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 僕は加速のギアを何段階か上げ、膨大な魔力を使ってようやく普段通りの加速状態まで持っていった。


 振り返ると、魔法使いが鍾乳洞の境目に足を踏み入れようとしているところだった。


 踏みこんだ瞬間、背後にあったはずの遺跡は虚空に消え、先ほどまで遺跡に続く道があったはずのところは鍾乳洞のどんつきに変わっていた。


 僕は走りながら、奴をどうやれば倒せるかを必死に考えていた。


 デタラメすぎる性能だ。


 見たところ、あの球が魔法使いの使い魔的なポジションらしい。魔力は魔法使いではなく、球に集約されている。あの球を破壊できれば、勝機が見えてくるかもしれない。


(でも、どうやって?)


 使い魔だとすると、物理的に破壊することは難しいだろう。あれは純粋な魔力の結晶だから。


 僕の今持っている手札で戦わなければならないとしたら――使い魔の時間を巻き戻して、吸収前の状態にするしかない。


 しかし距離の離れたところで加速することすら影響を受ける状態で、球の時間を巻き戻すことなど可能なのだろうか?


 できるとしても、膨大な魔力が必要になるのは間違いない。


 魔力量は十分だと思っていたが……ここにきて油断が仇となったか。


 ならば今すぐにでも増強をはじめなければならない。


 僕は魔法使いからある程度離れたところで魔法を解除した。


「皆、聞いてくれ」


 僕は今の思いつきを皆に話した。そして魔力をためるために時間が必要であることも。


「まずは当初の予定通り一階層まで後退する。状況によってはダンジョン外のほうがいいかもしれないから、出口近くまで行く。僕は今から魔力を増やしはじめる。もし追いつかれたら……そのときは、なんとかするしかない」


「時間を戻したあとは?」


「魔力さえ失えば、魔法使いもただの人になるはずだ。そこを皆で一気に叩く。そうじゃなかったら……お手上げだな」


 ハヤトが僕の背中を叩いた。


「悲観的になるなって! こういうときこそ、希望は必要なんだぜ」


 僕は緊張が少し解けて微笑んだ。


「そう……だな。確かにそのとおりだ」


「あの……」


 ネイがおずおずといった。


「どうした?」


「カーンさんたちのことなんですが……気になることがあって」


 三人組のことが出て、僕たちは一気にしゅんとしてしまった。


「実は私、ずっと気になっていたことがあるんです」


 彼女は言いにくそうにもじもじとしていた。


「どうした? なにかまずいことなのか?」


 はっきりしないネイに僕は言った。ネイは少しうつむいて、覚悟したように顔をあげた。


「私、ずっと疑問に思っていたんです。どうして、転生者はダンジョンから現れるんだろうって。まるで、魔物たちと同じように……」


 僕はギクリとした。


 その可能性については、見てみぬふりをしていたといったほうが正確だった。なぜ、僕たちはこの世界の人たちより強大な力を持っているのか(魔物たちのように……)。


 魔物たちは、魔法使いの魔力によって生み出されている。そしてそれは、最終的に魔法使いの養分になることが今になってわかった。意思を持っているかどうかは関係ない。魔物たちは吸収されることを恐れて、逃げ出そうとすらしていたのだ。


 ダンジョンから生み出され、人を超える力を持ち、意志もある――これは転生者たちにもそのまま当てはまる。


「つまり三人組は、殺されたのではなく吸収された、と?」


 僕はネイの話を察して尋ねた。ネイは静かにうなずく。


「今や、彼らの力は魔法使いに取り込まれて、魔法使いはさらに強大な存在になってしまったのではないかと……」


「お、おい。どういうことだよ!?」


 話の流れが読めていないハヤトがうろたえながら聞いてきたので、僕は僕たち転生者もまた養分にすぎないのではないかと話した。


「おいおい、まじかよ……」


「なるほど。それでなのか……」


 ずっと話を聞いていたアメリアが口を開いた。


「私はカーンが飲まれる瞬間まで、隣で戦っていたのだ。それなのに、彼のように吸われるような感覚はなかった。あのときは、個人を対象にしているからだと思っていたが……」


「いや、あのときは俺もヤバかった」


 ハヤトがボソリと言った。


「リンは?」


 リンは首をふる。


「あたしも大丈夫だった」


「これは、いよいよ信憑性が増してきたな」


「ていうことはなにか。俺たちは魔法使いから生まれた存在だから、魔法使いを超えることはできないってことなのか?」


 うなだれるハヤトの肩をたたいた。


「いや、そんなことはない。ないはずだ」


「どうしてそんなことが言える?」


 僕は肩をすくめた。


「トンビが鷹を産むこともある。子供だって、いつか親を超える。魔法使いに生み出されたものが、魔法使いより強くなってはならない道理はないはずだ」


 ハヤトは乾いた笑いをした。


「トンビが鷹を……ね。確かに、そうかもな」


 ほかの人たちはキョトンとしていた。そういうことわざがないのだろう。今更ながら、僕たちはこの世界の人達とは違うのだと思ったが、むしろホッとして、肩の荷が下りた気がした。


(やれるだけのことをやって、ダメだったらそれまでのことだ)


「よし、じゃあまずは一階層まで戻る。僕はその間にできる限り魔力を貯める。ダンジョンの入り口近くまで魔法使いがきたら、あとは決戦だ。僕と魔法使いと、どちらのほうが魔力が強いか、勝負といこうじゃないか」

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