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第39話 市民を救った討伐者

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《討伐後 死体付近にて》


 気付いたら、スルトが死んでいた。


 途中で奴に殴られたせいで気を失っていたから、何があったかはよく覚えていない。ただ、横にはあのスルトの死体があった。しかも何故か、スルトの持つ剣がスルトの心臓に刺さっている。死因は心臓への刺傷だろうけど.......何でスルトの剣が刺さっているんだ。


 これくらいの大剣を持ち上げられる人間なんてそもそも存在しない。スルトの死亡を願った別のモンスター.......もありえない。同じような巨人シリーズなら分かるけども、人間を目の前にして巨人同士で争うような真似はしないはず。仮にも上級モンスターだし、獲物を奪い合うような頭の悪い行為はしないと考えられる。


 だとしたら、スルトが自分で刺した? 


 考えられるのは、それしかない。どんなに俺に怪力の能力があったって、そもそも燃え盛る炎の剣に触れることはできない。手を見ても焦げた様子とかはない。顔や足から血が出ているくらいで、目立った火傷は今のところ確認できない。


「何が起きた?」


 どうやらジャッカルも何が起きたか分かっていない様子。俺が気絶している間に、体を動かしていた人はいないのか。だとしたら、4人とも気絶していたというのか。ダメだ、体の構造がよく理解できない。とにかく、スルトは死んだ。


 東地区のモンスターが討伐されていくのを見るに、都市もスルトの討伐を確認したんだろう。まぁ、図体のデカい巨人が倒れたら誰だって分かるか。ただ、バルパーの一部分の破壊を許してしまった。広場や武器屋がスルトの攻撃のせいで燃えていた。現状は.......どうしようもない。消防隊が来るのを待つのみ。


「北地区で討伐者が苦戦している。ボクたちも助けに行こう」


 改めて感覚を研ぎ澄ませてみると、北地区にモンスターが集中していたことが判明した。というか、北地区以外のモンスター討伐は完了している。体力的には余裕だ、俺たちも助けに行こう。そのついでに、後で城にでも寄っておこう。


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 北地区に集中していたモンスター、ゴブリンとスケルトンとオークの計11体を討伐してから、俺はディブル城へ向かった。色々と謝りたいこともあるし。ただ、王を脅したのは俺じゃなくて、ジャッカルだ。だからジャッカルに謝りに行かせることにした。


 また別の窓を突き破って部屋に侵入すると、何故か大勢の人で賑わっていた。皆、対モンスター用の剣と盾を持っている。何なら知っている人もいる、昔エボリュード時代に関わったことのある討伐者仲間だ。もしかして.......都市が応援を頼んだ?


「おお.......黒ずくめの勇者だ」


 ジャッカルに声をかけたのは、他でもなく王の側近。窓を突き破ってきた仮面の男に声をかける人なんて限られているしな。それで、色々と尋ねたいことがあるけれども、王はどこなんだ。というか、何だよその呼び方。


「スルトは自害の道を選んだようですが、スルトに立ち向かって市民を救ったのは事実です。討伐支援金を全てお贈りいたします」


 スルトは自害したことになっているのか、まぁ実際そうだけど。しかも王を脅したのに、討伐支援金は全て貰えるのか。結果的に市民を救ったとはいえ、王を脅したのは事実だから、何かしらの罰を受けるのかと思っていた。


「.......いや、必要ない」


 ジャッカルは意外な言葉を口にしていた。彼に遠慮という言葉は備わっていたのか。何か、失礼だけど感動した。ぶっちゃけ、金はそこまで必要ない。もう少ししたら遠い地へ移動するし。それよりもバルパーとバーンズ村の復興に金を使ってほしい。


「それよりも王に会いたい。彼は?」


「王はただ今、地下室で体を休めております」


 その言葉を聞いたジャッカルは窓の外に出て、ワイヤーも何も使わずに下の方へ降りていった。小型ナイフと粘着力のあるブーツを使って、器用に壁に張り付きながら降りていく。というか、ただのブーツにこんな能力もあったのかよ。初めて知った。


「.......前にも言ったはずだ、俺はお前と違って用意周到だと」


 用意周到と自称する男は、地下室へ向かった。何故こんなにもディブル城の仕組みを理解しているんだ.......と思ったが、彼は前にディブル城を爆破していた。その時に調べたんだろうな、用意周到だから。それにしても、何で王は地下なんかにいるんだ。


「自分だけ逃げようとしたんだろ、ここには地下通路がある。王が通った形跡もあるな」


 地下通路は長いこと使われていなかったんだろう。何となく感覚から察することができる。でも、王はここを通ってどこかに逃げた。それも感覚で分かることだけど.......よりによって、何で南地区方面に向かったんだ。南側にはスルトがいるのに。


「それは、本人に聞いてみたら分かることだ」


 そう言って、ジャッカルは地下通路を駆け出した。王の足跡と感覚を頼りに、迷路のような地下通路をノンストップで走る。障害物があればジャンプして避け、逆に行き止まりがあっても突き破って進んだ。


 そして、王は見つかった。


 どうしてか、王はスルトの死体近くにいた。消防隊が火を消す横で、それを黙って見ていたのだ。側近にも兵士にも何も言わずに、何でこっそりここまで来ているんだ。バルパーを守るのが仕事なのに、どうしてこんな危険なところまで来ているんだ。


「.......ひっ、殺さないでくれ」


 ジャッカルの姿を見た王は慌てふためき、瓦礫の近くに身を潜めた。どちらにせよ、感覚を持っているから意味ないが。抵抗虚しく見つかった王は、自分が殺されると思っていたんだろう。だからジャッカルがちゃんと事情を説明して、誤解を解いてあげた。


「俺はお前を殺しに来たんじゃない。謝りに来た。さっきは脅してしまって、申し訳ない。前の事件もだ」


 事情を理解した王は、そこら辺の瓦礫に腰をかけて、とあることを話し始めた。


「私はスルトを甘く見ていた。まさかこんな大惨事にまで発展するとは思ってもいなかった。私の首が飛ぶのも承知だ.......君は何がしたい?」


 君は何がしたい.......って、答えるのが難しいな。聞かれているのはジャッカルだけど、俺が答えるにしても結構悩むことになりそう。さて、ジャッカルは何て答えるんだ。まぁ、大体分かるけど。心は繋がっているからな.......変な意味じゃなくて。


「.......決まっている。モンスターを絶滅させて、家族を救って、医者になる。本気だ」


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