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第27話 依頼人の謎

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 暗殺者であるジャッカルは暗殺の依頼を受けており、セントリーの隣の国・ストーズの王を殺そうとしている。当たり前だが、それは阻止したい。もう既に遅いけど、犯罪者にはなりたくない。


 それで俺は、バーンズ村を襲ったモンスターの大群を討伐したい。それが俺にできる唯一の選択肢なのだから。殺された人々は帰ってこない、でもやられっぱなしだったら被害者の心は休まらない。ならば、俺がそのモンスターらを討伐して、一刻も早く安らぎを与えないと。


「うんうん、そうだね。君は仮にもバーンズ村の討伐者。バーンズ村を救えなかったのは事実、だからこそ、残された彼女を救おう」


 ハルは俺の意見を尊重し、一緒にバーンズ村を襲ったモンスターを討伐しようと言ってくれた。ネオルは何も言わないが……すぐに反論してきたのはジャッカルだった。


「モンスターは良くて、人間はダメなのか?」


 モンスターを討伐、人間を襲う害悪なモンスターはどうしても殺すしかない。捕まえても脱走し、更なる二次被害に繋がる可能性だってある。ジャッカルの言いたいことも分かる。でも人間を殺してはいけないという法律はあるけど、モンスターの方は無い。むしろ推奨されている。


「ストーズの王も害悪な生物だ。スパイを送り込んで、セントリーを乗っ取ろうとしている。見ただろ、治安兵士の奴らがお前の患者を殺したぞ。バーンズ村の若い奴らも奴隷となって無理やり働かされている。王を殺せば、止まる」


 ……人間もモンスターも同じ生物だ。それは本当にそう、何も間違っていない。だけど、そのモンスターは俺から家族を奪った。バーンズ村と集落を襲った。討伐者パーティー・エボリュードとして活動していた時、何度も何度もモンスターと対峙してきたから分かる。


 あいつらは存在してはいけない生物だ、他の種を襲って踏み付ける。モンスターが存在していたら、やがて人間が滅ぶ。その前に何かしらの対策を行わないと。そんな寝言みたいなことを言っていても、モンスターは滅ばないし人間は襲われていく。


「人間もそうだろ、他の種を破壊する生物だ。家族を失った恨みだけで、モンスターに報復するのは正しい行いか? お前が強ければバーンズ村が襲われることはなかった。お前の家族が死ぬこともなかった」


 ジャッカルの言葉を聞いた瞬間、俺は無意識に目の前のグラスを拳で叩き割っていた。血が飛び散っても止めずに、何度も何度も粉々になったグラスを叩き続けていた。狂ったように、ただ一心不乱に。


 気付いた時には遅い、右手にはグラスの破片がびっしりと刺さっていた。血も飛び散っているし、鋭い痛みも感じる。でも、ジャッカルの罵倒は止まらない。グラスを割ったところで、そのグラスの破片からジャッカルの姿が見えるから。


「そうやって逃げるのか。弱者に体を預けたのが失敗だった。俺に体を渡せ。お前の代わりにモンスターを討伐して来てやる。そのついでにストーズの王も暗殺し、治安兵士を1匹残らず破壊してやる」


 そう言ってジャッカルは、俺の体の制御権を奪おうとしてきた。体の感覚が薄くなり、右手の痛みの感覚が分からなくなっていく。目も鼻も口も開かなくなる、歯を食い縛ろうにも感覚が薄いせいで何もできない。抵抗しようにも、ただ机の近くで1人で暴れるだけになってしまう。


「喧嘩は止めて、僕の話を聞いて」


 ネオルの鶴の一声で、ジャッカルは制御を奪うのを止めた。俺の感覚は元通りになり、一気に右手の痛みが鋭くなっていった。あまりの激痛に声を出しそうになったが、それは堪えた。ネオルが何かを提案する時は、大体重要なことが多いから。


「ジャッカル、君は暗殺者だ。でも任務に縛られすぎている。何のためにストーズの王を暗殺する? 報酬のため、個人的な恨みのため、暇つぶしのため、それとも何の考えもない?」


「俺は暗殺者だ。報酬など関係ない、俺は暗殺をするために生まれてきた者だから」


「でも君は完全な人間じゃない、僕たちも。とある1人が病んで生み出した架空の人物だ。暗殺者の君もその1人……話を戻そう。ストーズの王が殺されたら、彼は暗殺の被害者になる。そうなると罪を裁きにくくなる」


 ネオルの言う通り、ストーズの王が暗殺されたら、世界中から讃える言葉が来るだろう。例えその王が酷いことをしていたとしても、過去の悪事は無かったことにされる可能性もある。それに統率者を失った部下が、統率力の無さから暴走する可能性もある。モンスター界でもよくある現象だ。


「それなら、治安兵士の上層部とストーズの王を国際的な裁判にかける。証拠を集めて国際検察集団に送れば、調査してくれるはず」


「いいや、依頼の内容から外れているだろ。依頼人の望む通りに暗殺を遂行させてやる」


「……ちょっと待って、ジャッカル。君は依頼人と会って話したことはあるの?」


「……ある。前にポリスタットの中心部で手紙を受け取った……あまり覚えていないけどな」


 ジャッカルの行動には疑問点が多すぎる。暗殺者とはいえ、何故そこまで他人のために頑張れるんだ、努力の方向性が違うけど。それに会ったこともない人だ、そもそも信ぴょう性が無い。なのに……何で。


 ここでハルが、とある提案をした。


「ジャッカル、暗殺の前にやることがある。依頼人を調査しよう。依頼人がどういう人なのか調べて、そこから暗殺するかどうか決めてくれ」


「……分かった。俺も疑問に思っていたからな。で、どうするんだ?」


「まずはバーンズ村を襲ったモンスターを討伐しよう。モンスターを大量に討伐すればある程度の金が手に入る。それでポリスタットに向かって依頼人の調査。回りくどいけど、2人の目標を難なくこなせるし、ボクらにもメリットがある」


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