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八人の英雄と一人の勇者  作者: 水池
第一章 目的に向かって
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第4話 「武士の国」

『武士の国』は中立国家『トロイ』の東側、大陸の最東端に位置する国だ。


国土の真ん中に国のシンボルともいえるとてつもなく大きい山がそびえている。

その山を取り囲むようにして街が作られ、山や海といった大自然の恵みを享受して発展してきた。


山の名前は『龍山・火ノ粉』。

遡ること数千年前まだ八大国が誕生していなかった時代、龍神が山に降り立った。

その龍神は全身が紅く燃え盛り、常に体中から火の粉を撒き散らしていたことからそう呼ばれるようになったのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


2ヶ月の旅路を経て俺たちは遂に『武士の国』に到着した。

移動にはもう少し時間がかかると思っていたがちょうど『トロイ』から『武士の国』へ向かうという行商人の馬車に乗せてもらったのだ。

もちろんタダでというわけにはいかないから、馬車の護衛と引き換えにだが。


『トロイ』から『武士の国』までの道はある程度整備されており行商人の行き来が盛んなのだ。

まあ、だからといって盗賊やら人攫いが出ないわけではないから護衛は必須なのだが。

今回、俺たちは馬車に乗せてもらう代わりに積荷と雇い主の命を守るという取引だったが、より高価な品物などを運ぶ時は行商組合に掛け合い、金を払えばそれ相応の護衛を用意してもらえる。


道中一度だけ盗賊に襲われたが、被害はゼロに抑えられた。

護衛は俺たち以外にも数人いて、別段強い奴はいなかった。

だが、ニーナは別だった。

『魔法師』と『精霊術師』のハーフだというからてっきり遠くからのサポートタイプかと思っていたが、大間違いだった。

短剣を使い敵陣に乗り込み、あっという間に片付けていた。

時には拳や蹴りを使い盗賊たちを圧倒する様子は今回襲ってきた有象無象よりもよっぽど盗賊だった。


その後それとなく

「魔法はお使いにならないんですね...」

と怯えながら聞いてみたところ

「ま、まあ奥の手は隠しておくもんだよ!?ていうかさっきからその敬語なんなんだよ!」

と怒鳴られた。

やっぱりニーナは何かを隠しているようだ。

まあ隠したいことの一つや二つ人間なら誰にでもあることだ、無理に暴こうとするのはよそう。

それにニーナには是非とも仲間になってほしい。

まだ流石に未来のことを話すわけにはいかないが、『武士の国』に着いたら相談してみよう。


そんなことがあって俺たちは『武士の国』に到着した。


八大国の中でも特に鎖国的な『武士の国』だ。

だが、『トロイ』とは交流を持っていた。

『武士の国』にとって『トロイ』は唯一外の世界を知るための場所であることや太古の昔世界から戦争をなくし、『トロイ』を建国した一人の若者が『武士の国』の者だったということが理由だろう。


『武士の国』への入国は思ったよりすんなり行けた。

それは俺の格好が『武士』に近いというのが大きいだろう。

『武士の国』はよそ者には冷たいが、同胞との絆は強い。

俺の刀を差している姿と父親譲りの『武士』らしい顔立ちを見て同胞と判断されたのだろう。


『トロイ』からの旅のものだ、というと目的と滞在期間を聞かれ、『武士の国』での決まりごとや気をつけることを教えられた。


オススメの宿や酒場を聞くついでに『武士の国』の現首領と『都一刀流』に会うにはどうすればいいかとそれとなく尋ねたところ

門番の彫りの深い顔立ちのドでかいおっさん武士が

「本来他国の者、しかも単なる旅の者が首領様と都一刀流様をお目にかかるなど身の程を弁えぬにも程があるが、貴様は同胞だ。それに刀の心得もあるようだ。何か首領様と都一刀流様の目につくことができたら可能性はあるかもな」

と言われた。


そりゃそうだよな。

目的は決まっててもそれを達成する手段のことは考えていなかった。

いや、考えたくなかった。

誰も助けてくれないし、何の力もない。

でも考えなければ先は見えてこない。

そしてそれが出来るのは俺だけなんだ。

ならやるしかない。


今日は疲れた。

オススメされた宿で早く休もう。

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