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第32話 サイレン

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♢MORE THAN 10 YEARS AGO(数十年前)


『フィン村とブルヴェト村におけるスルトの攻撃から、炎の巨人の生態を考察』

著者:アイ・デストロイド、ヴィーザル・ギムレー


 フィン村とブルヴェト村の人口は合わせて52人、その全員が死亡した。遺体で発見されたのは50人、残り2人の遺体は、そもそも発見されなかった。(中略)スルトの持つ燃え盛る大剣・フレイアは、2つの村を消滅させた。家屋は燃えて散っていき、井戸の水は蒸発した。その上、周りの森まで燃えていた。


 剣を突き刺したスルトは、それに満足したのかどこかへ去っていった。スルトの行方は誰も知らない、そもそも目撃者は全員亡くなったから。足跡を追ったものの森の中で途絶えていた。スルトは15m級の燃え盛る巨人であり、そう簡単に見失うとは思えない。


 しかし、スルトの姿を目撃した住民は全員燃えてしまった。


 だからこそ、フィンブルヴェト調査団の私達は、今後もスルトについて調査する必要がある。(中略)生態を解き明かし、次なる被害者を出さないためにも力を尽くす。フィン村とブルヴェト村は、都市・マークに属するが(中略)これからも調査し続ける。


 参考文献

『モンスターとは』(XXXX)マイケル・ジャックマン

『上級モンスターの生態を探る』(XXXX)ヘンリー・ポートマン

『新制度、討伐パーティーとは』(XXXX)クリス・エルフマン


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♢PRESENT DAY(現在)


 スルト、かよ。よりによって、スルトかよ。こんな時に、何の装備も持っていない時にスルトが来るなんて、どうしたらいいんだよ。武器を購入しようにも金がない。持っている武器といったら、ジャッカルが暗殺用に使っていたワイヤーとかナイフくらい。どれも上級モンスターには効かない。


 ビーーーーーーー!


 どこからかサイレンの音が鳴り響く。これは、上級モンスターが都市を襲いに来たときに鳴るもの。上級モンスターは基本的に森の中で暮らしている。わざわざ人間を襲いに来るなんてことはしない。森の近くにある村や、森に入ってきた人間を襲うことはあるけど、こういった平原にある都市を襲うようなマネは……普通しない。


 討伐パーティーとして、討伐者として戦ってきた俺だから言えることがある、こんなことは滅多にない。それに想定もしていなかった。都市に上級モンスターが襲ってくるなんて、しかもよりによってスルトだ。上級モンスターの中でも強い奴。


「逃げろ逃げろ!」

「サイレンなんて初めて聞いたぞ」

「どこに逃げればいいんだよ」


 周りの人達は逃げ惑っているが、どこに逃げたらいいのか分からずに、ただその辺を走り回っている。そうだよ、避難場所を指し示してくれないと、皆どこに逃げたらいいか分からずに戸惑うしかない。ということは、都市の役所の方も想定外と戸惑っているのか。


「エルド……全方向からゴブリンとオークとスケルトンが来ている。バルパーはモンスターに囲まれた」


 ジャッカルはそんな恐ろしいことを口にした。彼は感覚を頼りに、近くの状況を把握している。彼の言うことが本当かどうか、俺も路地裏から屋根の上に登って確認してみたが……状況は思った以上に恐ろしいことになっていた。


 17mくらいの燃え盛る巨人が、大剣を持ってゆっくりとこちらの方へ向かって来ている。まだ奴は向こうに見える丘を越えたばかりで、ここからは何kmも離れているが……いずれ到着する。


 スルトに先駆けて、他のモンスターがバルパーを囲っている。円状に、どこからも逃げられないように。構成するモンスターはスケルトン、ゴブリン、上級モンスターのオーク。これは、バーンズ村を襲った大群と同じ構成だ。


 まずい、どうにかしないと……バーンズ村の悲劇と同じようなことが起きてしまう。スルトがバルパーに到着した瞬間、前と同じように一気に燃え広がって、家もろとも全て消滅してしまう。だからどうにかして、スルトの到来を阻止しないと。


 それをするにも、まずは住民を逃がす必要がある。しかし、統制は取れていない。皆各々、バラバラな方向に逃げ回っている。家の中に閉じこもる人もいれば、水を被って走り回る人もいる。モンスターが村を囲っているせいで、住民を外に逃がすことすらできない。


「やるべき事は3つ、周りのモンスターを討伐する。そして住民の避難を完了させる。最後に……因縁のスルトを討伐する。さて、何からする?」とハルが発した。


 そう、全部俺たちで何とかしなきゃいけない。役所の人たちは機能していない、何せ想定外の事態だから。マニュアルも機能していないんだろう、そもそもマニュアルが機能しているところなんて見たことないけど。


「人を一箇所に集めろ。そうすればモンスターはそこを襲うだろ、村を囲っているモンスターを一箇所に誘導すればいい」


 人間を囮として使う作戦を考案したのはジャッカル、そう簡単に「一箇所に集めろ」とか言うけど、どこにどう集めたらいいんだ。今もなお、皆パニックに陥っていて誰も指示とか出さない。指示したところで聞いてくれるのかも怪しい。


「俺に体を渡せ。モンスター討伐はお前に任せるが、それ以外のことは俺たちでやる」


 ジャッカルは無理やり俺から制御権を奪い、武器屋の方へ向かった。武器屋の近くに人は誰もいないが、どうやら彼からしたら好都合だったみたいで笑みを浮かべている。もしかして……武器を盗むのか?


「それ以外方法は無いだろ。臨時的に物を借りるだけだ。さて、スルトに効く武器は何だ?」


 物を借りるにも金がかかるはずだけど……今は仕方ない。ジャッカルの言う通りだ。武器を奪って討伐に向かった方が良い、何もしないよりマシだ。


 それで、上級モンスターに効く武器は少々高めだ。その分、攻撃力が他の武器と比べて段違いに高くなっている。金色に輝く持ち手が目印の大剣"ゴルデラ"や、二刀流で誰よりも素早く斬る短剣"ペルセウス"がある。これ以上は個人の好みによるが、俺はちょうどいい長さの"ネクロ"を使っていた。それがスルトに通用するかは別として。


 盾は店の中で1番高級な物にした。鎧も身につけたかったが、それはジャッカルが止めた。


「鎧なんて着けたら動きが制限される」と。


 鎧を着けずに上級モンスターの攻撃を一発でも食らったら死ぬって……そんな基礎的なことも分かっていないのか。どんなに身軽な動きができても、一発でも食らえば死ぬんだぞ。


「分かっていないな。俺たちは並外れた力の持ち主だ。普通の人間じゃないから、鎧は必要ない」


 現在、体を動かしているのはジャッカルだ。だからある程度のことは彼に従わないといけない。並外れた力、その全貌を理解している人なんているのか。俺は分からないけど、ハルやネオルなら分かるのか。


「そんなことは置いとけ。今は避難誘導が先だ!」


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