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第45話 証拠隠滅

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「それで、最後に依頼人から手紙を受け取った場所に行くのかい?」


「今なら空いているだろう」


 コンテスト会場の出口は、ポリスタット内の新聞屋に通じていた。喫茶店から入り、新聞屋から出る。やっぱり秘密で違法のゲームって感じがするな。新聞屋の店主はまだ眠っているようで、扉は開かなかったが蹴破って無理やり通った。


 ジャッカルは、依頼人から手紙を受け取ったとされる、ポリスタットの中心部にある果物屋に向かっていった。依頼内容を声で伝えるよりも、手紙に書いて渡した方がいい……と依頼人は判断したんだろう。ただ、手紙だったらどこかに残っているんじゃないのか。


「証拠隠滅のために俺が燃やした。記憶力も良いし、証拠品を持ち歩く必要性がない」


 そこら辺は変に用意周到なんだな。でも、手紙の現物が無いせいでポリスタットの現地まで向かわないといけなくなっている。微妙に用意周到じゃないのは何でだ。依頼人を疑う可能性なんて考えなかったのか。


「……俺は暗殺者だ、依頼人を疑って何になる」


 ジャッカルは正真正銘の暗殺者、というか想像していた暗殺者とは違って、意外と表からの殺害を試みる。能力のおかげで遠距離戦闘ができるんだ、石やナイフだって遠くから投げられるようになっているのに、彼は近接での殺害を好む。


 ずっと不思議だった、治安兵士のリーダーをジャッカルが殺した時も、自分の手で殺すことに快感を覚えているのか、直接本部タワーの上層階に降り立って殺害していた。関係ない人も巻き込んで、治安兵士の上層部だからという理由で、悪いことをしてない人もいるはずなのに。


「ラドラを殺したのはお前だ、俺は殺してない。それにストーズ人は悪魔と婚約した、悪魔同然の奴らだ。どう考えても、悪いのは奴ら」


 ダメだ、話が通じない。治安兵士の上層部以外のストーズ人に会ったことなんてないけど、絶対にこれだけは言える。悪い人じゃない人だって、絶対にいる。全てが悪い人だって、そんなことは無いはず。悪魔と婚約したとか、そういう言い伝えなだけだろ。


「ボクも同意見だ、神の域に達する人間は誰もいない。神の域に達している悪魔は、穢れある神としてまた崇められている。悪魔と婚約したところで、彼らに罪は無い」と、ハルも俺と同じ考えみたい。


「……着いたぞ。前に来た時は果物屋の、オレンジの箱の中に手紙が挟まっていた」


 果物屋に着いたが、真夜中というのもあってお店は開いていない。それに、ジャッカルは「オレンジの箱に手紙が挟まっていた」と言っている。それはつまり……依頼人から直接手紙を受け取っていないということか。オレンジの箱から取っただけで、間接的に受け取ったということになるのでは。


「……そうだな。俺は依頼人とは会っていないはず、手紙を受け取ったとは言ったが、直接的にとか間接的にとは言っていないはずだ」


 ジャッカルは自身のことを「記憶力が良い」と称しているが、こういう暗殺に関係ないことになると全く覚えていないみたいだ。暗殺に関係ある、ディブル城の仕組みとか治安兵士の情報とかは覚えているのに、依頼人から手紙を受け取ったかどうかは「〜はず」と、言葉を濁している。


 直接受け取っていないのなら、色々と話がややこしくなってくる。間接的に受け取ったのなら、依頼人の顔を見ていないことになるし、手紙の筆跡と言葉遣いでしか正体を暴けない。その肝心の手紙を燃やしたとなると、依頼人の正体を暴くのには……骨が折れる作業となるな。


「同感、僕も何が何だか分からないや」と、ネオルも若干諦め気味。


 そもそも、依頼人は何がしたいんだ。ストーズは各国から嫌われているらしいし、治安兵士は何故かストーズによって乗っ取られてきている。セントリーの作り出した治安兵士だ、下手すればセントリー自体も乗っ取られてしまうかも。それを阻止するために、暗殺者のジャッカルに依頼したのなら……治安兵士の存在を知っている人に限られる。


 俺だって、ジャッカルから話を聞くまでは治安兵士の存在なんて知らなかった。治安兵士はツェッペリンに本部を置く、秘密裏に結成された組織だ。名前の通り、治安を守るために戦う兵士の集まりみたいだけど、実は違う。バーンズ村の若者は、新事業としてツェッペリンに連れていかれた。


 もちろん、バーンズ村の村長もルイさんも治安兵士なんて知らなかったし、ツェッペリンの新事業だと思っていた。だから、治安兵士というのを知る人は凄く限られている。ストーズの王を暗殺して、治安兵士を潰したところで得する人間を割り出せばいい。


「……こうなったら最終手段だね」


 口を開いたのは、ジャッカルでもネオルでもなく、ハルだった。ハルの考える作戦は、突拍子もない物が多い。治安兵士と戦った時も「治安兵士の奴らの記憶を消す」とか、普通じゃ考えつかない物だらけ。実際、役には立っているから特に文句も無いけど。




「ストーズに行けばいいじゃないか」




 ……ストーズの王を殺そうとしている暗殺者を、そのストーズに連れて行くのか。無茶だ、ジャッカルのことだからまたストーズの王を殺しにと真っ先に向かうだろう。それに彼は、ストーズの市民も何故か恨んでいる。治安兵士の上層部を構わずに殺した人だ。ストーズの市民も関係なく殺される気がする。


「ストーズを恨んでいる依頼人は、やけに内情に詳しい。セントリー内に居ると考えるのが妥当だよね?」とハルは俺に向かって問い掛けてきた。


 間接的とはいえ、果物屋に手紙を置いたんだ。だからセントリー内に居るのは確実だろう。治安兵士のことも知っているし。でも、なら尚更セントリー内で捜索を続けるべきなんじゃないのか。ストーズに行くとなると、許可証が必要になってくる。


 他国へ行くには、専用の許可証が必要で、許可証を獲得するには役所に行って許可を得る必要がある。俺はバルパーに暮らしていることになっているから、許可証を獲得するにはまたバルパーまで戻らなくちゃいけない。


 無理やり行こうにも、国境には低めの壁と、国境監視兵がいる。能力を使って飛び越えたとしても、見つかってすぐに刺される。ストーズに行けたとしても、異国の地だから何もかもが分からないし……それは無茶すぎる。


「エルド、考え方を変えてみて。同じ思考だったら何も変わらない」


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