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第24話 人間の限度

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「さて、ここからどうする?」


 地下都市から脱出し、今は近くの森の中にいる。ここなら治安兵士にも見つからないだろう。森はモンスターが湧く呪われた場所と教えられてきた。開拓された地なら別だが……ここに好んで入る者はいないだろう。


 幸いにもモンスターが湧いていない。森にいるのはスケルトンかゴブリンかオークくらいだから、本気を出せば素手でも倒せるが、そこまでの気力は残っていない。何せ仲間の遺体を見たばかりだからな。でも、ハルは頑なに体の制御を交代しようとしない。彼なりの考えがあるんだろう。


「地下都市には戻れないな〜。少しすれば治安兵士による捜査が始まるし、何ならここも危ない。早くツェッペリンから離れないと」


 ジャッカルは寝ているため、ネオルと俺とハルの3人で今後について話し合っている。体を動かしているのはハルで、彼は何か使えるものがないかどうか、ジャッカルの使っていた道具を物色している。


 ここでジャッカルを起こすようなことはしない、何故なら彼は次の標的を暗殺しに行く可能性があるから。このまま眠らせておく方がいい。下手に起爆すると恐ろしいことになる……というのは、ここ3人の共通認識。


「治癒能力も素晴らしいね、人間の限度を超えている」


 右手首の撃たれた痕は、不思議なことに完治していた。さっきまで血が垂れていたのに。というか鉄砲で撃たれた傷だ、何なら弾が手首を貫通した。それにしては早すぎる、痛みの割に合わない早さだ。これも俺たち特有の能力の一部か。


「ネオルの家は残ってる?」


「……そもそもツェッペリンだし……もう何年も帰ってないし」


 ネオルの人生はジャッカルによって狂わされた。彼には家族もいたのに、気付いたら暗殺者に体を奪われていて……考えるだけでも恐ろしい。ハルの考えとして、ネオルの家に助けを求めようとしたんだろう。でもネオル自体、家に帰ったことはないと。


 ネオルはさっきも司令塔として頭の中にずっと居たが、彼が最後に外に出たのはいつなんだろう。戦闘時には俺とジャッカルが、記憶を消す作業の時や今はハルが体を動かしているが、ネオルが制御側に回った瞬間なんて見たことない。


「よし、エルドの家はどこ?」


「一応、ガーディア近くのバーンズ村で討伐者として活動していた。けど帰っていな----」


「決まりだ、バーンズ村に行こう」


 ハルは話し合いもせず、勝手に目的地をバーンズ村に決めた。バーンズ村、ルイさん、色々と迷惑をかけたな。ジャッカルのせいというのもあるけど、それとは関係なくゴブリンの件では色々な迷惑をかけてしまった。俺があの時ゴブリンを完全に討伐しておけば、ルイさんが襲われることなんてなかった。


 バーンズ村からツェッペリンまで、普通に歩いていったら数日もかかる。ジャッカルは俺の体を使ってルイさんを押し倒して、最低な行動を取った。あの時の弁明がしたいし話したいこともあるから、いつかは村に戻る予定ではいたけど……会っていいのか分からない。


 言葉で説明するのも難しい。どうやったらいいんだ。「俺の体には4人の魂が宿っていて、前にルイさんを押し倒したのは暗殺者で……」って、それだと余計に彼女を驚かすことになる。治安兵士のリーダーを殺したのもアイツだ、説明すればするほど、俺の方が分からなくなってきそうだ。


 それで、何でハルはバーンズ村に行きたいんだ。


「確実な逃げ場を確保したい。僕の故郷は見ての通り、ジャッカルと治安兵士にズタズタにされた。ネオルの家はツェッペリンで、治安兵士に狙われる可能性もある。それなら遠い田舎にあるエルドの家がいい。幸いにも良い人たちが多そうだ」


 ジャッカルは置いておいて、ハルの故郷である治安都市は治安兵士の捜索範囲内に入っている。ネオルの家がまだ残っているかどうかは分からないが、どちらにせよツェッペリンにあるため、治安兵士の捜索範囲内だと予想される。


 それに対して、バーンズ村は遠く離れているから、治安兵士の捜索隊もここまでは来れないだろう。でも……何の関係もない患者を巻き込んだ治安兵士だ。俺が行くことにより、バーンズ村の住民も襲われる可能性がある。


「バーンズ村の彼らは良い人だ、だから信用を勝ち取るんだ。治安兵士に捜索される前に信用されれば、下手に探られずに済むはず」


 それって彼らを巻き込むのとあまり大差ないんじゃないのか……とは思ったが、このまま路頭に迷うよりは良い道なのかもしれない。治安兵士に追われながら、かつジャッカルの暗殺を止めないといけないのは正直キツイ。


 でもバーンズ村なら、ストーズからもツェッペリンからもある程度離れている。しかも今は3人もいる、前みたいに簡単に体を乗っ取られることは少なくなるはずだ。


 それに、信用を勝ち取るのも大事だ。バーンズ村から追放されれば職も失い、行動するための金が尽きる。今は討伐者として必死に稼いで、バーンズ村からの信用を得つつ、この体の仕組みを解明しないといけない……ただ、妙な胸騒ぎがする。


「決まりだ、先を急ごう」


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 バーンズ村に到着してすぐ、俺はルイさんに謝りに行った。どうやら彼女を押し倒してから2日が経っていたみたい。2日間も彼女を不安にさせていたなんて。色々と失礼な奴だ、俺は。


「……何で今更来たんですか。もう遅いですよ。誰にも何も言わずに……あの夜やるだけやって捨てて……そりゃ……もう」


 返す言葉も思い浮かばない。あの夜、ジャッカルは彼女に最低なことをしたんだろう。それは口に出さなくても何となく分かる。でも彼女からしたら、やったのは俺だ。中の人が違おうとも、外見は全く同じ。だから責任は俺にある……けれども、どう説明すれば。


 そう考えていると突然、ルイさんが衝撃的な言葉を発した。


「……貴方のせいで……貴方のせいで、バーンズ村は滅んだんですよ!」


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