の白いデーヴィーネッドと俺を見間違えたんじゃないのか。それならまだ辻褄が合う。
デーヴィーネッドは仮面を着けずに、素顔で活動していたと予想できる。だとしても、丸見えではないはず。敵に捕らえられたとか、そういった危機的状況じゃない限り、普通は顔を隠して行動しようとするはず。だって私生活が危ういから。
「今やるべきなのは、依頼人の謎を解くことだ。デーヴィーネッドとか、義賊とかどうだっていい。俺には関係ない」と、ジャッカルは謎を解く気なんて無い様子。
それもそうか、ストーズの王の暮らす城はマードックの中にある。名前は確か、フォギー城。さっき戦っていた時もチラチラ見えていた。獲物はすぐそこ、なのに殺せなかったからジャッカルは苛立っているんだろう。
「肌の色から、デーヴィーネッドもセントリー出身である可能性もある。その彼が何故ストーズで義賊をしているのか気にならないかい?」
「全く気にならないな。依頼人の謎を解くためにここに来た、関係ない奴の謎を解くつもりはない」
やっぱりジャッカルは乗り気じゃないな。それどころか、依頼人の謎を解く過程をすっ飛ばして王を暗殺しようと準備している。俺たちの約束を破るつもりなのか。そうはさせないけど、かと言って依頼人の謎も解けそうにない。
依頼人は手紙を通じて、ジャッカルに暗殺を依頼していた。ポリスタットの果物屋に挟まっていた手紙、現物は無いけど手紙が挟まっていたという事実は変わらない。やっぱり依頼人はセントリーの人なのか。それとも、キャッスルとかフィスクにいる、貧乏な人達なのかも。でも、それだと治安兵士とか分からないよな。
「……治安兵士には複数名だが、ストーズ出身の人間がいる。そいつらが貧乏区域出身なら可能性はある」
この情報を教えてくれたのは他でもない、ジャッカルだった。デーヴィーネッドの話に乗り気じゃなく、何なら暗殺の準備を進めていたくらいなのに、手を止めて会話に参加してきた。良かった、約束を守ってくれるのか。
それで、とある仮説を立ててみた。
バーンズ村と同じように、フィスクやキャッスルの若い人達も治安兵士に徴兵されていた。何も疑わずに行ったが現状を知り、どうにか脱出。それでセントリー内にいるジャッカルに暗殺を依頼。もしも依頼人が貧乏区域出身なら、ストーズの内情も治安兵士の内情も理解しているはず。
「なるほど……それでボクたちは何をしたらいいんだ。暗殺を止めるか、暗殺させるか、そのまま依頼人を探すか、反対にデーヴィーネッドの正体を探るか。セントリーに帰るという選択肢もある」
謎が解けていくに連れて、謎が新たな謎を呼ぶ。何とか現地に来れたというのに、ここで行き詰まってしまうとは。せっかくここまで来たのに、何も出来ずにただ帰るという選択肢もあるけど、何かしら行動は起こしておきたい。でも、そうするとジャッカルが暗殺してしまう。それは避けたい。
「決めた、デーヴィーネッドを探ってやろう。俺に提案がある」
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