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第25話 バーンズ村の滅亡

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 夜、真っ暗なせいで彼女の顔は見えにくいが……それでも鼓動音で分かる。彼女は本当のことを言っている。比喩とかじゃなくて、本気の話だ。この妙な胸騒ぎの正体はこれか。


「もう一度言いましょうか、バーンズ村は……貴方のせいで滅んだんですよ!」


 彼女は泣き叫び、その場にうずくまった。こういう時、いつもの俺なら相手の気持ちに寄り添って、背中をさすって話を聞くことができるのに……今の俺にはできない。理由は自分でも分かるし分からない。そもそもバーンズ村が滅んだってどういうことだよ。


 たった2日間、村から居なくなっていただけだ。確かに誰にも言わなかったけれども……いや、それは嘘だ。この村に若い人は1人しかいない、それもルイさんだけ。モンスターに太刀打ちできるのは俺だけ、なのにその俺は無断でどこかへ行った。


 ああ、なんて無責任なことを俺はしたんだ。


 ジャッカルのせいとかじゃない。この二面性が原因でもあるけど、それと同時に俺の心が弱かったからこうなった。もう少し強ければ、そもそもこんなことは起こらなかった。モンスターとか関係ない、全ての元凶は俺だ。俺のせいで、大切な村が。


「言い訳も無しですか。なぐさめもしないし、ただ突っ立ってるだけなんですね。最初から村を助けるつもりなんて無かったでしょ」


 ……いいや、それはあった。のか。モンスターを討伐したいだけだったのかも。


「結局、私たちを見捨てて? モンスターを倒すのが仕事でしょう。なのに私たちに迷惑をかけるだけかけて、そのままどこか消えて……人間として有り得ない」


 ……否定できない。


「おばあちゃんも、マラヤさんもハラさんも、足が不自由な人も皆モンスターに殺された。何でだと思う? 貴方を探したから」


 ……そんなことが。


「お父さんだって、村長として村を守ったけど殺された。私を庇って! 私は生きているけど、皆死んだ!」


 ……どうすれば。


「結局……結局貴方も無責任な人間だった! 出稼ぎに行った男も貴方も皆、無責任に自分の都合で勝手にいなくなる! こんなことになるのなら大人しく討伐者を雇えばよかった。私が助けられなかったら.......あの時そのままゴブリンに--ってたら」


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「ハルさん?」


「まずいッ」


 ボコッ……


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「……ハルさん?」


 ここで俺は急に目が覚めた。何故だか右の頬がもの凄く痛い。右手首の傷は完璧じゃないものの修復されており、痛みもなく簡単に動かせるようになっていた。あの時、何が起きたんだ。夜、ルイさんの家の前で怒られたと思ったら、急に目の前が真っ白になって……そのまま倒れて……どうしたんだっけ。


 俺は今、ボロボロのベッドに横たわっている。というか、今いる家がルイさんの家か。ボロボロになっていて全然分からなかった。ガラスの破片は飛び散っているし、本棚も損壊していて機能していない。


 いや、待て。


 記憶が混沌としていて上手く思い出せないが、ゴブリンの王であるゴルゴリがバーンズ村を襲撃し、村の住民は全員近くの集落に移ったんじゃなかったのか。この有様は、前のゴブリン襲来時に壊された物だと思うが……だとしたら、何でルイさんはここにいたんだ。


「……状況は全てハルさんから聞いた」


 枕元に立っていたルイさんは、俺を睨むようにして声をかけた。察知能力が薄れてきているのか、すぐ近くに人が立っているのに全く気付かなかった。人の鼓動音から何となく位置を分析できていたのに、何で今は……あれ、ルイさんは何でハルの名前を知っているんだ。


「ボクが全て彼女に教えた」


 枕元に置いてあるグラスに反射して、自分の顔が見える。でも、本当にそこにいるのはハル。いつもは気まぐれな感じの目をしているハルが、今ではキリッとした目をしている。


「本人の口から聞きたかっただろうけど、これ以上君を病ませる訳にはいかない」


 ルイさんと話をしたかったが、彼女はいつも以上に険しい目をしていて、話しかけられなかった。彼女はハルから事情を聞いたんだろう。それはどこまで言ったんだ。中に複数の魂が入っていることか、それともジャッカルの存在までか。


「ほぼ全て。ジャッカルが彼女と性行為をし、そのまま治安兵士リーダーの暗殺へと向かったこと。そして逃げる最中に人を殴ったこととかも」


 ……予想通りだったけど、やっぱりジャッカルはヤッていたのか。予想通りだったけど……何なんだよアイツは。どういう思考でこんなことができるんだよ。


 治安兵士のリーダーの暗殺へ行ったのも、依頼だからとかじゃなく単純に狂ってる。それでいてアイツは俺たちの制止を振り切って、治安兵士のリーダーを殺害した。普通の人間じゃないにしても、こんな奴が俺の中にいるなんて……早めに対処しておかないと大変なことになる。


「幸い、ジャッカルはマルチ・パーソンズ・ディメンションで大人しく寝ている。気絶している……と表現した方が正しいのかな。ひとまず、話を整理した方がいい。ボクとネオルだけじゃなく、エルドも」


 マルチ・パーソンズ・ディメンションって何だ? 文脈から察するに、体の制御を他の誰かがやっている間に存在する、真っ白で何もない空間のことなんだろう。誰かがガラスやナイフといった反射性の物質を出さないと外の世界の様子が確認できない、あの空間。


 とりあえず、ルイさんと話さないと。


 ほぼ全ての情報をハルが話してくれたとはいえ、俺の口から謝罪の言葉を発さないと意味がない。俺がなんだろうが、色々な人に迷惑をかけた。迷惑をかけた……という言葉じゃ済まないほどに。


「本当にすみませんでした」


 俺は体を起こし、横に立っているルイさんの方に向かって深く頭を下げた。


「そんな言葉で許されると思いますか。もう謝らないでください、何を言われてもみんな帰ってこないので」


 彼女の言う通りだ、俺は取り返しのつかないことをした。どんなにジャッカルを言い訳のタネにしても、本質的な俺の行動が招いたのは事実だ。変えられない事実、どうしようもない。


「……元気になったら、外に来てください」


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