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第14話 戦いの後の休日

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 病院専用の洗剤を使ってゴブリンの血を洗い流し、病院から借りた白い服に着替えた俺は、怪我をしたが元気なルイさんと共に喫茶店を訪れた。彼女はゴブリンに頭を殴られたらしいが、それにしては病院に置かれてある果実をバクバクと食べていた。どうやら急所は外れたみたい。


 喫茶店というのは文字通り、茶を嗜むための場所。しかし茶というのは珍しい物で手に入りにくいため、別の飲み物の方が多く提供されている。例えば、コーヒーと呼ばれる黒くて渋みを感じられる物だったり、コーヒーと牛から取れるミルクを混ぜて作る物だったり。俺はコーヒーが苦手だから両方とも飲まないが。


 今いるのは、都市・バルパーの中でも南東の方にある地区だ。エボリュードで活動していた時は中心部にある王の住処近くで認定士とやり取りしていたから、あまり来たことがなかったな。武器屋にちょっと寄ったくらい。


 彼女はコーヒーを、俺は茶に近い味が特徴的なリョクチャを頼み、そこで一息ついた。さっきまで全速力で走ってきて、ぶっちゃけ死ぬほど辛い思いをしてきたはずなのだが、少し休憩するだけでまた元の状態に戻った。何ならまた走れそうな気もする。


「ところで村長さんは?」


「モンスター被害届を提出しに行ったはずです」


 モンスター被害届とは名前の通り、モンスターに被害を受けた地区・村・都市が役所に提出する書類のこと。提出すれば補助金が下り、村を再建することが可能になる。しかし取り決めがとても厳しいらしく、守らなかったら罰として金を没収されることも。


「ここは見晴らしがいいですね」と彼女はコーヒーを飲みながら微笑んでいる。


 バルパーの端の方にある店だが、ここからはバルパーを統治する王の住処である大きな城が見える。白いレンガで建てられた「如何にも」といった城。他の都市は高い塔とかに暮らしているみたいだが、うちの王だけ城にこだわっているらしい。まぁ、見ていて美しいけど。


 テラス席でそよ風に吹かれながら飲むリョクチャは美味い。この喫茶店に来たのも初めてだが、そもそも喫茶店という店を日常的に利用しないため、リョクチャというものを飲んだことがない。ただ、この店に置いてあるのはコーヒー系かリョクチャだけと書いてあったからリョクチャを選んだ、それだけの理由だ。


「ところで、エルドさんは過去にどんなお仕事をやっていたんですか?」


 ……禁断の質問だ。あまり昔のことは言いたくない。昔と言っても2週間くらい前のことだが。仲間から「必要ない」と言われて追放されたなんて言いたくないが……彼女はこれからもお世話になる人だ。そんな人に嘘なんか付きたくない。


 だからありのままを伝えた。2週間前に「必要ない」と言われて討伐パーティー・エボリュードを追放されたことから、職業を探そうと歩いていたらゴブリンに襲われている彼女を見つけたところまで。本当ならネオルのことも教えたいが、これはまだ自分の中でケジメがついていないためまだ教えられない。


「急すぎますよね。今まで頑張ってきたのに『必要ない』とか言われて追放されるのって。それに私はエルドさんのこと、必要だと思っていますからね! エルドさんがいなかったら、あの村は滅んでましたよ」


 彼女と出会ってからまだ2週間しか経っていないが、俺は彼女に救われた気がする。俺が足を怪我した彼女を助けてゴブリンを討伐して村を救ったように、彼女は思い悩んでいる俺に労いの言葉をかけて、俺を立ち直らせてくれた。たった一言で、人はここまで心をう----




 ドォン!




 突然、爆発音のような巨大な音が背後から聞こえた。急いで振り返って見てみると、遠くの方にそびえ立つ、王の暮らす城が爆発していた。黒煙を上げて燃えている上、何度も何度も小さな爆発が起こっている。赤い特徴的な屋根は粉々に破壊され、美しかったフォルムも爆発のせいで台無しになっている。


「待って、おばあさんが----」


 ルイさんの叫ぶ声が聞こえたと同時に、俺は気を失った。


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 目を覚ますと、俺は何故か武装した兵士に囲まれていた。皆重そうな鎧を着て、何でも貫けそうな槍を持って俺の方に詰め寄ってきている。


 何だ、何が起きたんだ。


 自分の手のひらを見てみると、そこには真っ赤な血がベッタリと付いていた。それと……俺は何故か黒ずくめの服を着ている。さっきまで、病院で借りた普通の白い服を着ていたはずなのに。


 足元には赤い血まみれの剣、左の方には切られた人間の死体が転がっている。もしかして、これ全部……俺がやったのか。さっきまでルイさんと一緒に喫茶店でゆっくりしていたはずなのに。爆発音が鳴ってから記憶がない。


「剣を捨てて今すぐ投降しろ!」


 槍を持った屈強な男達はジリジリと距離を詰めてくる。何がどうなっているんだ。暗くて見えにくいが、高級そうなカーペットが敷き詰められている。高級そうな絵画も壁に掛けられているし、よく見たら壁も屋根も高級そうな素材で造られている。ここは……もしや?




「今すぐ窓から逃げろ」




 突然、頭の中に男の怒鳴り声が響き渡った。この声は、俺の声にそっくりだ。ネオルか、それにしては声がいつもより怖いし強い。ネオルなら教えてほしい、これが今どういった状況なのか。どうして俺はこんな所で人を殺しているんだ。もしや夢なのか?




「俺はネオルじゃない」


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