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第1話 エボリュード、追放

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「……エルド・ミラー、君はもうこのパーティーから去ってもらおう」


 突如、俺はそう告げられた。害悪なモンスターを討伐するためだけのパーティー・エボリュードのリーダー、ガイドから。それもいつもと違って冷酷な目で。


 俺たちはエボリュードという名の討伐パーティーで活動をしていた。セントリーという国の北の方にある都市・バルパーで最も知名度の高いパーティーと言ってもあながち間違ってないだろう。4人組で女2、男2人の変わったパーティーだ。


 この場には全員揃っており、金髪のシルバ、赤髪のレドルラ、そしてリーダーのガイドが目の前に立っている。「重要な話があるから」と言って呼び出されたが、まさか俺の今後の処遇についての話だったとは。


「お前はもうこのパーティーには必要ない、理由は……実力不足だからだ。俺たちのパーティーには強者しか求めていないからな」とガイドは、俺の目の前で厳しい口調でそう言った。


 この世界にはモンスターと呼ばれる、それは奇妙で怖い存在が何万体も存在する。人を襲う者もいれば襲わない者もいると様々だが、襲ってくる者の方が多い。汚い格好をして棍棒を持って人を襲う緑のゴブリンや、人間より一回りも二回りも大きいオーク、骨だけで体が構成されているスケルトンなどが代表格だろう。


 セントリーはそう言ったモンスターによる被害を避けるために、討伐パーティーという職を作った。俺は1人でフリーとして活動していたが、このエボリュードに勧誘され、今までは4人で頑張ってきたはずなのだが……なんで俺がクビにならなきゃいけないんだ。


 確かに俺以外の3人は素晴らしい。身体能力が長けていたり賢いため、単独でも上級モンスターを討伐することができる。俺はあまり頭が良くないから、作戦を考えることなんて苦手なんだ。


「南の方にこっちよりも凄い討伐パーティーがある。今のままだとエボリュードはそいつらに負ける。だから人数を増やしつつ、邪魔者は消すことにした。で……あんたは邪魔」と、金髪のシルバは俺に対して冷酷な目で話しかけてくる。


 言い忘れていたが、ここはエボリュードの拠点であるボロい借家。モンスターを討伐しても高額な利益は得られないから……と安い家を借りてそこに拠点を置いて活動している。皆は家は別にあるのだが、俺だけは無いためここで暮らしている。


 で、話を戻すと……俺は俺なりに今まで頑張って活動してきたはずだ。馬鹿なりに力技でモンスターを討伐してきた。それなのに急に追放するなんて、正直どうかしている。忠告も無かった、例えば「今のままではダメだ」とか言ってくれれば、俺なりに変わることが出来た。人のせいにする訳ではないけど……もう少し早めに言ってほしい。


 俺にだって生活がかかっているんだ。俺の実家は既にモンスターによって燃やされた。上級モンスターの炎の巨人・スルトが俺の暮らす小さな村を燃やしたんだ、だから俺はモンスターに対する恨みを晴らすために討伐パーティーに入った。とにかく、また俺の家が無くなる。俺はどこに行けばいいんだ。


「残念……あなたはもうエボリュードのメンバーじゃない。それにポリスタットやシティストと違って、ここは追放支援金が出ない。追放されても金は貰えない。だから早く出てって。荷物をまとめて」と赤髪のレドルラにもそう言われてしまった。


 一昨日、上級モンスターである巨人を討伐した時までは仲が良かった。森の中に現れた巨人を4人で協力して倒した時は、お互いにお互いをサポートしあっていた。良い関係性だった、はずなのに。特に彼女、レドルラとはパーティー関係なく。


「理由に納得できないなら言うか? お前は力不足で何にもできない……ただの必要ない存在だ。そのくせに最近は討伐のミッションがあるからとお前を呼んでも、お前は来ない。その謎の使命感があるなら、呼んだ時には来い」


 ……? 俺は討伐のミッションをサボったことはない。俺に他の予定などないから、体調が絶望的に悪い時以外は必ず向かっている。もう一度言う、俺はサボったことはない。だって俺がサボることによって、俺の実家みたいに滅ぶ場所が出てくるかもしれないから。ただのゴブリンと言っても侮れないから。


「とにかく、もうお前は必要ない存在だ、モンスターみたいに。だから荷物をまとめてここから去れ、もうお前の顔なんて見たくない」


 反論する暇も荷物を取る暇もなく、俺は借家の外に押し出された。服も剣も装備も、何もかも向こうだ。もう一度入ろうとしたが、鍵をかけられてしまい入れなかった。ここまでするのかよ、普通。追放支援金が他の都市では出るくらいだから、追放という文化は日常的に行われているみたいだ。だからって、こんなに酷いのか。


 俺は俺なりに頑張ってきた。


 それなのに、急に追放させられてしまった。理由は簡単、パーティーに必要ないから。俺が力不足だから……そんなの理不尽だ。急すぎる、理不尽すぎる。今までエボリュードのために、モンスターを討伐するために頑張ってきたのに。俺はモンスターでなく、メンバーから裏切られてしまった。


 こんな理不尽、許されはしない。だが抗議することもできない。抗議している暇なんてない。ほぼ無一文の俺がこれから生活していくにはどうすればいいのか。それをまずは考えていかなきゃ。


 とにかく、追放支援金は出ない。だから自分の手でどうにかしていくしかない。エボリュード時代にお世話になった村にでも行こうか、いや、エボリュードを追放されたと言ったら追い出されそうだな。別に俺は特に悪いこともやっていないのに。


 とりあえずバルパーの中心部にでも行ってみるか。あそこなら臨時でも働けるだろう。悪い目で見られること承知で、いっその事行ってみるのもアリだ。


 俺は、独りだ。


「そんなことないさ」


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