第二章 第5話 ある夜の事件
それからしばらくした日の夜、友達に聞いた面白い話を教えてあげようと、キャリーはアミィの部屋へ急いでいた。
彼女は邸の外で同じ年頃の友達と遊ぶことも多かったが、最近邸の中にも遊び相手が出来たことが、嬉しくて堪らなかった。
今日は外の友達と会っていたから、アミィと遊べていない。
少女はほとんどの部屋に出入りを禁じられていたので、年の離れた友達とは廊下で話すしかないのだが、寝る前の少しの時間でもアミィに会いたかった。
楽しい時間の想像にわくわくしながら三階まで階段を登って、廊下を行く男の姿を見つけて、キャリーは足を止めた。
少し長めの黒髪は、使用人のレイズだ。
今、廊下の突き当たりのアミィの部屋以外は全て空室だった。どこへ行くつもりなのか、廊下の奥へ向かって、レイズは歩いて行く。
男の背中から、子供心に不穏な空気を感じて、キャリーは階段の登り口から足を踏み出せなくなった。
扉の開く音がした。
まだ眠りに落ちていなかったアミィは、ベッドの上からゆっくりと扉に視線を向けた。
逆光にラルクではなさそうな人影を見たが、あっという間に扉は閉められ、部屋はまた暗くなった。
この部屋には鍵が付いていたのだが、部屋の鍵を渡されていなかったアミィは自分が部屋の内側にいる時さえ、鍵を閉めずに過ごしていた。
鍵を渡さないということは閉めてほしくないということだろうと感じて、その理由も理解できるので、ずっと遠慮して、閉めずに過ごしていたのだ。どのみちトーラン家側がカギを持っている以上、内側から閉めてもあまり意味がないようにも思えていた。
足音がベッドに近付いた。
恐怖はあったが、事態を把握出来ずに、アミィはじっとしていた。
体の上に人の重みがのしかかった。
痛い。
「静かにしろ。」
腹の底から響く様な、低い声が耳許でした。
アミィは弱々しくもがいたが、あっけなく押さえ込まれて、それ以上身動きも出来なかった。
訳の分からないうちに、男がアミィの服を剥ぎ取り始めた。
実の所、13歳で外を彷徨いだしてから周囲に教える者もいなかったので、アミィは男女のことをよく理解していなかった。
だが強い力で押さえつけられる恐怖と、体に触れられる気持ち悪さで、本能的に彼女は泣き叫んだ。
必死でアミィは助けを求めたが、体が弱っていると声もまともに出ないということを、彼女は初めて知った。




