第44話 悪魔がッ!
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「治安兵士と繋がっているのは分かった。お前らはストーズと組んで何がしたい?」
高級そうな椅子に座っている主催者を、壁際に立たせてジャッカルは質問をした。主催者を守ろうとした兵士は全員気絶して動かない、だからここに居るのは俺たちだけだ。
「悪魔がッ!」と叫んだ人の指は、ジャッカルによって折られてしまった。拷問と同じシステムだろう、何か真実を吐くまで痛い目に遭わせられ続ける。残虐な行為は止めたいけど、コンテストも残虐な行為だから……止めようにも止められない。
「お前はポリスタットで王の側近をしているな、名前は確かグラートと言ったか。質問に答えなくてもいいが、お前の指と野望は消失するぞ?」
ここに居る主催者は、ほとんどがポリスタットで王の近くで働いている。現に指を折られた彼も側近として王の側にいる。そんな彼がストーズと裏で繋がっているし、違法なコンテストを主催している。それが世間に知られたらマズい……ってのは、もちろん理解しているみたい。
「俺も正義の味方じゃない、だから真実を言えば、世間には黙ってやる。お前らは何のためにコンテストを主催している?」
ジャッカルはグラートの横にいた男の足の爪を割った。足の指を折らなかっただけマシ……なのか。爪を割られるのも中々痛いとは思うけど。この男もポリスタットで指揮官として働いているみたいで、名前はゴーラというらしい。
「待てッ……質問に答える。金が欲しいからだ」
ゴーラは足を押えながら、簡単に答えを吐いた。だけどそれはジャッカルの求める答えじゃなかったらしく、また別の指の爪を折られてしまった。激痛に悶える彼を横目に、ズローという男に対して別の質問をした。
「質問が悪かったな。変わった質問をしよう、お前らはモンスターをどこで調達している?」
これも疑問だ。俺たちの時は上級モンスターのオークが出されたが、そもそもモンスターを生きた状態で運ぶなんて難しい話。抵抗もするし、下手に運べば仕返しも来る。
主催者の部屋に置いてあったリストには「巨人」とか「スノットリング」とか書いてあるが、こいつらもコンテストに出場させているのか。巨人は名前の通り大きな人型の上級モンスター、スノットリングというのはゴブリンよりも小さいモンスターだが、集団で動くため厄介。
スノットリングも集団で動くから、そいつらをまとめて会場に持ってくるとなると、途方もない労力が必要になる。というか、巨人を連れてくることなんてできるのか。治安兵士の技術があったとしても。
「……モンスターの出現地で待ち伏せしているだけだ! 若い者にテストプレイを兼ねて行かせている。亡くなる者も多いが……やめろ!」
そう発言したズローは、ジャッカルによって殴られて気絶してしまった。ズローの回答で何となく辻褄が合ってきたようにも思えた。バーンズ村の若者が出稼ぎに行ったまま、仕送りもせずに音沙汰が無い理由……もしや、モンスターの捕獲に行かされていたからじゃないのか。
治安兵士の奴らに奴隷のような扱いを受けていると聞いたが……これに近いことをさせられてるんじゃないのか。なら、どうしてそんなことをさせるんだ。パワー・コンテストなんか開かなくても、他の方法で金稼ぎはできるはずだろ。なのに何で危険な道を犯してまで、金を稼ごうとするんだ。
「次はお前、ボリュート。モンスターと関係のある方法で金を稼ぐ理由は何だ?」
「……いい加減分かれよ。モンスターを討伐することで儲かる仕事もある。俺はその手助けをしてやってるんだ。お前らのような世の中を知らない子供は、親のおっぱいでも吸いながら寝とけ!」
そう発言したボリュートは、右手の指全部を一気にへし折られてしまった。子供のように大声で泣きながら謝り始めても、もう遅い。許すとか許さないとかそういう話じゃなくて……知りたくもなかった世の中の摂理を知ってしまった気がする。
モンスターを討伐することで、討伐者に金が入る。都市は安全を守った討伐者に対して金を送る。単純な仕組みだと思っていたが、裏には治安兵士も都市も関わっていた。討伐することで儲かるのは、討伐者以外にもいるらしく、そこを潤すために彼らは尽力していた。そうすることで、治安兵士の奴らもまた儲かる……という訳か。
「もっと簡単な質問……じゃなくて命令だ。モンスターの出現地リストを出せ!」
ジャッカルの脅しに答えたのは、まだ何もされていない最後の1人、クラシックという男だった。ジャッカルの言う通りに机からモンスターの出現地リストを持ってきた彼は、ジャッカルから何もされずに済んだ。
「……目当ての物は回収した。記憶を消すぞ」
ジャッカルはそう言って、ハルと交代した。治安兵士の奴らと戦った時と同じようなことをするつもりみたいだ。机の上を片付けたハルは、近くにいたクラシックの首を持ち上げて、思いっきり机に向かって叩き付けた。血が勢いよく飛び散ったけど、記憶は消えた上で無事らしい。
「ハハッ……血の臭いは取れにくいのにねぇ」
ハルも勢いよく、次々に気絶させて記憶を消していく。鉄砲を構えたまま倒れている兵士も忘れずに、兜を取って丁寧に壁にぶつける。もはや丁寧と言えるのかどうか……というところもあるが、殺すよりはマシだ。
全員を気絶させたところで、下に降りて俺と交代した。といっても、やることはそこまでない。奥から現れたまま、対戦相手もおらずに放置されていたオークを葬るだけ。腰に差していた対モンスター用のナイフを手に持ち、勢いよく投げると、それはしっかりとオークの頭に突き刺さった。これで、討伐は完了。
またハルと交代して、受付の女性の前に立つ。
「流石に彼女の顔に傷を残すのは失礼。だから……今日のことは忘れて。今まで通りにコンテストの受付をするか、足を洗って仕事を探すか。それは自分で選んでね」
ハルは彼女にそれだけ伝えて、出口から帰った。
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